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2005年03月17日

アルミンク&NJP「レオノーレ」日本初演

 3月の新日本フィル・トリフォニー定期は、演奏会形式のオペラで、ベートーヴェン「レオノーレ」 の日本初演である。「レオノーレ」は、ベートーヴェン唯一のオペラとして知られている「フィデリオ」の原型となった作品で、 基本的なストーリーは同じものだと思って間違いないけど、 音楽的にはベートーヴェン以前の作曲家の作風もところどころ顔を覗かせる。ただし、私は「フィデリオ」 は2回くらい見たことはあるけれど、残念ながらあまり好きな作品ではないので、聞き込んでいるオペラではない。そんなワケで 「フィデリオ」と「レオノーレ」との相違点については、そんなに気にしていないので、 まったく新しいオペラとして楽しませていただいた。

 最初から余談だが、NJPの音楽監督のクリスティアン・アルミンクは、ビジュアル的に「のだめカンタービレ」に出てくるジャン・ ドナディウのイメージに似ている。「のだめ」を指揮者コンクールのストーリーにジャンが登場したときに、 真っ先に思い浮かんだのはアルミンクだった。漫画の中のジャンはフランス的に軽やかな音楽を得意とするタイプであり、 現実のアルミンクはドイツものを得意とする指揮者なので、対照的なタイプである。そして、この定期演奏会で「レオノーレ」を聴いて、 アルミンクという指揮者の力量を実感した。NJPは本当に良い指揮者を音楽監督に迎えたものである。

 アルミンク&NJPが描き出す「レオノーレ」は、ドイツ的な渋めの音色で描きつつも、オケの音の重なりがクリアーで見通しが良い。 そして何よりも、音楽の流れに変な作為やよどみもなく、とても自然なのだ。もしかしたら、 ベートーヴェン的な重量感が足りないと言う向きもあるかもしれないが、私は鈍牛のような音楽作りだけがベートーヴェンだとは思わない。 アルミンクの指揮だと、繊細な筆致で描く若々しく生命感がある作風に、聴き手は安心して音楽に身を任せられる。この日の演奏は、 セリフを大幅にカットしての上演だったと言うこともあるのだろうけど、以前に見た「フィデリオ」よりも音楽を楽しめた。 演出は少し陳腐な感じはしたけれど、歌手は総じて高水準。中でもドン・ピツァロを歌ったハルトムート・ヴェルカーの表現力を特筆したい。

 新日本フィルと言うと、良くも悪くも小澤のオケというイメージが付きまとっていたけれど、 アルミンクはそのイメージを払底する可能性を持っていると思う。将来性を考えると、 これからが旬の指揮者として今のうちに聴いておきたい音楽家ではないだろうか。

投稿者 kom : 2005年03月17日 23:32

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