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2005年03月19日
アルブレヒト&読響「神々の黄昏」第3幕
在京オケの3月の定期演奏会は、なぜか演奏会形式のオペラが多い。先日のNJPの「レオノーレ」、 都響は29日に「青ひげ公の城」を演奏する。そして読響はワーグナーの楽劇「神々の黄昏」から第三幕を演奏会形式で取り上げた。 シーズンの締めくくりを飾るのに相応しい曲目である。会場のサントリーホールは9割程度は入っているものの、 SやA席の中でも条件が悪そうな席に空席が若干ある。一回券の値段が張るためだと思われるけど、ちょっともったいない。
さて、ワーグナーのオペラの場合、一番の主役はオーケストラだと思う。特に、この「ニーベルングの指輪」の場合、 管弦楽組曲みたいに取りあげられることもあるくらい魅力的な旋律に満ちている。「指輪」の中から抜粋上演する場合は、「ワルキューレ」 第一幕が演奏されることが圧倒的に多く、今回のように「神々の黄昏」第3幕が演奏されるのを聴くのは初めてだが、実際に聴いてみると 「ワルキューレ」に負けず劣らず、素晴らしい音楽に満ちている。そして、この日の読響定期、その音楽を見事に再現してくれた。
まず特徴的だったのが、音の厚みである。特に弦楽器は、金管楽器の咆哮にも負けない厚みが必要だけど、 在京オケでここまで厚く弦楽器を鳴らせるのはN響と読響だけかもしれない。もちろん、音がデカければイイというわけじゃない。 ライトモチーフを描き分ける音色のパレットも豊かなので、ダイナミックレンジも広い。 アルブレヒトの指揮はオーソドックスなアプローチだったけど、オケがピットではなくステージ上にいると、響きが直接的で鋭角的である。 同じステージ上で歌う歌手は、このオケに伍して歌うのは大変だったに違いない。
にもかかわらず歌手も良かった。ジークフリートのペール・リンズコーグは、やわらかい美声の持ち主で、 ヘルデンテノールという感じではないものの オケの厚みに負けない声量と若々しい歌声が心地よい。ブリュンヒルデのクリスティーン・ ブリュアは、ドラマチックな歌声で、ラストの「自己犠牲」ではオケの強奏の上を飛び越えてくるような声量を見せつけた。ハーゲンの工藤博、 グンターの青戸知、グートルーネの林正子も申し分なく、この顔合わせで「神々の黄昏」全曲、いや「リング」 全部を聴いてみたい思いに駆られてしまった。
演出はほとんど伴わない演奏会形式だったが、ワーグナーは音楽そのものがストーリーを語っていることを改めて実感した。 来シーズンの読響のプログラムも楽しみである。
投稿者 kom : 2005年03月19日 21:55