オーチャードホール(渋谷)


 東急が作った総合文化施設「東急文化村」のなかのメインホールが、この「オーチャード(意味は果樹園)ホール」。東急百貨店本店の裏側にあり、同一建物の中には演劇向けの「シアターコクーン」。映画館の「ル・シネマ」などがある。シューボックス型のホールは基本的にはコンサート向けだが、ステージ上の音響シェルターの移動で、オペラやバレエなどの公演に使用されることも多い。かなり狭い敷地に作ったために、設計的にはかなり無理がある感じがして、舞台裏の楽屋などはかなり狭い。座席は1.2.3階席。

 音響的には、特に1階席の音響は芯がなく、さらに反射音も少ないため、ステージとの距離以上に音響的な距離感を感じる。音が後ろに抜けて行くような感じだ。特に1階最後列は最悪。設計者自身も「1階席はホールの経営上要求された席数を入れるために縦に38列入れているが、これは音響設計上はできれば32列程度に止め、残りは2・3階席をふやして収容したいところであったが、北側の日陰斜線制限が厳しくて実現は出来なかった」(建築設計資料48「コンサートホール」建築設計資料社より引用)と書いているくらいである。2階席はかなり改善されるけど、3階席の屋根が邪魔になって圧迫感があり、オペラでは字幕スーパーが見えないこともある。しかし3階席の音はとても良い。東京のホールの中でもトップクラスに入る音響の良さと言って良い。1階席よりもはるかに音圧が高く感じられ、残響音とのバランスや、低音の素直な伸びなどは個人的には好みの音である。おまけに3階席は値段が安いため、このホールに行くのなら3階しか選択枝はない!と個人的には断言したい。視覚的にも3階バルコニー部分はステージにも近いために、オペラを見るのにも好適。

 ただし音響的によい席が少ないためか、リスナーの間ではあまり評判が良くない。クラシック系のコンサートもこのホールで行われることが少なくなってきているのは残念。かつては外来オケの東京公演のうちの1回は、オーチャードで行われていたけど、ここ数年は外来メジャーオケのオーチャードでの公演はほとんど行われていない。

 「文化村メンバーズクラブ」という会員制度があり、このホールで行われるコンサートの優先発売や、映画の割引などが受けられる。交通は「渋谷」駅しかないが、あの混雑して騒がしい雑踏のなかを歩くのは、これからコンサートに行く気分にはそぐわない。 定期演奏会は、東フィルがフランチャイズ契約のもとで定期演奏会を行っているほか、新日本フィルもオーチャード定期を行っている。