Concert Diary in June

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■各タイトルの日付は、掲載日を表しています


●01/06/04 ベルリン国立歌劇場の「指輪」

 コンサート会場などで配布されるチラシなどでご存じの人も多いと思うけど、ベルリン国立歌劇場の「ニーベルングの指輪」の詳細が発表になった。(なぜかNBSのホームページは、今日現在、全く更新はされていない) 日程はすでに発表されているように下記の通り。


  第1サイクル
神奈川県民
ホール
第2サイクル
NHKホール
第3サイクル
NHKホール
ラインの黄金 1/16(水) 1/27(日) 2/6水)
ワルキューレ 1/17(木) 1/30(水) 2/7(木)
ジークフリート 1/19(土) 2/1(金) 2/10(日)
神々の黄昏 1/23(水) 2/3(日) 2/13(水)

 で、一番、人気が出そうなのが日曜日が2回含まれる第2サイクルで、次がキャパシティが小さい神奈川県民ホールを会場とした第一サイクルだろうと思う。人気は上記の通りでも、チケット枚数は第一サイクルの神奈川の方が少ないから、入手難になるのは、第一サイクルになると予想しているがどうだろうか? 

  チクルス券
7/7発売
一回券
9/8発売
192、000 48、000
176、000 44、000
156、000 39、000
132、000 33、000
104、000 26、000

19、000
(18,000)

 
12、000
(11,000)

 次にチケットの値段だが、右の通り。ミュンヘン・オペラの「トリスタンとイゾルデ」や「フィデリオ」と概ね同額となったが、まぁ、こんなモノなんでしょうね。なんか、感覚が麻痺して、あまり値段が高いという感じがしなくなってしまったのだろうか。最近の来日オペラでは、チケットの売れ残りが目立っているが、この「リング」に限って言えば、公演数の少なさ(3サイクル)や、ワーグナー・ファンのオタク度の高さ、「リング」というステイタスに支えられて、かなりチケットは売れそうな感じがする。

 水準的にも、バレンボイムとベルリン国立歌劇場のワーグナーは、前回の97年の来日時の「ワルキューレ」と「パルジファル」で水準の高さは実証済みなので、これは絶対に「買い」だと思う。ワタシ的には異例なのだが、この際、チクルス券を狙ってみようと思っているのだが、これはかなりの激戦になるだろうなぁ。


●01/06/12 オペラ&コンサート3本立て(Part2)

METの「サムソンとデリラ」(6/6)

 この日のNHKホールは、「ばらの騎士」の時とはうってかわって、3階席もほとんど満員の盛況。どう考えてもサン=サーンスのオペラの人気とは思えないので、ドミンゴによる動員力だということは疑いようがない。さすがドミンゴである。

 ワタシ的に、この演目はまったく初めての演目で、一回見ただけで結論づけるつもりはないが、・・・・・・・・はっきり言って全く面白みがないオペラである。聖書の神話をオペラの素材にしたって、全くリアリティがなく、無神論者のワタシには登場人物の誰にも感情移入ができない。音楽的にはところどころ興味をひいた旋律があったけど、全体としてはどこが良いのかわからないオペラであった。したがって演出の善し悪しは、言及できない。

 歌手的には、ドミンゴとボロディナというMETの看板歌手が登場しただけに高水準。合唱も迫力があったし、オケも意外と良かった。しかし、このオペラを楽しめたかと言うと、やっぱり残念と言わざるを得ない。いくらスター歌手が登場しても、演目的面白さがないと楽しむことのできない自分を再発見したのがこの日最大の収穫か?(^_^;)

新国立劇場「蝶々夫人」(6/9)

 たしか新国が「蝶々夫人」をレパートリーとして上演するのは3回目のはず。これまでこの劇場では林康子、佐藤ひさらのバタフライを聴いたけど、今回は緑川まりを聴くことになった。(ホントはヴィッラロエルの日も行くはずだったんだけど、仕事の関係で断念) 典型的なプリマドンナ・オペラだけに、緑川の出来が上演の質全体を左右するけど、ワタシ的には残念な公演になってしまった。

 その理由は、緑川まりの歌が私の好みからはほど遠かったこと。彼女の歌は、蝶々さんにしてはドラマチックすぎて、感情が表に出過ぎるし、第一幕の「愛の場面」最後でも音域に無理があるのか、ほとんど声がかすれて絶叫調になってしまった。第2幕以降はなんとか持ち直したけど、私のイメージする蝶々さん、すなわち可愛らしく繊細ながらも、芯が強いしっかりものの女性、とは違うのだ。まるでトスカみたい・・・と言ったら言い過ぎ? ワタシは緑川まりが素晴らしいソプラノだと認めつつも、蝶々さんに関してはキャストミスなんじゃないかと思ってしまった。

 ピンカートンを歌ったトドロヴィッチは及第点、シャープレスの大島幾雄は声の深さに欠けるので説得力イマイチだったのが残念だった。あと問題だったのはグアダーニョ=東フィルの管弦楽で、特に第一幕で顕著だったんだけど、先を先をと急ぐタクトには「なんだ、こりゃあ」と思ってしまった。この曲の持つ情感や、歌手や合唱の呼吸など考えていないとしか思えなかった。トータルで見ると、私が見た蝶々夫人の中では、最低ランクの上演。あー、休暇をとってまで行くんじゃなかった。

ジャン・フルネ=都響(6/11)

 都響の定期で東京文化会館はだいたい6〜7割前後の入りなんじゃないかと思うけど、この日の会場は5階サイドの一列目はほとんど埋まってしまうくらいの入り。たぶん会場キャパの8割以上(2,000人前後)の客は入ったんじゃないだろうか。フルネの人気も高まり中!

 プログラムは「運命の力」ベルリオーズの歌曲集「夏の歌」(sp:浜田理恵)、幻想交響曲というもの。演奏順とは関係なく、まず「幻想」から言うことにしたいが、これまでのフルネの「幻想」とはかなり違う演奏だった。弦楽器や管楽器を思い切り鳴らし、テンポも全体的に遅い。正確な演奏時間は計っていないが、こんなに遅い幻想を聴いたのは初めてだ。弦楽器はいつもの都響と違って、実に分厚く響く。日本のオケからはこんなに厚い弦楽器はなかなか聴くことはできないだろう。

 しかし、この演奏を楽しめたかと言うと私は否定的で、正直言って退屈な演奏になってしまった。このテンポでも破綻のない演奏をした都響の充実度には敬意をはらうけど、弦の厚さと引き替えに音色的な美しさが損なわれていたこと、その弦楽器が主要な原因で全体的に音色が平板になってしまったこと、テンポが弛緩してしまって音楽の密度が低下してしまったように感じられたこと、フルネらしい室内楽的で見通しの良い演奏には至らなかったこと(←これはフルネのアプローチの変化か?)など、私の期待には沿わない演奏になってしまった。

 前半の「運命の力」は、先日聴いたばかりの超明勲の煽りまくった演奏とは違って、フルネらしいオーソドックスな演奏。浜田理恵の「夏の歌」は実に美しい曲で、彼女の声も適度な厚みがあって、人の心のひだに寄り添うように綺麗に響く。12型に絞り込まれた管弦楽も、室内楽的に美しいサポートで、これは実に良かった。


●01/06/13 ジャン・フルネの「エロイカ」

 昨日の都響定期の会場でジャン・フルネ指揮東京都交響楽団によるライヴ録音のベートーヴェン交響曲第3番「英雄」のCDが先行発売されていたので、早速、購入して聴いてみた(fontec FOCD9151)。フルネはフランス音楽のスペシャリストとして有名だけど、実はドイツ音楽も非常に素晴らしい演奏を聴かせてくれる指揮者である。特に東京芸術劇場で聴いたブラームスの4番なんかはワタシ的ベスト・ライヴのひとつだ。そんなわけで昨年5月に東京芸術劇場で行われたエロイカのコンサートにもぜひぜひ行きたかったんだけど、どうしても外せない仕事が入って断念! あとから名演奏だったと聞かされて悔しい思いをしたんだけど、その日の演奏が録音されてCD化されたのは嬉しいことである。

 さて、CDはまだ2回しか聴いていないんだけど、先入観なしに聴いたら、聴衆のノイズなどが少ないので、最後の拍手とブラボーが聞こえるまでライヴ録音だと気づかない人もいるかもしれない。東京芸術劇場のホールトーンはあまり入っていなくて、残響は控えめ。音が痩せて聞こえるのは、マイクのセッティングなどの録音技術上の問題なのか、それとも都響の音に原因があるのかわからないけど、日本のオケのCDって、ナマで聴くときに比べてみんな音が痩せて聞こえる傾向にある。まぁ、私はホールトーンがたっぷりの、最後列で聴くのが好きな人だからそう思うのかもしれないが・・・。

 さて、演奏の方だけど、この「エロイカ」もどちらかというとテンポは遅めで、雄大にして骨格がしっかりした演奏である。遅さでいうと、一昨日の「幻想」の方が遅さは際だっていたけど、この「エロイカ」へのアプローチと同じ傾向だ。本人が意識しているかどうかはわからないけど、フルネの演奏も、年々、遅くなっているのかもしれない。第2楽章の葬送行進曲は、実に息の長い音楽作りをしていて、ひとうの聞き所だ。テンポの揺らぎは少なく、堅牢かつ実直な演奏である。たぶん、バイアスがかった視点で見たら、これがフランス音楽の巨匠と言われているフルネの音楽だとは気づかないだろう。でも、この悠然たるアプローチは、「エロイカ」だから良いのであって、「幻想」までこんな感じで、いやコレに輪をかけて遅くしたんじゃなぁ・・・というのが率直なワタシ的実感なのだ。今月は、フルネでブラームスの3番を聴くことになっているのだが、はたしてどんな演奏になるのか楽しみだ。


●01/06/18 鄭明勲=東フィルの「復活」(01/06/16)

 新星日響と合併し、新たな「東フィル」として再出発する最初の定期演奏会は、新たに看板指揮者となる鄭明勲を迎えて、マーラー交響曲第2番「復活」が演奏された。私が聴いたのは定期演奏会2日目に当たるサントリーホールの定期演奏会だったけど、チケットは売り切れ、会場は満員となった。いつもとは違う緊張感がホールを包み込み、鄭明勲がステージに現れると割れんばかりの拍手が起こる。

 「復活」は、私が初めて行ったマゼール=読響のコンサート以来、何度も何度も聴いたけど、この日ほど燃えたコンサートはなかった。弦楽器のピッチの不揃いや、後半は金管がバテた感じがしたけど、オーケストラ全体の白熱度が、そんなキズやミス、不揃いなどをすべて補ってあまりあるコンサートだったろう。私は2階Cブロック最後方の席だったけど、そこから見てもヴァイオリンのボウイングのアクションの大きさから「やる気」が伝わってくる。ダイナミックレンジは最大限に拡大され、室内楽的に精緻な演奏から、オルガンまで加わったホール全体が鳴動するコーダに至るまで、日本のオケからここまで壮大なスケール感を感じたことはなかった。アタックの鋭角的な鋭さ、クレッシェンドのめざましい立ち上がり、・・・いずれも機能的限界はあるにしても、その限界を超えようという強靱な意志が支えたコンサートは、まさに感動に一言である。

 鄭明勲の解釈は、曲全体を一つのドラマとしてとらえ、分裂的な楽想を劇的に統一し、ある意味でオペラ的な音楽作りを目指していたのではないだろうか。いや、「宇宙の鳴動が聞こえる」と言ったマーラーの8番のような演奏を、「復活」の中に求めたのかもしれない。このアプローチは基本的には成功していたように思えるけど、曲の遅い楽想の部分をかなり極端に遅く歌わせていたことは、曲全体のつながりを阻害していたようにも思えた。

 独唱の緑川まりは、そつなくこなしたかのように見えるが、良く聴くと先日の「蝶々夫人」からの不調が続いているようで、声がかすれがち。声が途切れそうになるところもあって、かなり不安を感じさせた。小山由美も声量はあるんだけど、ヴィブラートの声の谷(って言うのか?)が深すぎて、ワタシ的には好みの歌唱ではなかった。合唱は、人数を拡大したわりには揃った歌唱を聴かせてくれ、最初のppからコーダに至るドラマを支えた。カーテンコールは、すさまじい盛り上がりを見せて、オーケストラが全員引き上げても拍手が鳴りやまず、鄭とオケ全員が再度ステージに呼び戻されたほど。東フィル最初の定期演奏会は、大成功を納めたと言っていいだろうと思う。

 終演後は時間も早かったのでアークヒルズ内のイタリア料理店「トラットリア・バルダルノ」に入って食事をしていたら、なんとコンサートを終えて平服に着替えた鄭明勲が入ってきて関係者と思われる人たちとパーティが始まった。鄭は終始終始、ゴキゲンでワイン・グラスを傾けていた

 さて、成功したと思われる最初の定期演奏会だが、今後への不安もある。鄭明勲は、優れた指揮者だと思うし、カリスマ性もあると思うんだけど、パフォーマンスが前面に立ちすぎるきらいがある。オーケストラの変則18型(?)への拡大は「合併」ゆえのメリットを出そうとしたものだろうから理解はできるけど、日本で最高の合唱団と評価される東京オペラシンガーズの他に、児童合唱やアマチュア合唱団の参加や、第5楽章最後の金管の起立など、音楽的にメリットがあるとは思えない視覚優先のパフォーマンスが目立ちすぎるのだ。この傾向は以前からあったので、きっと今回の東フィル定期でも何かしらのパフォーマンスはやるだろうなぁ・・・と思っていたら案の上である。まぁ、今回の場合は音楽的に目立つようなキズにはなっていないので、その限りにおいてはかまわんのだが、以前にはこのようなパフォーマンスが明らかに音楽上のデメリットになったこともある。

(注) オーケストラ名は東京フィルハーモニー交響楽団だが、法人名は「財団法人 新星東京フィルハーモニー交響楽団」である。ややこしい・・・(^_^;)。


●01/07/02 大当たり

 いやぁ、本格的に「夏」ですねぇ。ワタシ的には一番苦手な季節なだけでなく、先月から仕事的にもずーっと忙しくて、土曜日には疲労感がこれまでになく強まって、仕事から帰ったら即、泥のように眠ってしまった。おかげでずーっと更新意欲が湧かなかったのだが、今月中旬を過ぎるとなんとか一段落して仕事的にも「夏休みモード」に入れそう。

 コンサート的には、フルネの芸術劇場シリーズを聴いたのが20日だが、ブラームスの3番がいやに速くて、11日に演奏した「幻想交響曲」の遅さとは対照的。せかせかしたフレージングがブラームスのロマンティシズムを削ぎ落としてしまって、ぜ〜んぜん楽しむことのできない演奏になってしまった。途中で帰ろうと思ったほどだが、11日と20日で一貫性のないテンポ設定で聴かせるあたりはフルネの加齢と関係があるのだろうかと考えてしまった。そんなワケで、仕事の忙しさもあったのだが25日のB定期は結局行かなかった。28日のボッセ=NJPも先月の期待のコンサートの一つだったのだが、やっぱり気持ち的に余裕がないときは何を聴いてもダメなのか・・・。

 そんなワケで、先月後半を振り返ると、音楽的にはぜんぜん良いことがなかったのだが、有楽町に新規オープンしたビックカメラで買い物したら大当たり!!! 100人にひとりタダになるってCMで言ってたでしょ?アレです。おかげで7万5千円の買い物ががタダ!! いやぁ、正直に生きていれば、良いこともある