« 今日から松本へ | メイン | ミュンヘン・オペラ »
2005年09月06日
小澤&サイトウキネン「グレの歌」
サイトウキネンに通うようになって10年を超える年月が経った。毎年、この時期に松本を中心に安曇野、乗鞍、 上高地を訪れてきたけど、今年はちょっと趣向を変えてバスに乗って岐阜県側に渡り、平湯温泉と高山に足を伸ばしてきた。 9月2日は特急あずさで松本まで行って、バスの乗り換えて1時間半、平湯温泉の「平湯館」という旅館に泊まった。 平湯では大型の宿に属するんだろうと思うけど、細やかな心遣いで快適な宿。食事もそれなりに美味しいし、温泉も加水ながら天然温泉掛け流し。
9月3日は、平湯からバスに乗って1時間、高山の街並みを見に行った。江戸時代の面影を残す街並みは、 ちょっと観光地化されすぎている気がするけれど、それなりの情緒もある。ただ、午後になってから天候が急変し、ものすごい雷雨に見舞われた。 急いで高山のバスターミナルから平湯温泉に戻った。
9月4日は宿をチェックアウトして、新穂高温泉に向かい、そこからロープウェイに乗って、 標高2,100メートルほどの西穂高に上った。空は曇っていて見晴らしは良くなかったけど、晴れていればきっと絶景だったに違いない。 それにしてもここ数年、サイトウキネンで訪れたときの天気に恵まれていない。なんでだろ?(^_^;)
さて、その新穂高温泉から特急バスに乗って松本に戻り、まつもと市民芸術館で行われたサイトウキネン・ フェスティバルのシェーンベルグ「グレの歌」の初日を聴いてきた。会場は日曜日ということもあって満員だが、 他の平日公演は売れ残りもあるらしい。セミステージ形式で上演されたのだが、ピットは客席と同じ高さまで持ち上げられ、 ピットと客席の間の壁も撤去されて、フルフラットな状態である。ピットに入りきらないオーケストラは、舞台の上にも上げられて、 さらにその後方にステージが設けられている。そのステージは、とてもシンプルな舞台装置で、 三分解された合唱団用の黒い雛壇が置かれているだけ。
まずオケの演奏のほうだけど、初日ということもあって、前半はガサガサとした荒さが目立つ演奏になってしまった。 もっともこの荒さは、公演日程が進むにつれて改善するんだろうけど、それ以上に気になったのは、小澤がこの曲を通じて何を言いたいのか、 イマイチ伝わってこなかったこと。もともと小澤にはこの曲の持つ官能的な雰囲気、音色を期待することは難しいのだろうけど、 それにしても曲作りが機械的で、一本調子という感じがぬぐえない。場面に応じた音楽を構築しきれていないのだ。 機能性では世界でもトップレベルのオケなんだろうけど、決してそれだけではこの曲の面白さは伝えきれないんだじゃないだろうか。
一方、歌手と合唱は、きわめて高水準。特にトーマス・モーザーの柔らかい歌声は魅力的だったし、ミシェル・デ・ ヤングの山鳩も上品な歌唱が印象的。そしてフランツ・グルントヘーバーなんて、農夫/語り手のような「端役」 で使うのは実にもったいない歌手である。オペラシンガーズも例年通り、その実力の高さを見せ付けた。
そして演出だが、ステージ上での動きも乏しく、わずかに照明や男声合唱の衣装で工夫した程度。・・・・ これならハッキリ言って演奏会形式の方が遥かに良かったのではないだろうか。財政難で、 当初の予定よりも遥かに縮小した演出になったという話もチラッと小耳に挟んだので、演出家を攻めるのは気が引けるけど、 それにしてもこのような演奏会形式に毛が生えた程度の演出では、松本市民がこのように立派な歌劇場を作った意味はない。そんなわけで、 今年のサイトウキネン、ワタシ的にはトータルとして残念な内容に終わってしまった。今回はチケットの売れ残りも多かったようだし、・・・ 今後の方向性を見直す時期に来ているんじゃないだろうか。
投稿者 kom : 2005年09月06日 22:16
コメント
初めまして。楽しく読ませていただきました。
合唱はとても素晴らしかったですね。鳥肌立ちました。
とはいえ・・・贅沢にオペラハウスなんかつくるから
こんな結果になってしまったようです。
今までオペラは松本文化会館で問題なくやってこれたはずなのに・・・。
地元では大問題になり建設反対の署名運動が起こりました。
気が向いたら調べてみてください。
投稿者 通りすがり : 2005年09月13日 17:09