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2005年09月26日

新国立劇場の「マイスタージンガー」

 いや、それにしても3日連続ワーグナーというのはツライ。特に「マイスタージンガー」 の2日連続というのは拷問に近いものがある(^_^;)。もともと、それほど好きな演目じゃないし、聴きどころの第3幕だけで十分じゃん (暴言)。そんな私がなんで久しぶりの新国立劇場に、それも「マイスタージンガー」に半日の休暇までとって出かけたのかというと、・・・・ 単にチケットを貰ったからなのである。そうでもなけりゃ、バイエルンの翌日に聴きに行こうとは思わない。そんなワケで、 期待値は低いまま初台に向かったんだけど、いま、聞き終えて一言、・・・・「意外とイイ」。 音楽や演出の志向性はバイエルンと正反対なんだけど、新国立劇場は繊細さの勝利というべきか、 ザックスやエヴァなどの登場人物の心理が上手に描かれていたのである。見終わって感心したのはバイエルンのほうかもしれないけど、 感動したのは新国立劇場のほうかもしれない。

 とはいっても、歌手、オケとも、地力は圧倒的にバイエルンのほうに分がある。音楽のスケール感、豊かな音色、そして歌手の声量、 存在感、舞台装置の豪華さ、いずれもバイエルン国立歌劇場の方が素晴らしい。ひとつのエンターテイメントとしては、 コンピュータやプロジェクターを駆使し、インターネットやデジタルカメラやカメラクルーを登場させ、夜警はホームレス、 群集にネオナチを登場させた政治的なメッセージも含めて、バイエルンのマイスタージンガーは面白い。しかしながら、その素晴らしさが、 登場人物の心理に結びついていたかというと、実は疑問が残る。

 新国立劇場の歌手は、バイエルンを聞いた後だと正直言って小粒に感じる。第一幕なんかは声が飛んでこないので「あれっ?」 と感じたほどだ。しかし幕が進むにつれて声がとどきはじめる。そして、聞かせどころのひとつである第3幕の五重唱の美しさはどうだろうか。 繊細で美しかった新国立劇場のほうが、ワタシ的には感動的だった。バイエルンの年老いたザックスに比べ、 壮年のザックスを演じさせた新国立劇場のほうが、物語的に遥かに説得力があるし、舞台栄えする可憐なエヴァの容姿・歌唱も良かった。 そういったエンターテイメント以外の部分では、新国立劇場のほうが好ましいと思った。演出や舞台装置に疑問が残るものの、 第三幕前半のこじんまりとした部屋の舞台は、歌手の声を最重視した演出、舞台装置だったろうと思う。

 この新国立劇場とバイエルン国立歌劇場、故意か偶然かは知らないけど、同一時期に同じ都市の中で「マイスタージンガー」 という超重量級の演目が同一時期に上演されるというのはひとつの「事件」だったのかもしれない。 この演目がこんなかたちで聴き比べができる機会は、もう二度と来ないと思う。「マイスタージンガー」は、ちょっと苦手な演目だったんだけど、 この2日聞き続けて、ちょっと好きになってきたかもしれない(^_^;)。

投稿者 kom : 2005年09月26日 22:21

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