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2005年03月09日

インバル&ベルリン交響楽団

 すみだトリフォニーホールとベルリンのコンチェルトハウスの友好提携事業と、すみだ平和祈念コンサートと兼ねて開催されたのは、 インバル指揮のベルリン交響楽団の演奏会である。チケットの値段はS席10,000円~B席6,000円だったけど、 墨田在住在勤在学とトリフォニーホールの会員はS席のみ半額というスペシャルプライス。私はトリフォニーの会員なので、 もちろんS席を購入して半額、さらにNJP会員の特典を行使してさらに2,500円引き。そして、 こういう機会じゃないと座らないであろう1階席を指定し、いつもの3階席と音比べも楽しもうと目論んだ。

 私が座ったのは1階席やや後方のステージに向かって左側の席。前の席との段差があるので、1階席でも見やすいし、 3階席よりも座席の前後が広い感じなのが良い。でも、オケのコンサートの場合は上から見下ろすほうが全体の見通しが良いので好きである。 それに、音はやっぱり3階席のほうが良いと思う。1階席だと音がナマっぽく、残響音が少ない。そして、オケのパートの音の分離が今ひとつで、 混然一体となって聞こえるのは個人的に好みの傾向じゃぁない。とは言っても、このトリフォニーは、 他のホールの1階席と比べるとかなり良いかも知れない。

 さて、演奏のほうに話を移そう。ベルリン交響楽団は、特別に巧いというオケではない。ベルリン・ フィルと比べると音は渋めで華やかさは乏しいし、テクニック的にもアンサンブル的にも突出したものを聴けるわけではない。しかし、 この渋い音色は魅力ある。日本のオケは器用だから、幻想なんかは結構フランスっぽく演奏も出来るけど、ベルリン響が演奏すると・・・ あたりまえだが、やっぱりベルリン響の響きなのだ。こういう風に、重心が低く、ちょっと渋めで、 色彩感がストイック的に押さえ込まれた幻想も悪くない。逆に、ベートーヴェンのピアノ協奏曲が当たり前すぎる演奏で、 ちょっと退屈なくらいなのである。

 そしてインバルは、80年代後半からデンオン(今はデノン)のマーラー・ツィクルスの録音で一世を風靡した指揮者である。 厳格なオケのトレーニングに裏打ちされた比類なきアンサンブルを構築したフランクフルト放送響との来日公演は、今でも記憶に新しい。 都響の特別客演指揮者を務めていた時期もあって、その録音とライヴの差に驚いた記憶がある。この人、 録音だと緊張感を伴った端正に整った演奏をする人だけど、ライヴだと羽目を外す演奏をよくやる。今日、インバルの演奏を聴いてが、 やっぱりインバルはインバルだ。かつてのフランクフルトのような機能的なオケではないものの、オケを完全にコントロールし、 音楽の中にインバル節を織り込んでいく。特別に変わった演奏ではないものの、アーティキュレーションが面白い。

 でも、インバルの本領を発揮するには、もっと機能的なオケのほうが面白いんだろうし、 それに加えてオケとの長い年月の積み重ねが必要なんだろうと思う。このベルリン響との演奏会はそれなりに面白かったけど、 かつてのフランクフルト放送響との演奏を知っているものからすると食い足りなさが残ったのではないだろうか。(アンコールは、 ブラームスのハンガリー舞曲集から)

投稿者 kom : 2005年03月09日 23:44

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