Concert Diary in June-July

■文中の敬称は省略しています
■各タイトルの日付は、掲載日を表しています



ダブルヘッダー


 先週は天気がイマイチでしたが、コンサートは全部で3回。まず5月29日(木)はエストニア出身のアヌ・タリ=東京フィルのオーチャード定期。チラシではクールな北欧美人という雰囲気だったけど、例によって私の席からは遠くてご尊顔はよく分からず。それでも指揮姿は凛々しくてカッコイイ。でももうちょっと背があるといいのにな・・・などと余計なことを(^_^;)。女性指揮者は、今でも珍しい存在である。

 前半の曲目は、エッレルの交響詩「夜明け」、プロコフィエフの「交響的協奏曲」というものだったが、いずれも初めて聴く曲なのでその出来の善し悪しはよく分からず(_ _;)。しかし、アヌ・タリはその若さに似合わず、オーケストラをドライヴする力はありそうだし、なかなかパワフルな音楽作りをする指揮者だ。オケも好演だったけど、キキモノは協奏曲で登場したVcのグスタフソン。まるでチェロをヴァイオリンのように弾く人ですね。その左手の早さ、音程の正確さは見事で、かなりの技巧の持ち主。音色・音量もなかなか美しい。
 ただ、後半のプログラムは体調不良で帰っちゃったので残念無念。

 31日(土)は久々のダブルヘッダーで、まず午後3時から錦糸町でアラン・ギルバート=新日本フィルの定期演奏会。ラフマニノフのピアノ協奏曲第4番という珍しい曲をアレクサンドル・ギンジンと言うピアニストが演奏したんだが、・・・・爆睡(_ _;)。やっぱ曲の構成というか楽想の連続性に無理があるような気がするし、ピアニストの音色もそれほど美しくない。やっぱり演奏機会が少ないのにはワケがある。

 後半はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」。若干のミスはあったものの、なかなかの演奏。ワタシ的には、もう少しピアニッシモ方向のレンジを拡大した緻密で音色が豊かな演奏を期待したいところだったんだけど、実際にはかなりダイナミックな演奏になった。その結果、音色の変化がやや乏しく感じられたのが、残念と言えば残念。

 そして同日午後6時からは、鈴木雅明=読響の定期演奏会で、サントリーホールへ。トリフォニーが終わって午後5時、先日開通した半蔵門線の錦糸町から乗ったのはいいんだけど、永田町で降りちゃったのが間違い。サントリーホールまで歩くこと25分・・・。さすがに疲れた。正解は永田町で銀座線に乗り換えて溜池山王まで行くか、南北線で六本木一丁目まで行くべきでした。

 曲目はモーツァルトの「ミサ・プレヴィス<雀のミサ>」と、ミサ曲ハ長調。鈴木雅明というとBCJを率いてピリオド楽器で演奏することで知られているけど、今回はもちろんモダン楽器での演奏。響きは、やはりモダン楽器的の響きが濃厚で、奏法もそれほどいじらなかったような印象だ。しかし、編成が小さいせいかオケの音の透明感は素晴らしい。さすがにサントリーホールの巨大な容積だと、ピリオド楽器の響きを美しいと感じることは難しいが、モダン楽器は小編成でも音量がある。楽器にはそれに見合ったホールが必要だと言うことだろう。

 もちろんオケの音もとてもキレイだったけど、ミサ曲となるとやはり主役は声楽だ。森麻季の声、きれいだね〜。透明感と艶やかさをあわせもった声は心洗われる思い。テノールの櫻田亮、バスの浦野智行の声も、宗教音楽にぴったりの知性的な声もイイ。そして、何と言ってもバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱。40人程度の編成なんだけど、その声には十分な厚みがあるとともに、宗教曲をやり慣れたような透明感も併せ持っている。前半・後半とも、神経がすみずみまで行き届いた演奏で、モーツァルトの荘厳なミサ曲の世界を再現。コンサート後の清涼な気分は、実に久しぶり。(03/06/02)




果報は寝て待て〜みらの・すっから座〜


 このようなホームページのオーナーとしてはあるまじき態度なのかもしれないが(^_^;)、最近はチケット取りのあきらめが早い。発売日の朝、眠いと「まぁ、いいやぁ ZZzzzz.....(_ _;)」と夢の世界に入ってしまうのはまだ良い方として、発売日すら覚えていないこともあるくらいである。8月末に来日するミラノ・スカラ座も遙か前に発売されていながら、発売日すら記憶に残っていなかった。

 言うまでもなくスカラ座は、イタリア・オペラの最高峰である。別に興味がないわけではないが、チケットの値段が高すぎ。さすがにS席58,000円というのは、どう考えてもワタシ的経済感覚からすると問題外で、F席13,000〜15,000円がいいところ。ところがオペラの場合、そんな安いチケットを入手するのは困難な極みだ。そんな可能性が低いチケット取りのために半日つぶすという行為自体に疑問を持ち始めているのかもしれない。

 しかし今日7日(土)は、そんな私に幸運をもたらされた(^_^;)。売れ残ったチケットを集めてのチケットの第二次発売である。朝10時にe+接続し、ログインしたら、まだエコノミー席があるではないか! 1万円だよ! うわっ、マクベスもオテロも両方ある! なんて感じで楽々チケットをげっと。もちろん土日の公演は売り切れだったけど、平日公演を狙ったのが正解で、マクベスもオテロもエコノミー席をげっと出来ました。嬉しいんだけど、・・・簡単に取れすぎてなんか拍子抜け。さすがに昨日の昼前にはエコノミー席は全公演売り切れてしまったけど、NHKホールで行われる「オテロ」は、D席以上がまだ売れ残っているような感じ。まぁ、チケットは待っていれば、結構、手に入るモノなのかも。個人的には、自分の経済感覚以上に高いチケットを無理して買うつもりはない。

 さて話は変わって、最近のワタシ的癒し系音楽と言えば、沖縄系ミュージックである。昨年末に八重山に行って以来、どうやら「沖縄病」に感染してしまったらしく、症状は悪化するばかりである(^_^;)。沖縄民謡や沖縄出身の歌手のCDを聴いたりしているうちに、ビョーキが悪化してどうしても沖縄に行きたくなってしまった。そんなワケで、今月末はまた八重山に行ってきます。たぶんその頃の八重山は梅雨が明けているはず。どこまでも抜けきった青空と青い海が待っているぞー。(03/06/07)




週末はオペラ 〜新国立劇場の「オテロ」とベルティーニ&都響〜


 以前は新国立劇場のプレミエというと必ず初日を見るようにしていたんだけど、今回の「オテロ」は根性なしで3回目の土曜日の公演を見ることになってしまった。これはチケットを予約する時に不覚を取ったのが原因。初日公演後からこのページのアクセスがかなり増えたんだけど、いずれにしても最近は週末更新に徹しているんで、初日に行ったとしても即日更新したかどうかは微妙なんだけど。

 さて、14日(土)の新国立劇場「オテロ」は、結論的に書くとこれまでナマで見た「オテロ」の中では音楽的には最も良かったような気がするけど、ワタシ的に感動できたかというと別問題だった。超簡単に書くと音楽的には○、演出的には×なのだ。

 まずタイトルロールのオテロを歌ったクリスチャン・ヨハンソンはかなり良かった。オテロのとしての感情の起伏の激しさ、嫉妬の苦悩をリアルに表現していて、声量も申し分なし。デズデーモナを歌った出口正子は、第一幕は不調で先が思いやられたが、第2幕からちょっと挽回。第3幕以降は、休憩前の不調がウソのように蘇って、純真な心理を歌に込める。やや一本調子になりがちな気もしたけど、彼女なりの実力は十分に発揮したのではないか。イアーゴの直野資は、やや小粒な悪役の印象になってしまったけど、その安定感はさすがで、彼の歌唱にはいまだ裏切られたことがない。その他、脇役陣も好演。

 管弦楽は、菊池彦典=東京フィル。起伏に富んだドラマチックな音楽作りを得意とする指揮者だけに、冒頭の嵐のシーンから本領を発揮。合唱団も含めて、実にダイナミックだ。その一方で、演出はと言うとちょっと残念な出来。まぁ、4面ある新国立劇場の舞台を一面しか使わないのは、他の演目とのレパートリー・システムを考慮した結果なのかもしれないので、そこは好意的に解釈するとしても、同じ舞台装置を第4幕まで使い回すのであればそれなりの工夫が欲しいところ。しかし群衆の動かし方も整理されていないし、ソリストの動かし方にも演出の意図というものを感じなかった。下の階から見れば、また違った見方になるのかもしれないけど、ワタシ的にはわざわざ英国ロイヤルオペラから輸入して上演するような演出には見えなかった。

 さて、オテロに先立つ13日(金)は、ベルティーニ=都響のサントリーホール定期。これもドラマチックなブラームス「ドイツ・レクイエム」だった。私がこれまで聴いた同曲の中では、もっとも指揮者の感情移入が激しい印象を受けたのだが、しかしそれは決してイヤミな感じになっていない。あくまでもブラームスらしい理性的な信仰の裏打ちはしっかりと感じられる、心洗われるロマンティシズムとドラマ性なのである。

 この曲の主役は、何と言っても晋友会合唱団である。もちろん晋友会を超えるプロや音大の合唱団は存在するだろうし、この日の演奏も全く不満がないとは言えないのだけれど、アマチュア離れしたダイナミックレンジと安定度を見せて、この演奏の完成度の高さに貢献。中村智子と河野克典の独唱も良かったし、ベルティーニの求心力と説得力の強さを、改めて感じた一夜になった。(03/06/16)



一足早い梅雨明け 〜ベルティーニ&都響、アシュケナージ&N響〜

 「一足早い梅雨明け」と言っても、東京のことではない。前にも書いたように、今週から南の離島に旅立つので、その沖縄地方の待望の梅雨明けが訪れたのである。梅雨明け後の6月下旬の沖縄は、一番天気が安定している時期なのダ。今週の沖縄地方の週間天気予報は晴、晴、晴れ〜!!ヤッター!!

 さて、先週のコンサートは17日(火)に東京芸術劇場でベルティーニ=都響作曲家の肖像シリーズで、ブラームスの交響曲第2番と4番を聴いた。このシリーズで聴いたブラームスというと、どうしてもフルネが振った交響曲4番が忘れられない。「奇跡的」な演奏と言っても過言ではないレベルの演奏で、私が聴いた都響の中でも3本の指に入る名演奏だったが、それと比較すると今回の演奏はベルティーニとは言え分が悪い。

 もちろんフルネの端正な音楽作りとは違って、ベルティーニのアプローチは実にロマンティックだ。ブラームスの古典派の流れを削ぎ落とし、濃厚なロマン派の色彩感,とスピード感を加えた音楽作りは、ベルティーニの指向性をよく表している。ダイナミックレンジの幅も広く、パート間の音もよく分離して、弦や金管はきれいな音色で演奏されていたが、木管楽器の音色はちょっと不満を感じた。全体としては決して悪い演奏ではなかったものの、2番の最後ではスピードが速過ぎて、細部のツメがいまひとつだった印象はぬぐえない。

 翌18日(水)はオーチャードホールで行われたアシュケナージ=N響の演奏会を聴いた(N響オーチャードシリーズ)。言うまでもなく、アシュケナージは2004年のシーズンからN響の音楽監督に就任することが決まっている。・・・が、私の周囲では、指揮者としてのアシュケナージに好印象を持っている人は皆無で、私自身も「考えうる最悪の選択」だと思っている。これは単なる好き嫌いで言っているのではなく、ロイヤル・フィルやチェコ・フィルとの共演を聴いた結果そう思ったわけで、アシュケナージの指揮者としての力量は残念ながら高く評価することは出来ない。

 そのアシュケナージだが、私はN響との顔合わせで聴くのは聴くのは今回が初めてである。プログラムはオール・ラヴェル・プログラムで、「鏡」、ラ・ヴァルス、クープランの墓、ボレロというプログラムだ。・・・で、結論的に言うと、「思ったよりも悪くないじゃん」という感じ。奇をてらったような表現もなく、オーソドックスなアプローチだし、ラヴェルらしいフランス&スペイン風の色彩感の豊かさやリズム感がよく表現されていて、意外と楽しめてしまったのである(^_^;)。ロイヤル・フィルやチェコ・フィルを聴いた時に感じたあの違和感・・・強引なタクトにオケが破綻していった演奏とは、まったく違うのである。

 かといって、ワタシ的にはアシュケナージへの評価を見直したわけではなく、むしろN響の柔軟性というか適応能力の高さを感じてしまったのである。まぁ、指揮者=アシュケナージへの評価は、またいずれ。(03/06/22)




南風の季節 〜西表島と来間島の5日間〜

 6月25日から29日までの5日間は、日本のガラパゴス=西表島と、宮古島と橋で陸続きになっている来間島への旅に出かけていた。その関係で、今週はコンサートレポートは「無し」である(^_^;)。それにしても、夏の南の島の日差しはスゴイ! 日頃の行いが良かったせいか、行程の5日間とも晴れたんだけど、日焼け止めを満遍なく塗ったにもかかわらず腕や顔は真っ黒・・・どこに行ったか、職場にはバレバレである。

 初日の25日は、朝6:30の石垣行き直行便に乗るため5時前に起床。さすが眠いっ! 定刻に石垣に到着。東京は雨だったが、石垣は晴れ。雲がちょっと多いので快晴という感じではないものの、そこそこの天気だ。八重山は梅雨が明けて、季節風の南風(ぱいかじ)が強いシーズンだ。気象のことは不案内だが、太平洋高気圧から吹き込む風なんだろうと思う。

 バスで石垣港に向かい、10:20発、八重山観光フェリーの西表島・大原行きに乗る。西表島では、初日は宿となった民宿あけぼの館の裏にあるプライベートビーチ?で水浴び(?)をして、お昼寝。26日はカヌー&トレッキングでピナイサーラの滝に登った。沖縄県で最も落差の大きい滝の上から望む景色は壮観のひとこと!眼下にはマングローブの森が広がり、その先には紺碧の海、さらに真っ白なバラス島や遠く鳩間島も一望できるパノラマ感は実に壮大だ。昼食は滝の上で八重山そばにおにぎり、パイナップル、パッションフルーツ。食後は滝つぼで泳いで、滝に打たれて、カヌーで帰る一日コース。オズズメ。

 翌27日は、「しげた丸」という船に乗って、西表島周辺のサンゴ礁の海でスノーケリング。泳ぎのブランクが長いので、はじめての挑戦であるスノーケリングは不安いっぱいのスタートだったが、いきなり足の届かないポイントで始まってびびりまくり。いくらライフジャケットを着けていてガイドの人がそばにいたとしても、南風が強く波があるのでかなりコワイ!2度目のスノーケリング・ポイントは湾内の波のほとんどないところだったので、ここではOK。フィンをつけると気持ち良く泳げるし、水面下に熱帯魚がたくさん見える。ちょっとコワイけど、楽しい!

 旅の4日目になると、さすがに疲労がたまる。今日はゆっくり過ごすと決めて、まず宿を出て車で星砂海岸まで送ってもらう。海岸への道を下っていくと美しい浜とリーフが広がっている。時間は朝の9時ごろ、まだ誰もいない。空は青く澄んで、雲はほとんどない。絵葉書でしか見たことのないような夏色のコントラスト!こんなきれいな海岸を見たのは初めて! この風景とさざめく波音に、しばらく時間が過ぎるのを忘れてしまった。

 結局、1時間半ほど星砂海岸で過ごして、安永観光の船の送迎バスに乗る。いよいよ西表ともお別れだと思うと、車窓からの景色が寂しく映る。11:00船浦発→鳩間経由→石垣行きの船で、いよいよ次の島に向かう。昼食をとって、石垣空港から宮古島経由大阪行きの飛行機に乗り、宮古空港で降りる。民宿の送迎バスに乗り、宮古島と橋で陸続きになっている来間島(くりまじま)に向かう。この島で唯一の宿泊施設であるペンションたきなかがこの日の宿だ。

 来間島は、自転車でも一周できるほどの小さな島だけど、まだ観光的には注目されていないところ。だけど、ホントに良い島だ。長間浜をはじめとした3つの美しい海岸は、ほとんどプライベートビーチ状態。八重山の青い海とは違って、エメラルドグリーンの宮古の海は、夏の青空とのコントラストがいっそう美しい。特に5日目の空は、まるで奇跡が起こったかのように雲ひとつない青空が広がった。私は宿で自転車を借りて、一日中、島の周りを走り回った。海はもちろん、サトウキビ畑が風に吹かれる風景、来間大橋を望む展望台、・・・いずれも何気ない景色なんだけど、雲ひとつない青空の下ではまるで夏の宝物を描いたように新鮮に映える。

 そして忘れてはならないのが、民宿で出会った人たちだ。西表のあけぼの館では2泊したけど、明るくてかわいい感じの宿の人に親身にスケジュールの相談に乗ってもらったし、同宿した人と泡盛を交わしながら夜の11時まで話し込んだっけ。夕食には、その日の朝に宿の前で、釣れた魚(釣った人は宿泊者Hさん)を出してくれたし、とっても美味しかった。施設は古いし、部屋にはヤモリや蚊が少なくないけど、ぜひまた泊まりたい宿のひとつだ。

 西表での3泊目は、さわやか荘。高台にあって、屋上からの展望は素晴らしい。宿の人や宿泊した人との交流はあまりなかったけど、西表にしては綺麗な宿で、クーラーも洗濯機もタダというのがうれしかった。

 最後の来間島のペンションたきなかには、ホントに親切にしてもらった。ここは誰にも教えたくない島だ。一緒に泊まったIさんもありがとう。ここも、また違う季節に行ってみたいところだ。いま、帰りの宮古→羽田の飛行機の中から、旅先で出会ったすべて人に感謝を込めて!(03/06/29)





都会の喧騒 〜アルブレヒト&読響定期〜


 先月末に行った八重山・宮古に「心」を置き忘れてきてしまったのか(^_^;)、先週はぼぉーっと過ごしてしまった。何をするにも、あの西表島や来間島でのことを思い出し、こんどは何処に行こうか・・・などと考えてしまって、心ここにあらずという感じ。これは・・・・明らかにあの病気の症状です。そう、不治の病で有名な「沖縄病」。悪化すれば沖縄に移住までしてしまう恐るべきビョーキです。

 しかし、マジな話、東京に帰ってきていつも思うのは人の多さだ。満員電車の殺気立った混雑や、追い立てられるような時間の流れ、もはや共同体として機能していない都市のなかの人間関係・・・いずれも、東京に住み続けている間はあまり気にならないことかもしれないけど、長いこと旅をしていると東京の「異常さ」が気になってくる。

 さて、先週のコンサートはアルブレヒト=読響のサントリーホールの定期演奏会。土曜日ということもあって午後6時開演だったが、オール現代音楽のプログラムのせいか、開演時間になっても空席が多い。それでも7割程度は入っていたのは「さすが」と言うべきだろうか。

 プログラムは、ペンデレツキ「パルティータ」、菱沼尚子「エルドラド」(委嘱初演)、リーム「大河交響曲に向けてIII」、石井眞木「交響詩<幻影と死>」(遺作・初演)というもの。で、・・・・うーん、正直言ってみんなよくわかんない曲ばっかりなんだよなぁ。まぁ、アルブレヒトの得意とするレクチャーがあったところは興味深く聴けたんだけど、それ以外はサッパリ??? 新しいレパートリーを作っていこうという意欲的な取り組みは否定するつもりはないけど、こーゆー現代音楽(?)の志向性ってなにを求めているんだろう? なんか都市の異常性を音楽にしたみたいな感じだなぁ・・・とちょっと思ったんだけど、これがホントに未来にレパートリーとして残っていくのかどうか大いに疑問なんだが。(03/07/07)


夏休み 〜尾高&KST、鄭明勲&東フィル〜

 更新を1週間休んでしまった。なにやら突然、仕事が忙しくなって、それは今週いっぱい続きそう。まぁ、それが終わると世間並みに夏休み。みんなで仕事のスケジュールを融通しあって休むことになるんだけど、私は今度の週末からまた南の島に行くことに!心配された台風7号も大陸に抜けそうなので、また天気の良い八重山に出会えそうである。

 さて、ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、都響の補助金の再削減の動きが報道された。3年ほど前に3割の補助金がカットされて、その上さらに年俸制と単年度契約である。なんと世知辛い世の中だろうと思わざるを得ない。私は掛け値なしに、都響は現在の東京を代表しうるオーケストラのひとつだと思っている。少なくともここ数年は、財政危機を逆バネにして演奏水準を向上させてきたように思う。そのアンサンブルの育成は、一朝一夕になしうるものではなく、長年の蓄積が必要だといわれている。しかし、メンバーの入れ替わりが激しそうな「一年契約」の雇用形態で、はたして現在の演奏水準が維持できるだろうか。はなはだ疑問である。いや、疑問を通り越して憤りさえ感じるのは私だけだろうか。

 さて、気を取り直して、この間のコンサートのレポートである。7月11日(金)には、尾高忠明=紀尾井シンフォニエッタ東京の定期演奏会に出かけた。プログラムは、エルガー「序奏とアレグロ」、ヴォルフ「イタリア風セレナード」、ルーセル「シンフォニエッタ」、ヴィヴァルディ「四季」というもの。この第40回目の定期をもって尾高は創立以来勤めてきた首席指揮者を退き、すでに発表されている来年度の定期の指揮者陣の顔ぶれからも外れている。KSTのコンサートのほとんどは、この尾高のタクトのもとで行われてきたけど、創立当初の満員だった集客力はかなり低下して、この日のコンサートも約7割程度の入りだし、ワタシ的視点から見ても創立当初の鮮烈な印象を与えた演奏水準も停滞期にあるように思える。尾高の設立当初からの貢献は大きいと思うけど、ここはやはり新しい息吹を吹き込む必要があったのだろうと思う。

 さて、前半のプログラムは気分的に集中して聞けなかったので、後半の「四季」のみの感想だけど、まずソリストの豊嶋泰嗣の巧さが光った演奏だった。この人はコンマスとしてはよくコンサートで聴くけど、このようにソリストとして聴く機会は意外と少ない。しかし、こうやって改めてソロを聞くと、滑らかな音色の美しさ、端正な表現力に驚かされる。弦楽合奏を中心としたオケもKSTらしい、光沢を伴ったテンションの高い演奏で演奏だったけど、フレーズを細かく切りすぎるのか、音楽の横のつながりが希薄になってしまったのがちょっと残念。でも、こういう「名曲」も、たまに聴くと良いものだなぁ。特に「四季」の中では「冬」の音楽が好きなんだけど、久しぶりに堪能させてもらいました。(03/07/21)

 ※ 鄭明勲=東フィルは、数日中に補筆予定です。



30万人の足跡 〜鄭明勲&東フィル〜

 7月24日の24時前、この日の最後のアクセスが、このTokyo Classicに訪れた30万人目のビジターだった。1996年5月3日に開設して以来、7年目の到達点である。7年の実績としてこの数字の多少の評価はお任せするとして、ワタシとしては何の知名度・実績もない一人のリスナーのホームページがこの長きにわたって継続して、訪れてくれる人が増えもせず(^_^;)減りもせず、とても安定したアクセス数をキープしていることは一種の驚きを覚える。

 クラシックは日本の文化の中ではマイナーな分野だし、中でもライヴ系となればさらに人口は少ない。これからもアクセス数は(減ることはあっても)あまり増えはしないだろう。。正直に言うとHPを続けてどんな意味があるのかわからなくなる事もあるけど、継続してアクセスする人が少なくとも100人以上いるということは、それなりの存在価値があるということなのだろう。これからもよろぴく! なお30万人目にアクセスされたwindows98をお使いの方、数日中にメールを頂ければ、南の島から粗品が届くかもしれません(^_^;)。

 さて、今更ながら7月16日の鄭明勲&東フィルのこと。さすがにこのコンビだと会場となったサントリーオールはおおむね満員に近い入りである。プログラムはまず、モーツァルトのオーボエ協奏曲で、ソリストにはフランソワ・ルルーが登場した。音量はやや控えめながら引き締まった美しい音色がホールの中を吹きぬける。この人は、とても楽しそうにオーボエを吹く人で、音楽の合わせて踊っているかのよう。視覚的にも音的に面白い演奏だったけど、ただ個人的嗜好としては・・・オーボエの音色って変化に乏しいから聴いていうるうちに感覚が麻痺してくるんだよね〜。

 さて、後半はメインのマーラーである。本来は昨年の定期で取り上げていた曲だけど、家族の急病のためレナルトが代役を降った経過がある曲目だ。例によって1stVnが20人もいる巨大編成で、Dbも12人?いる。しかし、この鄭明勲好みの大編成だが、ワタシ的に「吉」と出た例がないと思っている。アプローチとしては、ダイナミックレンジをフォルテ方向に拡大し、緩やかな楽想の部分をよる遅く演奏してロマン性を強調する演奏に仕上げたかったんだろうけど、残念ながらこの日の演奏も、アンサンブルがかなり雑な演奏に終わってしまった。金管のソロのミスが散見されただけでなく、パート間の微妙なズレも感じられたし、全体的な統一感も希薄なのである。東フィル合併後の「復活」と比較すると数段落ちる内容と内容といわざるを得ない。ちょっと期待した演奏会だけに、がっかり。

 さて、すでにお伝えしたとおり、来週からしばらく南の島に行く。そして、夏はコンサートがお休みのシーズンである。しばらくは、気ままな旅日記でも綴ることにしようか。来週の南の島は、晴れの日が続きそうである。(03/07/25)




南の島で見る花火 〜宮古島にて〜

 さえない日というのは、とことんダメだ。まず失敗その1。まず今日は朝7時45分発JTA宮古島行きの飛行機に乗るのに、携帯電話を忘れたと思って取りに家に帰ったら、かばんに入っていたし、そのおかげで電車に乗り遅れて、羽田に着いたのは7時11分。まぁ、ワタシよりも後から飛行機に乗ってきた人も多かったので、ぎりぎりというワケではなかったんだろうけど、X線検査のゲートは夏休みで混んでいて、あわただしい朝になってしまった。

 宮古に向かうJTA021便は、JALの機体を使っていた。やはりJALの機体のほうが、プロジェクターも備えられていて新しい感じがする。飛行時間は約2時間半。東京では晴れていたのに、飛行時間を重なるにつれて雲が厚くなってくる。宮古空港に到着したのは10時過ぎ。空港から平良市内に行くバスはないらしいので、タクシー(初乗390円!)で、宿泊予定のホテル・アイランドコーラルに向かう。しかしタクシーの運転手も知らないホテルなのか、道に自信がなさそう。それでも、ホテルに着いたが、たしかに場所がわかりにくいホテルであることには違いない。

 とりあえずホテルに荷物を預けて、平良市内の散策に出かけた。まず気になったのが、街の中によくゴミが散らかっていることだ。八重山でもそうだったが、宮古はいっそう酷い。空き缶やペットボトル、粗大ゴミが、空き地や自動販売機、シャッターの閉まった店舗の周りに散らかっている。べつに東京ディズニーランドなみにきれいにしろとは言わないが、廃棄物処理や街の美化に取り組めば、もっともっと美しい街になると思うのに残念である。

 平良市内といっても、それほど見所があるわけではない。暑い中を歩いて、人頭税石やマリンターミナル、バイナガマビーチに行ったが、わざわざ行くべきところかというと うーむ である。人頭税石も、宮古の人々が圧制に苦しんできた歴史を語る上で好適な史料なのかもしれないが、それ自体は決して面白いものではないし、バイナガマビーチも先月に行った来間島のビーチと比較すると雲泥の差がある。やはり宮古島に見所は、美しい海に限るのではないかと思う。

 昼食は、あちこち探したが、日曜日のせいかお休みのところが多い。疲れ果てて入ったのがホテルに近い古謝そば本店。ソーキそばとミニ・カレーのセットで700円。ミニカレーと言いつつ、かなりのボリュームでお腹いっぱい。

 そろそろチェックインの時間になったので、ホテルに入って今後の作戦を練るこの日の宮古島は、宮古島まつりの最終日で、パレードと芸能祭、花火があるのだ。八重山や宮古では、このような行事が始まるのは、暑さを避けて夕方から始まる。それまで休憩ということでひと眠りZZzzz.....。4時ごろに目を覚ますが、外は雨。こりゃ、パレードの写真は捕れないなぁ・・・と思ってまたひと眠り。これが間違いの元で、失敗その2。次に起きたのは、午後7時。もう芸能祭が始まっている時間である。もう雨もあがっていたので、ホテルを出て会場であるカママ嶺公園を目指す。しかし・・・歩けど歩けどそれらしい公園が見当たらない。あたりは暗くなってくるし、不安感がよぎる。そのうちまったく逆方向に歩いていることに気づいてショック!寝ぼけていたので、まったく方向感覚がおかしくなっていたようだ。

 流していたタクシーを捕まえて、カママ嶺公園に着いたときには、もう8時過ぎ。芸能祭も佳境に入っている。的屋も出ていて、浴衣を着たおねーさんも多く、大混雑。ステージでは、伝統芸能やらクイチャーを上演していて、お祭りらしい、華やかな雰囲気。8時50分からは夜空に花火が上がる。隅田川や東京湾に花火に比べれば、スケール感が劣るけど、旅先の南の空で見上げる花火は格別なものだ。わずか10分だったけど、北斗七星を背景にあがる花火を堪能させてもらった。

 しかし、ここで失敗その3。花火を写すレンズのピントをマニュアルにしたのは良かったのだが、設定を間違えて、花火の写真はみんなピントが甘くなってしまった。ツキがない日は、とことんハズしまくるものだ。サンダルが足に合わなくて、かかとが痛いし、明日以降が思いやられる旅の初日になってしまった。夕食は外で食べる気がしなかったので、芸能祭会場近くのスーパー・サンエーで買ったネギトロ巻きととうもろこし。明日はいい日になりますように!(03/07/27)