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2007年12月20日

インバル&都響 「悲劇的」

事実上のインバル披露演奏会(笑)となった12月の都響定期。19日のサントリーホールでは、Aシリーズの交響曲第7番「夜の歌」に引き続き、マーラー交響曲第6番「悲劇的」が演奏された。チケットはもちろん完売となり、会場は満員となった。

インバルと言えば、エポックメーキングとなったデンオンのマーラー交響曲全集が有名だ。おりしのマーラーブームに、高音質の録音とあいまって、インバルの名は一躍有名になった。フランクフルト放送響とのコンビで来日した講演も語り草になっており、私も「復活」などを聞いたけど、その完全主義的な演奏に舌を巻いた記憶がある。しかし、彼の実演のマーラーは、録音のそれとは一味違う。インバルの実演によるマーラーは、アグレッシブであり、実にダイナミックだ。そして、マーラーの分裂的な音楽を、より強調するかのように分裂的に描き出す。

一方、インバルの後に都響でマーラー全曲を振ったベルティーニの場合、マーラーの分裂的な部分がまるで一人の人間の感情を描き出すかのように、説得力をもって、統一的に描かれるのとは対照的だ。インバルは、分裂を分裂としてあぶりだし、それをも強調するのだ。昨日の「悲劇的」を聞いて、その思いを新たにした。インバルのタクトから描き出されるマーラーは、ありのままのマーラーの姿なのかもしれないが、やはり分裂的だ。

都響とのコンビネーションは、「夜の歌」を聞いた時よりも進化していて、ハイテンポなインバルのタクトに喰らいついていく。音場の透明感に欠ける部分があったのはちょっと残念だったけど、都響ならではのハイレベルな演奏を聞けたと思う。インバル&都響の最強の演奏と言えば、あのCDにもなったマーラーの交響曲第5番の演奏だ。まだまだあのレベルには到達していないと思う。あのような演奏を、またこのコンビから聞いてみたいものだ。

投稿者 kom : 2007年12月20日 14:15

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