Concert Diary in March

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復活の日

 「スペインの燦き」以降、コンサートにもオペラにも行っていない。そんな関係もあって更新が滞っておりますが、近日中に復活予定です。たぶん、神々が黄昏る頃にはなんとか。(04/03/17)



新国立劇場「神々の黄昏」初日公演

 いよいよ新国立劇場のリングも完結編「神々の黄昏」である。発売早々に全日程全席種が完売し、国産オペラとしては異例の注目度の高さだったが、昨日(26日)はその初日。午後4時07分に準・メルクルのタクトが振り下ろされ、45分の休憩を2回はさんで全3幕が終わったのが、ちょうど10時。のべ6時間の長丁場だったが、満足度はきわめて高い公演だった。

 何と言っても歌手陣はスゴイ。クリスチャン・フランツのジークフリート、ガブリエーレ・シュナウトのブリュンヒルデはもちろんだが、ハーゲンを歌った長谷川顕も素晴らしい出来栄えで、カーテンコールでは喝采を集めたし、その他の歌手陣も満足行く出来栄え。準・メルクル=N響の管弦楽も、他のオケとは一線を画す厚い音を聴かせてくれてたので、音楽的にはたいへんに充実した公演になった。

 そして、なによりも注目のキース・ウォーナーの演出だが、これまでの3公演と比べると斬新さが薄れたことは否めないが、・・・・・最後まで見どころの多い内容だったことは間違いない。今日は初日なので、ネタバレ的なことは書かないが、少なくとも一度は見ておいて損はない。ウォーナーは「神々の黄昏」くらいはカーテンコールに登場するかと思っていたけど、残念ながらステージには姿をあらわさなかった。(04/03/27)



金聖響&都響 と アルミンク&NJPの「サロメ」

 「神々の黄昏」で新国のリングが完結し、いろいろな評価が交錯している。私自身も思うところはあるのだが、4/1にBキャストを見てから少しはマトモなことも書いてみたい。どうしてもウォーナーの演出が注目されていただけに、最後の「神々の黄昏」で落胆したという意見も良くわかるし、共感できる部分もあるのだが、たぶん音楽的なレベルで公平にみれば、国際的な水準に達している上演ではないだろうか。私はそう思う。

 さて、3月は結局のところ下旬に都響定期2回、神々の黄昏、新日本フィルに行った(行く)だけ。3月25日の都響定期は金聖響の登場。私としては久しぶりのコンサートで、耳のリハビリ状態で聴いたような感じのコンサートだったけど、会場となった東京文化会館は集客力がイマイチの会場にもかかわらず意外とお客が入っていて、全体の8割弱程度の入り。プログラムはバーンスタインの「キャンディード」序曲に「セレナード」(Vn:矢部達哉)、バルトークの弦チェレというもの。特に集客力があるプログラムと言うわけではなさそうだが?

 それはともかく、この演奏会、このところ都響の常連指揮者になりつつある金聖響の指揮者としての力量の向上が感じられた。前は楽譜を表面的になぞったようなマーラーを聞いたような感じがしたけれど、今回の演奏は音楽をちゃんと手中に収めているような印象で、オーケストラをコントロールする力量も感じられる。意外とやるじゃん。終演後はさかんにブラボーの声も飛んでいたけど、これからの更なる進歩が楽しみな指揮者かも。

 「神々の黄昏」の翌日=27日は、新日本フィルのトリフォニー定期で、新音楽監督アルミンクの新機軸であるコンサート・オペラの第一弾、R・シュトラウスの「サロメ」である。今シーズンの看板演奏会のはずなのに、ちょっと空席があったのはもったいなかったけれど、それでも9割近くは入っていただろうか。舞台には左側と後方にステージが設けられ、照明と演出つきの上演。ちょっと無駄な動きが多い演出だったのが気になったが、月や井戸に見立てた筒や現代的な衣装などの基本的なコンセプトには共感が持てる。

 音楽的には、歌手が良かった。ヘロデ王のウド・ホルドルフ、ヘロディアスのアニヤ・シリア、サロメのアンナ・カタリーナ・ベーンケ、ヨカナーンのユルゲン・リンなど、初めて聴く歌手ばかりだったけれど、どの歌手も高水準。ただし管弦楽には、もう少しR・シュトラウスらしい色気が欲しいと思ったし、歌手と同じステージで演奏するのならもう少し音量的にセーブしたほうがベターだと思ったシーンも。このコンサート、1回券で買うと12,000円〜6,000円。その値段なりの価値があるのかどうかは微妙なところだけれど、少なくとも定期会員として聴くのであればお得なラインナップのひとつだろう。(04/03/29)