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2007年06月17日

新国立劇場「ばらの騎士」

 6月15日の金曜日、新国立劇場の「ばらの騎士」 を見た。午後6時開演というのを新国立劇場に向かう電車の中で気が付いたときには時すでに遅し、・・・ もちろん仕事が微妙に長引いてしまったのも原因なのだが・・・・開演時間に間に合わなかった。劇場側も遅れてくる人のために、 3階席後方に途中入場をさせてくれて立ち見はできたんだけど、冒頭部分は見逃してしまった。

【指揮】ペーター・シュナイダー
【演出】ジョナサン・ミラー
【美術・衣裳】イザベラ・バイウォーター
【照明】磯野 睦
【舞台監督】大澤 裕

【元帥夫人】カミッラ・ニールント
【オックス男爵】ペーター・ローゼ
【オクタヴィアン】エレナ・ツィトコーワ
【ファーニナル】ゲオルグ・ティッヒ
【ゾフィー】オフェリア・サラ
【マリアンネ】田中 三佐代
【ヴァルツァッキ】高橋 淳
【アンニーナ】背戸 裕子
【警部】妻屋 秀和
【元帥夫人の執事】秋谷 直之
【ファーニナル家の執事】経種 廉彦
【公証人】晴 雅彦
【料理屋の主人】加茂下 稔
【テノール歌手】水口 聡
【帽子屋】木下 周子
【動物商】青地 英幸
【レオポルド】三戸 大久

【合唱指揮】三澤 洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

 ワタシ的には、この「ばらの騎士」は、最も好きなオペラの一つである。好きになったきっかけは、かれこれ15年くらい前だろうか、 あの伝説となったカルロス・クライバーが振ったウィーン国立歌劇場の「ばらの騎士」を衛星放送で見たときだ。 ライヴ系リスナーを自称する私ですら、その放送を見て感動し、その来日公演を見に行ったのを鮮明に覚えている。 当時の私としては大枚だった4万円のC券を買って、東京文化会館の4階右サイドの席から、その実演に接することができた。 第3幕ラストの三重唱は、あらゆるオペラ・アリアの中でも最も美しいアリアだろうと思う。

 こんな「ばらの騎士」体験をしてきた私だから、やっぱり比較対照はクライバーになってしまうのだが・・・・結論から言うと、 今回の新国立劇場の公演は実にレベルが高くて大満足。クライバー体験を持つ者にとっても充分に満足のいく公演になったのではないだろうか。

 まず素晴らしかったのは、何といっても歌手。特に元帥夫人、オクタヴィアン、オックス男爵の3人は非のつけどころがない歌唱だった。 元帥夫人は、凛として芯の強い女性と同時に、オクタヴィアンを想うがゆえに身を引く決心をする過程の揺れる心を表現は見事だった。 オクタヴィアンの少年らしい身のこなし、中性的な演唱がかもし出す不思議な雰囲気が官能的だった。そしてオックス男爵の、適度に「軽薄」 な低音は、退廃した貴族社会の象徴としてぴったり。ゾフィーに関しては、もしかしたらちょっと不調だったのかもしれないが、 もっと透明感のある歌唱が欲しかったが、全体としてみれば、これほど水準の高い歌手が集まった「ばらの騎士」を見る機会は、 さほど多くはないのではないだろうか。

 そして、ペーター・シュナイダーの振った東京フィルも大健闘だと思う。ウィーン的な色彩感も十分に出していて、R・ シュトラウス特有の重層的な音をスケルトンに見せる透明感も美しかった。もっと上を望めばキリはないとは思うが、是だけの演奏であれば、 世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルだろうと思う。

 演出については、オーソドックスな路線だ。ワタシ的には「ばらの騎士」については、 あまり冒険的な演出はなじまないと思っているので、このような正統的な演出は望ましいのだが、 第1幕から3幕にいたるまでの舞台装置に変化に乏しく、もう少し豪華な雰囲気が欲しかった。

 終演後のカーテンコールも、ブラボーの声が飛び交い、 新国立劇場のプロダクションの中でも特筆すべき成功を収めたのではないかと思う。私は、スケジュールさえ合えば、 もう一度見に行きたいくらいである。

投稿者 kom : 2007年06月17日 00:04