Concert Diary in September & October

■文中の敬称は省略しています
■各タイトルの日付は、掲載日を表しています


チャリティ・オークションやっています!

 早いもので、もう9月。暦の上ではとっくに秋のはずなのに、東京ではメチャ暑い日が続いています。
 さて、チケット電脳市場で、チャリティのチケット・オークションを始めました。対象はスクロヴァチェフスキの読響定期が2つなのだが、ブル8定期のほうは読響ホームページでは売り切れになっているので、入手のチャンスかもしれない。チャリティなので、定期会員券価格よりもちょっとだけ希望落札価格は高めになっているけど、その分、開始価格は安くなっているので許してね(^_^;)。売上は、全額を、アフガニスタンで医療活動を続けているペシャワール会(代表:中村哲さん)に寄付する予定で、寄付後はきちんと会計報告したいと思います。
 ぜひ、ご参加ください!(02/09/04)



新国立劇場「椿姫」初日


 昨日(9/5)は、新国立劇場の2002-2003シーズンの幕開けを飾るプレミエ公演で、満を持して上演する演目はヴェルディの「椿姫」である。人気度が高い演目であるにもかかわらず、これまで新国で上演されなかった理由は定かではないがは、藤原歌劇団でレパートリー化されていて毎年上演されている演目であることも、無関係ではないはずだ。藤原歌劇団の「椿姫」は、さずがレパートリー化されているだけあって、豪華な舞台装置を用い、旬のヴィオレッタ歌いを招聘して、きわめて水準の高い舞台を毎年上演していただけに、新国立劇場はそれを超える上演が要求されている。ましてや新国の現音楽監督が、藤原で「椿姫」レパートリー上演を始めた五十嵐喜芳であるなら、なおさらだろう。しかしながら、その「椿姫」初日を見た感想は、・・・うーん、・・・正直言って満足できる上演ではなかったのである。

 まず良かった点から書こう。歌手は総じて高水準。ヴィオレッタのアンドレア・ロストは、現在、最も旬のヴィオレッタ歌いの一人であることは間違いない。彼女の鈴のような声の美しさと、第一幕でのちょっとタカビーな表現と、第2幕以降の純粋な愛情に目覚めた表現とのコントラストは見事。ステージ姿の美しさも申し分ない。アルフレードのマッシモ・ジョルダーノは、若さを感じさせる甘く柔らかい声が魅力のテノール。演技なのか素なのかはわからないが、世間知らずのお坊ちゃま系の雰囲気で、その意味では世間の厳しさも知らずに高級娼婦に惚れ込む成り行きの必然性を感じさせる好適な配役だ。ジェルモンは、アントニー・マイケルズ=ムーアで、今日、一番大きな拍手を集めていた歌手だが、彼の声は頑固で厳格な父親像を描き出す。その他の歌手も適材適所という感じで、合唱も含めて声楽的には満足度の高い公演だったと思うんだが・・・・。

 管弦楽は、カンパネッラ=東フィルという組み合わせだったが、前奏曲からかなり遅めの音楽作り。全曲を通じて遅かったわけではないが、息の長い旋律線で物語の悲劇性を強調するシーンは、第3幕前奏曲でも同様だった。しかし、その意図があざとく前面に出すぎていて、音楽的緊張感が希薄になってしまったきらいがある。管弦楽はそれなりに頑張っていたとは思うが、部分的に歌手との意思疎通に欠けているシーンが散見されたのは初日のせいかもしれない。あと、ヴィオレッタやフローラの家での宴会などの華やかな音楽は、いまひとつ盛り上がりに欠けたのも、音色のパレットが不足していたのが原因のように思う。

 で、一番不満だったのがルーカ・ロンコーニの演出だ。この「椿姫」に関しては、日本でも唯一レパートリーとして上演されてきた演目だけに、優れた演出でないとなかなか満足を得ることは難しい。ロンコーニの演出は、時代や人物の設定などは一切手を加えていないオーソドックスなものだが、ソリストの舞台配置や合唱の動かし方は、かなり手が込んでいる。特に合唱の動かし方に関しては、一人ひとりの動きにリアリティを追求するものではなく、全員に揃った動きを要求しているシーンが多かったのが印象的だ。第一幕冒頭は凍結したかのように静止した宴会が、音楽の高揚にともなって徐々に動き始めるシーンはよくあるとしても、特に第一幕のヴィオレッタ邸から帰る合唱が、スライドする舞台の上でまったく同じ動きをしたり、第2幕第2場でアルフレードの声で宴会の出席者が集まるシーンでも、全員が一斉にわっと集まるのである。最近の演出としては珍しく、この演出家は何を表現したいのか分からないのだが、10日にBキャストを見ると感想が変わるかもしれない。

 さらに舞台に関しては、舞台上のレールの上を左右にすべる装置が用いられ、それなりの重厚で豪華なものと言えるだろう。レールの上は、宴会が行われている広間であっったのが、宴会が終わると応接間や寝室があらわれ、第3幕ではトランプのテーブルが登場する。しかしながら、ただ舞台の機能があるから使ってみただけ・・・みたいな感じで、演出上、なんら効果をあげていないのがザンネンだ。こんな演出なら、一面舞台のオーチャードホールで行われていた藤原歌劇団の演出のほうが、はるかに優れていたと思う。ヴィオレッタの死のシーンでも、死に直面したヴィオレッタがあんなにむくっと起き上がって、ばったりと倒れられると・・・・・うーん、リアリティがっ・・という感じで、ストーリーに感情移入できないまま終わってしまった感じがした。歌手の水準が高かったので、世間的には高く評価される公演だったのかも知れないが、ワタシ的にはそれだけでは総合芸術たるオペラを楽しむことは出来ない。この舞台が新国立劇場のレパートリーとして再演を重ねていくのは、ちょっと勘弁してほしいなぁ・・・というのが初日を見た感想である。(02/09/06)



鄭明勲=東フィル、飯守=シティ・フィル「ジークフリート」

 土日で表記のコンサートに連荘。眠いので、簡潔にレポートを書くと、鄭明勲=東フィルのブルックナー:交響曲第7番(9/7サントリーホール)は、合併後の好調を維持して、感動的な演奏を聞かせてくれた。これまで鄭の個性的な演奏を聴いてきて、この人はブルックナー向きの指揮者ではないなぁ・・・なんて漠然と思っていたんだけど、7日の定期を聞いて認識を新たにした。編成はいかにも鄭らしく、なんと20-18-16-14-10(←たぶん)という巨大編成だったのだが、そこから流れてくる音はなんとも透明感溢れる整った響きなのである。もちろん弦楽器がうねる第2楽章の表現も、大きく幅が広がって、弦楽器が極める頂点もとても高く、見晴らしがよい。管楽器にはやや不満が残ったが、弦楽器は相当のトレーニングを積んだと思われ、その成果は現れていた。

 そして、鄭の解釈も、テンポもそれほど動かさずに、端正かつ正統的なアプローチで、ppからffまでのダイナミックレンジの広さも十分。なかなか素晴らしいブルックナーを聴かせてくれたのである。正直言って、この定期はあまり期待していなかったんだけど、思わぬ収穫だった。なお前半のショスタコーヴィチのチェロ協奏曲も、悪くない演奏だったが、ブルックナーの前に霞んでしまったのは否めない。

 そして日曜日は飯守=東京シティ・フィルが挑む「リング」3日目の「ジークフリート」である。今年はベルリン国立歌劇場、そして新国立劇場の「ワルキューレ」もあって、そんな中にあって、正直言ってシティ・フィルのプロダクションが見劣りするのは否めない。演出はセミ・ステージ形式で、キャストは全部、日本人キャストで、オケは発展途上のシティ・フィルである。実際に9日の演奏を聞いてみて、ベルリンや新国の舞台と比較するのは可哀想である。しかし、公的補助もない任意団体のオケが、「よくぞ、ここまで!!!」と誉めてあげたくなるのは、決して私だけではないだろう。それは終演後の会場の拍手にも、現れていた。

 まず、歌手で良かったのは、ブリュンヒルデの緑川まりと、アルベリヒの島村武男という定評ある二人はもちろん、エルダの竹本節子も、その役目を十分に果たしたし、小鳥役の笠原由里は、ちょい役ではもったいない声量と声質である。その一方で、ミーメの松浦健は、明るくてよく伸びる声をしているのだが、譜面と睨めっこで、なおかつ歌いまわしがアヤシイところあり。ジークフリートの成田勝美も譜面を見ていたが、それなりに頭には入っていた様子。でも声は前に飛んでこないし、この役としては明らかに弱さを感じさせてしまう。さすらい人の勝部太も、威厳が乏しく、存在感が希薄。

 演出は高嶋勲は、プログラムで練習日程が十分に取れないことをぼやいていたが、やっぱり十分に練りきれていない演出である。まず、登場人物の衣装がユニクロ系で、ミーメとアルベリヒは、オーバーオール、ジークムントは作業着、さすらい人はポロシャツにチノ・パンツにスニーカー、背中にはリュックを背負っているハイカー風だ。これではさすらい人に威厳を感じろというのも無理な話である。そして、第3幕のジークムントがブリュンヒルデの眼を覚ますシーンだけは、燕尾服にウェディングドレス姿にお色直しというのは演奏会形式の柔軟性かもしれない。しかし、練習の日程が取れていないせいか、歌手の動きが、かなりぎこちないのが気になった。でも、これはあくまでも演奏会形式のオペラであって、演出が評価の基準ではない。まぁ、オマケ程度に考えておけばいいのではないか。

 で、この演奏会の主役のシティ・フィルはどうだったのかと言うと、これはかなりの力演である。多数のトラを乗せているんだろうと思うけど、飯守はそれをよくまとめて、ワーグナーらしい うねり と、高揚感をかもし出す。残念ながらオケの機能性の限界はあるけれど、少なくともシティ・フィルの潜在能力を含めてすべて生かしきった演奏は高く評価したい。ぜひ来年は「神々のたそがれ」を見たいのだが、今年のプログラムには来年のことが書かれていなかったことが気がかりである。



新国立劇場「ルチア」初日

 またまた久しぶりの更新になってしまいました(_ _;)。コンサートには予定通り行っているのだが、どうも更新意欲が湧かないので、「更新したくないときには更新しない」をモットーにしている私は、その気分に任せてしまっていたのだ(^o^;)。そんなこんなでもう10月、こりゃアカンと思い、切羽詰ってHTMLを書いているわけだが、今日はとりあえず11日の金曜日に行った新国立劇場の「ルチア」プレミエ公演の模様のレポートである。

 ドニゼッティの代表作ともいえる「ルチア」は、名作といわれるわりには以外の上演機会の少ない作品かもしれない。私もかなり前に藤原歌劇団の公演で見た記憶があるが、・・・それだけ。荒唐無稽なお話だが、それなりに親しみやすい音楽なので、このように新国のレパートリーに組み込まれるのは大歓迎だ。全日程を通じて同じ組み合わせがほとんどないという複雑怪奇なキャスティングになったが、中でも完全Aキャストは初日だけ。ワタシ的初日を見た感想を結論的に書けば、大いに満足した公演になった。

 タイトルロールのルチアを歌ったルキアネッツは、音域によって声の通りにムラがあるものの、澄みきった鈴の音色のように美しい声は実に魅力的だ。最大の聞かせどころの狂乱の場では、拍手がいつ終わるのかと思うほどだったが、可憐な雰囲気をたたえた容姿もルチアに良く似合っていたと思う。相手役のエドガルドを歌ったファビオ・サルトーリは、歌では水準以上の出来栄えだったとは思うが、なぜかワタシ的には印象が薄い。舞台姿が、両国国技館系だったからかなぁ・・・。エンリーコのロベルト・フロンターリは、ルチアの厳しい兄にぴったりのテンションの高いバリトンだ。パオロ・オルミ指揮の東京フィルもかなり高水準の出来栄えで、その前日(10日)の東フィル定期の???な出来栄えとは雲泥の差だった。

 舞台装置も豪華で、新国の他の演目で例えれば「トスカ」級のレベル。これから見に行くひとは、舞台と衣装の美しさは、楽しみにしていて大丈夫。ちょっと不満だったのが第2幕第2場での舞台転換に、思いのほか時間がかかったことくらいだろうか。新国立劇場の初日公演としては、十分に満足できる公演なので、ワタシ的にはもう片方のチンツィア・フォルテが歌うルチアも聴いてみたくなった。(02/10/12)




秋深し

 いやぁ、N響の次期指揮者は、アシュケナージですかぁ(^_^;)。うーん、彼のピアニストとしての才能はともかく、指揮者としての才能があるのかなぁ。彼が振ったオケの演奏会には二度ほど足を運んだが、オケを統率し、音楽を構造的に作り上げていく力量はないと感じた。少なくとも、デュトワのような超一流のオーケストラトレーナーとの力量の差は、雲泥である。デュトワとN響の関係がややマンネリ気味になっているような雰囲気も、感じなくはないのだが、・・・それにしてもよりによってアシュケナージとは・・・正直言って、N響の将来が不安になった。

 さて、10月20日(日)は、試しに情報処理技術者の国家資格の「初級アドミニストレータ」の試験を受けてみた。シスアドって何?という人も多いと思うけど、まぁ、職場でのIT導入のリーダー的な役割だと思えば間違いない。その入門的な資格が初級シスアドなので、まぁ、持っていてもほとんど役にも立たない資格であることは間違いない(^_^;)。私が試験を受けに行ったところは某大学で、会場にいる人の顔ぶれを見ると、みんな若い。感覚的には、20代が5割くらいで、30代が3割、それ以上が2割という感じだ。女性も比較的多く、2〜3割くらいはいたんじゃないだろうか。

 私は、数ヶ月前に受験本は買ったものの、ほとんどページを開くこともなく半年が過ぎてしまったので、まったくと言って良いほど勉強はしていなかった。ホントは試験当日はめんどいから、行くのやめようかなぁ・・・なんて思ったんだが、せっかく受験料5,100円も払ったので、やむなく試験会場に向かったのである。試験は午前が2時間半、午後も2時間半で、合計5時間! もう何年も試験なんて受けていないので、さすがに疲れたし(知恵熱?)、長文の読解力も問われる午後の試験は時間が足りなくなって、最後はマークシートをカンで塗りつぶさざるを得なくなったのだが(^_^;)、シスアド予備校のサイトで採点してみたら意外とカンが当たっている! 受験直後は、こりゃ駄目だ!と諦めたんだが、意外と合格しているかも・・・なんて希望をもってしまった。

 そんなこんなで秋も深まり、東北や関東でも標高の高いところでは紅葉のシーズン。私も東北に出かけようと思っているのだが、その休暇のせいで、いまは瞬間的に仕事が大忙し。早く片付けないと、休めないよ〜。(02/10/22)




紅葉の奥入瀬〜東北の旅(1)

 今日から紅葉の東北(青森・秋田)の旅が始まった。9:55羽田発のJAS163便は、乗客同士の話し声から、もう青森情緒が漂っている(^_^;)。あの言葉は、やっぱ強烈だ! さて、久しぶりにJASの飛行機に乗ったんだけど、この10月からJALと経営統合して・・・と言っても吸収合併に近いような感じだけど・・・初めての搭乗である。羽田空港というと、すべての飛行機がターミナルから直接飛行機に乗り込めるのかと思っていたら、今日はバスで飛行機の搭乗口へ。こんなところにも航空会社の力関係が見え隠れする。

 飛行機は曇りがちの雲の上を飛んで、数分遅れの11時過ぎに青森空港に到着し、空港から八甲田・十和田湖方面に直接向かう「みずうみ8号」(11:35)に乗り込んむ。さすがに東京よりも気温は低いが、厚手のジャケットを着ていればそれほど寒くはない。問題は気温よりも天気で、曇り→小雨→晴れ→曇りと、天気がくるくる変わる。このところの旅行では天気に恵まれていたので楽観していたんだが、今回はどうもハズレっぽい。

 さあ、今回の旅の最初の目的地は奥入瀬(おいらせ)である。「住まば日の本、遊ばば十和田、歩きや奥入瀬三里半」っていう大町桂月の歌があるけど、私が十和田湖を水源とする奥入瀬渓谷を歩くのはこれで3回目になる。以前に奥入瀬に来たときは、2回とも4月はじめで、まだ除雪が終わって青森→十和田の道路が開通して間もない季節だった。青森から十和田に向かうバスは必ず八甲田を通るんだけど、4月はじめの八甲田を通ったことがあるひとは、あの垂直に切り立った10m近い雪の壁の間を走っていく車窓の記憶は絶対に忘れられないに違いない。日本有数の豪雪地帯の八甲田山、こんなところで行軍したら間違いなく遭難するだろうな・・・と実感するはずである。

 そして今回の奥入瀬行きは、初めての紅葉の時期である。ウワサでは紅葉の時期の奥入瀬の混雑はメチャクチャで、バスの時間もかなり遅れると聞いていたのだが、これが肩透かしを食うほどスムーズに奥入瀬の出発点である焼山に時間通り(午後1時半ごろ)に到着したのである。これは天気が悪かったのが幸いしたのか、それとも平日だったからなのか、理由は定かではないが、焼山から石ケ戸に向かって歩き始めても、すれ違う人もあまりいないほどなのである。

 それでも黄色く色づいたブナの林は美しく、時折、赤く色づいたカエデがアクセントを添える。清流の透明度は、上高地の梓川のほうがずっときれいだが、流れの緩急の変化に富んでいる点では奥入瀬川のほうが上だろう。残念だったのは、ちょっと天気がイマイチだったことだが、それでも時折晴れ間から覗かせる太陽が、紅葉を透かして、色合いをさらに増していた。(ちなみにこのページの写真は、今日撮影したものです)

 歩き始めて約2時間たった午後4時ごろ、奥入瀬渓流の中間点である石ケ戸に到着。もう太陽も山陰に隠れて、あと数十分で写真を撮るのも難しくなりそう。ちょっと早いと思ったけど、ここで散策を中断して宿へ向かうことにした。バスでいま歩いてきた道を戻って十和田湖温泉郷で降り、予約してあった奥入瀬グリーンホテルへ向かったんだけど、・・・バス停から宿までの間に、寂れた廃墟や、閉店したと思われるスナックの無残な姿が・・・。なんと寂れた温泉郷だろうか。青森から十和田湖の間には、たくさんの名湯・秘湯があることは知られており、城ケ倉温泉、酸ケ湯温泉、谷地温泉、猿倉温泉、蔦温泉と、枚挙に暇がない。ワタシ的にも、いつかは酸ケ湯温泉と谷地温泉、蔦温泉にはいつかは行ってみたいと思っている。しかし十和田湖温泉郷には、目だった泉質の特徴はなく、食べるものも特産品があるわけではない。

 このグリーンホテルは、本館(旧館)で1泊2食付で1万円ちょうど。この観光シーズンにしてはかなり安い値段だが、廊下を人が通ると部屋が揺れるし、隣の部屋の振動がモロに伝わってくる。構造上の問題がありそうで、今夜は眠れるかどうか・・・。食事もまぁ・・・品数はあるものの、内容的には普通以上のものではない。温泉は、思っていたよりもいいお風呂で、いわゆる「かけ流し」だと思う。露天風呂もあるのだが、明かりがないので夜に入ると結構怖いかもしれない。まぁ、観光シーズンなので、トータルでは値段相応という感じだろうか。(02/10/23)



奥入瀬から十和田、そして後生掛温泉へ〜東北の旅(2)

 昨日=24日は、朝6時半に起きて7時朝食。私は食事にあまり贅沢を言うタイプではないが、この奥入瀬グリーンホテルは、旅館の食事としてはあまりほめられる宿ではない。品数はあるものの、味的には大戸屋のほうが美味しいのではないか。8時にチェックアウトして、外に出ると快晴で青空が広がっている。気温は息が白くなるほどだが、思っていたよりは寒くない。十和田湖温泉郷のバス停へ向かうと、奥入瀬に向かう観光客がすでに数人、バスを待っている。平日のためなのか高齢者が多く、しかもその中の多くの人が一眼レフと三脚を持っている。

 8時22分発のバスに乗って10分ほどで、昨日の奥入瀬散策の中断点だった石ケ戸で下車。「歩けや奥入瀬三里半」と歌われているけど、三里半といえば約14km。昨日歩いた焼山→石ケ戸は約5.2kmだったが、今日の石ケ戸→子の口は約9km。見所は昨日の石カ戸〜子の口間のほうが圧倒的に多く、観光客の多くもこの9kmだけを歩く人が多いようだ。そのせいか、昨日よりも明らかに観光客が多く、観光バスや全国各地のナンバーの自家用車も停まっている。

 その景色に関しては写真をご覧いただくことにして、約3時間半かけて奥入瀬を完歩。天気が良かったので、歩くときの気分は良かったのだが、デジタルカメラの場合だとコントラストが高すぎて、ハイライトが飛んでしまう場合が多かった。紅葉を写真におさめる場合、少し曇っていた日の写真をレタッチした方がきれいに仕上がるかもしれない。

 子の口に着いたのは12時過ぎで、十和田湖が眼前に広がる。遊覧船の出発までに、昼食までのつなぎと思って売店できりたんぽのみそ焼き(\200)を食べる。これは安くて、結構美味しい。遊覧船は12時30分に出航し、その時に船の2階のデッキから写した写真が下の2枚だ。有数の紅葉スポットである十和田湖で最高のシーズンは今のはずなのだが、遊覧船は意外と空いていて、感覚的には定員の半分弱程度かな。奥入瀬や十和田の紅葉はもちろんきれいなんだけど、正直に書くと思っていたよりも紅葉の色ががくすんだ感じがしたのだが、これは列島を横断した台風のせいで、黄色が鮮やかなブナの葉の多くが落葉してしまったことが原因らしい。まぁ、これは自然が相手だけに仕方がない。

 遊覧船は約50分、この時期の十和田の美しさをい味わいたいのであれば、やはり遊覧船が一番だと実感し、船は十和田観光の中心地である休屋に到着した。とりあえず接続のバスの時間とバス停を確認してから、ちょっと遅い昼食をとる。JRバスの上にあるレストランに入ったのだが、・・・入ってみたら、ずーっと前にも入ったことのある店で、そこで稲庭うどん定食(\1,000)をたのむ。しかし麺にコシがなくて、味は・・・イマイチ。

 この店でコーヒーを飲んで時間を潰して、午後3時ちょうど発の八幡平方面行きのバスに乗る。バスといっても、ほとんどワゴン車みたいなマイクロバスで、乗ったお客はわずかに7人だけ。バスは十和田を離れて、秋田県の鹿角市に入るのだが、その間の道沿いの紅葉も非常に美しい。夕焼けに照らされて、より紅葉が強調されたせいなのかもしれないけど、十和田湖よりも美しいと感じたほどである。2時間ほどのバスの旅だったが、この時期の東北だったら、きっとどこに行ってもそれなりに美しい紅葉が楽しめるに違いない。

 バスが目的地の後生掛温泉に着いたのは、もうあたりが暗くなった午後5時。車が八幡平に入ると、標高が高いためか紅葉はすでに終わっていて、後生掛温泉に近づくと湯煙がもうもうとスゴイ勢いで上がっている。秋田は名湯と言われるところが多いが、その中でも後生掛温泉は玉川温泉と並ぶ湯治場として知られている。早速チェックインしたのだが、後生掛温泉旅館は私がイメージしていた古びた建物ではなく、とてもきれいで新しい建物だ。よくホームページの宿の宣伝用写真は、実物より数倍良く写っていることが多いけど、この後生掛温泉旅館の場合は、写真よりも実際のほうが数倍良い。

 私の部屋は本館(=旧館)1泊2食付で1万円なのだが、展望は悪いものの、内装はリフォームされていて畳も新品同様。おしぼりも私がチェックインする予定の時間に合わせてセットしたかのように、冷たいおしぼりがおいてあるし、接客も実に丁寧だ。夕食も、山菜のグラタンや、秋田名物のきりたんぽ鍋、名産のホタテ貝などのお刺身、旬のキノコを多用したてんぷらや酢の物など、料理もかなり美味しい。贅を尽くした食材というわけではないが、地元の食材を組み合わせて、この値段の範囲で最大限の努力をしたものだろうと思う。八幡平ビールも注文して、しばしシアワセ! もちろん温泉もスゴイ。大浴場に足を踏み入れると、湯煙で先が見えないほど。歴史ある温泉旅館だけに、木張り(たぶんヒバ)のお風呂は古さを感じさせるけど、手入れが行き届いているため、不潔さはまったく感じないし、白濁した硫黄泉による7つの個性的な風呂(泥湯、箱蒸し湯、蒸気サウナなどなど)を十分に楽しむにはは1泊ではもったいないほどだ。(なお新館にも風呂はあるけど、小さめで普通の浴槽しかない) うん、この宿は、誰にでも安心して勧められるワタシ的特選の宿に加えることにしよう。今夜は足音におびえることもなく(^_^;)、安心して眠れそうだ。(02/10/24)



後生掛温泉から玉川温泉、そして田沢湖へ〜東北の旅(3)


【源泉の上に建っている?後生掛温泉、床が暖かい】

【玉川温泉の岩盤浴】

【玉川温泉の自然研究路】

【玉川〜田沢湖間のバスの車窓から見える紅葉】
 今日=25日(金)は朝7時半に起床。ホントはもっと早起きして、もう一度温泉に入りたかったんだけど、それはまたの機会にしよう。宿の朝食は、地元の素材を生かしたもので、素朴ながら味は美味しい。チェックアウトのときに清算したのだが、やっぱり宿泊料は1万円・・・これでこの値段ならまた来たくなる宿である。八幡平に来たときには、この後生掛温泉旅館がいい。決して洗練された宿ではないし、高級旅館ではないかもしれないが、値段なりのサービスは確実に得ることができる宿だと思う。

 チェックアウト後、バスの時間までに、後生掛温泉の周囲にある遊歩道を歩く。一部の遊歩道が工事中だったため、半分くらいしか回っていないと思うけど、もうもうと湯気と温泉が噴出している現場を目の当たりにすることができる。このあたりには地熱発電所もあり、豊富な温泉が地域の電力にも生かされているのだ。そして、9:14分発の田沢湖行きのバスに乗る。八幡平を下る途中の、標高が下がるにつれて紅葉の名残が目を楽しませてくれる。昨日、ここを通ったときにはもう暗かったので良くわからなかったのだが、ここの紅葉は十和田の紅葉よりもオレンジ色が鮮やかで美しい。バスに乗って約40分、秋田県鹿角市から田沢湖町にはいり、いよいよ奇跡の温泉といわれている「玉川温泉」だ。バスを降りると玉川温泉のマイクロバスが迎えに来ていて、温泉まで送ってくれる(歩いても500mくらいの距離だ)。

 玉川温泉の泉質は、ラジウムを含むとともに、世界でも珍しい塩酸を主成分にした強酸性の泉質らしい。毎分9000リットルを噴出する源泉は、一本の源泉としては国内最大の量を誇るとともに、ph値が1.2という強酸性度の日本最強?の源泉なのだ。優れた効能は、ホントかどうかは知らないが「ガンも治す」と言われている。まぁ、そこまでの効用があるかどうかは別にしても、確かにここの温泉は他の温泉とは違う。ます大浴場の受付の自動販売機で600円の入浴券を買い、バッグをコインロッカーに預けて大浴場に入る。浴室は後生掛と同じ、木で作られた歴史を感じさせる浴場だ。年代は感じさせるものの、手入れがされているので不潔さはないし、これだけ強酸性の温泉ならばそれ自体の殺菌作用は強烈なはずである。

 まずかけ湯をして、最初に源泉を50%に希釈した浴槽に入る。そう、この玉川温泉の源泉はあまりに強烈なために、ほとんどの浴槽は希釈されているのだ(^_^;)。お湯を舐めると、さすがに強烈に酸っぱい。ただし普通に入っている限りは、思ったよりは刺激は少ない。しかし、源泉100%のお湯に入ると、これは強烈だ! 舐めると、今度は激烈に酸っぱい!!体に少々の傷口があると、そこがピリピリするし、とてもじゃないけど長時間の入浴は無理だ。しかし、お湯の肌触りは独特のものがあって、体にまとわりつくような濃〜い感じは、これまでの他の温泉では味わったことがないものだ。お風呂に入っていた時間は20分くらいだったけど、上がってから心地よい疲労感が残る。30分ほど休憩を取ってから、自然研究路を散策した。この研究路には、勢い良く噴出している玉川温泉の源泉や、湯畑、特別天然記念物の北投石(ラジウム放射線を含有する石で、世界で台湾とここにしかない)、岩の上で地熱で体を温める岩盤浴の様子を見ることができる。これも一見の価値がある。

 バスの時間までまだ間があったので、売店を見学。湯治場らしく、自炊できるように肉や野菜、果物、カップラーメンなども売っているし、日常生活用具も一通りそろっている。昼食に和風ラーメンを食べて、それでも時間をもてあましてしまい・・・、というのも、私が乗ろうとしている路線のバスは一日に3本しかないのだ・・・喫茶室でコーヒー(これが意外と美味しい!)を飲みながらパソコンを打ってまったり。バスの時間(13:24)が近づいてきたので、喫茶室を出たら、雲行きがアヤシイ。見るみる間に雨が降ってきて、露天で岩盤浴していた人が次々と引き上げてくる。

 ようやく田沢湖行きのバスがやってきて、先頭の席を陣取る。天気は悪かったが、光線がフラットになって、紅葉を楽しむにはむしろ好ましいライティングだ。そして、この区間のバスからの車窓から見える紅葉は、本当に素晴らしい情景だった。オレンジ、赤、黄色、緑、黄緑・・・さまざまな色の葉が重層的に折り重なって、自然が描き出す油絵のような車窓である。特に玉川温泉から玉川ダムまでの30分は、まさに絶景で、なぜこの間が観光地化されていないのか、不思議な感じだ。この紅葉を見るだけでも、このバス路線に乗る価値がある。

 バスは3時前に田沢湖畔に到着し、眼前に田沢湖の深い色が広がる。もうすぐ夕方だし、天気も良くなかったので、今日はすぐに宿に直行。バス停からちょっと歩いて、湖畔ある田沢湖サンライズホテルに到着した。今日は、ここでゆっくりと体を休めて、明日以降の日程に備える予定。(02/10/25)




田沢湖から角館、そして秋田へ〜東北の旅(4)


【田沢湖は神秘的な美しさ、遊覧船の軌跡が湖面を彩る】

【角館の武家屋敷前の通り】

【28日の雨の武家屋敷、紅葉はまだ】

【竿灯祭りは、青森ねぶた、仙台の七夕と並ぶ祭り】
 26日の土曜日は、いまひとつパッとしない天気で、やや曇りがち宿泊した田沢湖サンライズホテルは、やや古い建物ながら、リゾート感覚もある内装だ。しかし田沢湖そのものの人気が落ちているのか、休前日にもかかわらず客は少なく、夕食の食堂に集まってきた客の数を見ても・・・・・ガラガラの様子。郷土料理のきのこ鍋をメインにした食事はそれなりに美味しいんだけど、どこか寒〜い風が吹いている感じがしてしまう。朝は、ゆっくり起きて、チェックアウトしてから田沢湖からバス停までをゆっくり歩く。田沢湖は、日本で一番の深度である423mを誇る湖で、深く青い湖面が印象的だ。しかし、そのほかの特色や見所があるかというと疑問符をつけざるを得ないし、この日はまだ紅葉には早いようだった。

 そして、田沢湖畔のバス停から10:20発の秋田行きのバスに乗って角館に向かう。約40分で角館武家屋敷の一角である表町のバス停で下車した。「小京都」という喩えは、各地の観光地で使われるけど、この角館も例外ではない。たしかに古い町並みが残るという意味では、たしかに共通点があるが、この角館は江戸時代の武家屋敷の町並みが色濃く残る町であり、伝統ある寺社仏閣が並ぶ京都とはまったく雰囲気が違うことは間違いない。目的の紅葉には、まだ1週間ほど早すぎたみたいで、もみじの葉も少しだけ色づき始めている程度。あと、土曜日ということもあって、観光客が多く、かなりの賑わいである。町並みそのものは非常に美しいのだが、情緒という点では期待したほどではなかった。

 樺細工伝承館や公開されている武家屋敷を見学し、古泉洞で稲庭うどんを食べたら、もう4時。大体、町並みも見尽くした頃に雨が降ってきた。4時40分頃、伝承館前で、宿泊先である角館温泉花葉館の送迎バスに乗って約20分、角館町郊外で第三セクターが運営する花葉館に到着した。花葉館は96年にオープンしたばかりの施設で、まだ新築同様に新しい。宿泊施設というよりも、むしろ町民向けの温泉保養施設といったほうが適切な感じで、日帰り温泉利用の人が多いような印象だ。部屋は今回の旅の中で最もきれいだったが、意外と隣の部屋との壁が薄く、音に神経質な人には気になるかもしれない。食事もきりたんぽ鍋がメインで、そのほかにも焼き魚、煮物、てんぷらなども、着席してから作りたての暖かいものを持ってきてくれるのがうれしい(他の宿では、あらかじめテーブルにセットされていた)。お米も独自の炭穣米あきたこまちで、ここだけの即売も行っているものだが、これも美味しい。温泉は、特徴の乏しいものだったが、宿の人はみな親切で、トータルでは満足できる宿泊施設だ。

 翌日曜日(28日)は、朝から雨。天気予報でも今日は大荒れの予報である。ホントは紅葉の名所である抱返り渓谷に行こうと思っていたんだけど、雨と気温の低さを考えると、ちょっと無理と判断し、雨の角館の武家屋敷をもう少し歩いてから、秋田に向かうことにした。花葉館でお土産を買って、9:30に花葉館から角館への送迎バスに乗って伝承館前で下車。雨の武家屋敷も情緒があって良いものだが、時間が経つにつれて観光客が増えてくる。まぁ、日曜日だから仕方ない。1時間ほど武家屋敷周辺を歩いてから、JR角館駅へ向かったが、そこからは目的のバスが発着していないことを知り、、バスの角館営業所の場所を聞いて、11:05発の秋田行きバスに乗り込んだ。途中、雲の合間から日が差し込むこともあったが、すぐに雨が強くなって、止む気配はない。

 昼過ぎに秋田駅前の到着。秋田市は人口30万人。駅前には大きなショッピング・ビルも立ち並ぶ近代的な街だ。とりあえず、JRのViewプラザで、出発間に電話でCNプライガイドに予約しておいたコンサートのチケットの引き換えをする(^_^;)。そして今夜の宿である秋田キャピトルホテルに向かい、チェックイン。しばらく休憩してから、雨の中を,秋田の中心的繁華街である川反通りを歩いたが、みんな日曜日のせいか開いている店もなく、昼食をとることも出来ないまま、赤レンガ郷土館に向かう。ここでピアノのコンサートが行われていたが出演者不明。展示品には見るべきものが乏しく、すぐに秋田市民俗芸能伝承館へ。ここではちょうど東北三大祭のひとつである「竿灯祭り」の実演が行われていて、50kg以上あると言われている竿灯を肩や腰で支える妙技を見ることができた。

 天気は悪化の一途をたどり、伝承館のあたりではすごい勢いで「みぞれ」が降ってきたし、一昨日通って来たばかりの鹿角−田沢湖間の道路が積雪のため、通行止めになってしまったらしい。もう外で食事をするのをあきらめて、ホテル内で夕食をとることにした。稲庭うどんの「寛文五年堂」という店でてんぷらのコースを頼んだのだが、これがなかなかの美味。天ぷらももちろんだが、うどんも乾麺による冷たいうどん(コシがある!)と、稲庭で珍しい生麺による温かいうどん(つるつると、のど越しが良い)の食べ比べも、他ではなかなか出来ない趣向である。これは満足!

 さて、明日はいよいよ旅の最終日。後半の日程は、雨のために思うような行動が出来なかったのが残念だったが、この時期の東北は、本当に紅葉が美しい。また、青森・秋田は、温泉も豊富で名湯と呼ばれるところも多い。角館だったら、桜の時期は素晴らしく美しかっただろうし、季節が変わればそれぞれの楽しみもあると思う。でも、明日は時間通りに飛行機は飛ぶんだろうか???ちょっと心配だ。(02/10/28)



秋田から東京へ〜東北の旅(5)


【アトリオン音楽ホールのコンサート】

【千秋公園の紅葉】

【久保田城跡の千秋公園】

【大雨に煙る秋田市内・千秋公園から】
 28日の月曜日は、起きてみたらもう午前9時。カーテンを開けてみると、やはり昨日に引き続いて雨。ホテルで朝食を取って、10:30頃にチェックアウト。秋田キャッスルホテルは、「旅の窓口」で予約すればかなり安く泊まれるんだが、その割には部屋は広く、アメニティもしっかりと揃っている。建物は若干古さを感じさせるが、手入れが行き届いているので、秋田に訪れる人にはオススメ。

 宿を出て、ホテルの目の前にある千秋公園へ向かう。千秋公園は、秋田県地方を統治していた佐竹藩・久保田城の跡で、現在は公園として整備されているほかに、美術館や歴史関係の資料館などがある。正直に書くと、全国各地にある県立の郷土資料館的な水準を期待すると、かなり落胆する内容で、わざわざこのために秋田に来るほどのものではないと思う。しかし、昨日からの冷え込みで、この公園内の紅葉が急速に進んだみたいで、木々の彩が美しい。途中、すごい勢いの雨風に見舞われたものの、昼過ぎには小降りになって、アトリオンに向かった。アトリオンは秋田市の駅近くの繁華街にある複合施設で、地下にある県産品のショッピングゾーンや、NPOの交流コーナー、1階の秋田県の観光案内所のほかに、4階には約700席の音楽ホールもあり、チェコ・フィルや、ピアノのメジューエワのポスターが大々的に貼られていた。チェコ・フィルのコンサートは、ドヴォルザークの8番&新世界+αな曲目だったが、わずか700人程度のホールで、フル・オケの演奏会が開かれるというのは贅沢というべきなのかもしれないが、この容積では音が飽和してしまいそう。ちなみにチケットは1万円均一。

 午後1時。そろそろ空港へ向かうバスの時間だ。手早くファーストフード店で昼食を済ませ、空港へのリムジン・バスに乗り込む。約40分で秋田空港へ到着したものの、天気は相変わらずの雨。飛行機は定刻より30分ほど遅れた3:30に離陸し、現在、私は飛行機の中である。離陸後、厚い雲を突っ切るときに少々揺れたものの、雲の上はもちろん快晴。天気が悪いのは日本海側だけみたいで、太平洋側に出ると雲の合間に地上が見えてきた。さて、今回の旅は、5泊6日で青森・秋田を周ったが、後半は天候に恵まれすに予定通りには行かなかった。しかし旅なんてこんなものだ。スケジュールどおりに行くほうが珍しいし、天気が悪いおかげで宿でゆっくりとすることも出来た。まぁ、プラス思考でいこう!(02/10/30)







アルブレヒト=読響「パルジファル」第3幕

 読響創立40周年を記念するシーズンの中でも、最も注目となるのは「パルジファル」を中心とする10〜11月の公演だろう。ポール・エルミング、ペトラ・ラング、フランツ・グルントヘーパー、クルト・モルという、現代を代表するワーグナー歌手を集めて上演される「パルジファル」の東京での上演はは、演出付上演ではウィーン国立歌劇場以来だし、演奏会形式でもベルリン国立歌劇場以来だ。私は財政難なので(^_^;)、演出付上演は見に行けないのだが、せめて演奏会形式の第3幕だけでも・・・と思って、10月30日に東京芸術劇場に出かけた。会場は、3階席に限って言えば、約6割程度の入りだろうか。空席が目立つ公演である。

 前半は、アルブレヒトお得意のレクチャー・コンサートで、オペラにおけるテンポの設定と、音量設定のお話。ペトラ・ラングが実際に歌って、オケパートのテンポ設定と、歌手の呼吸によるテンポ設定のあわせ方や、オケの音量を抑えて歌手の声を響かせるコツなどを、30分にわたってレクチャー。いずれもオペラ・ファンには解っていることなんだけど、実際、このように聞き比べることはマレなので、なかなか面白かった。

 15分の休憩後、字幕スーパー&合唱付きの本格的な「パルジファル」第3幕である。ところで、この会場に集まった多数の客も同様だと思うけど、「パルジファル」はワーグナーの著名な作品の中では最も馴染みの少ない作品である。正直言って、オペラの上演としては全くピンと来なかったというのが正直なところなのだが(^_^;)、さすがにスゴイ歌手が集まったものだと感心した。まずクルト・モルの声!セーヴして歌っているにも関わらず、地を這ってホールを包み込むように響く低音はスゴイ。エルミングも、輝くようなヘルデン・テノールぶりを見せて、ベルリン国立歌劇場での来日時の風邪による不調を挽回する出来栄え。ペトラ・ラングの声も、脂が乗り切った艶やかな声は魅力的で、表現力も懐の深さを感じさせる。グルントヘーパーは、この3人に囲まれてワタシ的には印象が薄くなってしまったのだが、3人と互角に渡り合える実力の持ち主であることは間違いない。

 注目のオーケストラは、かなり練習を積んだと見えて、緻密なアンサンブルを聞かせてくれた。アルブレヒトの指示だろうと思うけど、かなりセーヴした表現で、歌手を引き立てることに神経を傾注しているように見えた。「パルジファル」そのものに、あまり馴染みがないので、表現の志向性についてどうこうは言えないけど、お題目の神秘性は表現できていたと思う。40周年に相応しい水準であったと思うけど、私も含めて一般ウケしたかといえば、どうも・・・・(^_^;)。