11月の「今日のひとこと」

(文中の敬称は省略しています)

今日のひとこと 頭の中に「トリスタンとイゾルデ」の旋律が渦巻いている状態で、今日はベルティーニ=都響のサントリーホール定期演奏会。地味目のプログラムにもかかわらず、ホールはなかなかの入り。ただしPブロックの大部分は空席。
 武満「弦楽のためのレクイエム」は私の理解を超える音楽なので、よくワカラン。つづくはモーツァルトのオーボエ協奏曲。ソリストのアルブレヒト・マイアーは長身で、指揮台に上ったベルティーニとほぼ同じ高さなのが愉快だったが、この人の音が素晴らしかった。マイアーはベルリン・フィルの首席奏者なので、昨日の「トリスタンとイゾルデ」でもピットに入っていたらしい(伝聞モード)のだが、細身で透明感のある音質、しかも音が硬くないので聞き疲れしないのである。オケも実に繊細なサポートを見せて、しばし耳を奪われた・・・・のだが、私を夢の世界に誘うのには充分な美しさだった(^_^;)。いやぁ、モーツァルトは良く眠れる。
 そんなワケで、後半のシベリウスの第5交響曲にも期待を持たせる前半だったんだけど、残念ながらそうはいかなかった。もともと楽想が多様で、それが錯綜するように絡み合っている音楽だけに統一感を持たせる演奏は難しいと思うんだけど、それにしても各パートの楽想がバラバラ。特に木管、金管楽器の音にシベリウスらしいニュアンスがまったく感じられず、音楽の横の線もバラバラ。終演後にはブラボーの声もかかっていたんだけど、ワタシ的にはぜんぜんダメ。拍手もそこそこに帰ってきたんだけど、なぜかこの日もシベリウスの時に断続的に発信音が聞こえたのが気になった。場所的には2階左側のような感じなんだけど、いつもあの辺から聴こえるんだね。なんとかならないのだろうか。(00/11/29)
 

今日のひとこと ウチに帰ったのが12時近くで、まだ頭の中の整理がつかないので断片的に「トリスタンとイゾルデ」レポート。まずオケは凄い。巧さで言うと日本のオケに比ではない。あの透明感、ソロの正確さ、もう脱帽である。ただしバンダのホルンは日本人的にヘタ。もしかしたらホントに日本のエキストラ?
 アバドのアプローチは、いわゆる濃密な官能性とは一線を画していて、ひとことで言うと蒸留水のようにさらさらとした音楽。室内楽的な透徹した音楽を、そのまま拡大したような感じで、アバドらしい淡白な音楽はは熱烈なワグネリアンの好みではないかもしれない。しかし、そこはワーグナーの音楽である。どんなに淡白な演奏であってもそれなりの官能性は滲み出てくる。その限りにおいては、実に完成度が高い音楽である。
 歌手もみーんな素晴らしい。、特にイゾルデを歌ったポラスキは、最高! 詳しくは明日書くけど、さすがアバド=ベルリン・フィルとつり合うだけの歌手が揃っている。
 しかーし、演出はダメ。全然ダメといってもいい。ほとんど演技らしい演技はなく、例えて言うと、演奏会形式のオペラに舞台装置をつけたような感じ・・・って言ったら言い過ぎか(^_^;)。しかしそのくらい言いたくなるほど演出は酷い。ワタシ的な感動度が低かったのも、ひとえに演出のせいである。第一幕のネオン管付きパイプででスケルトン状に作られた船はどーゆー意味? 時々ネオン管が消えたのはトラブル? 第2幕でも、トリスタンとイゾルデは愛し合っているようには見えないし、トリスタンとメロートの決闘は完全に大根役者。第3幕が一番マトモだったけど、・・・とりたてて誉めるところはなし。
 それでもイゾルデの愛と死は感動的だったなぁ。歌手やオケの感情的な表現は禁欲的なまでに抑えて、その中から湧き上がってくるトリスタンとイゾルデの愛の心髄が痛いほど伝わってくる。最後はホントに惹きこまれた。
 でも、ホントに痩せちゃったね、アバド。骨皮筋衛門状態。こんな姿であれだけの演奏が出来るなんて、あのカーテンコールを見ていたら涙が出ちゃったよ。まるで命の糸を紡いで「トリスタンとイゾルデ」を奏でているみたい。
ホントに健康には気をつけてよ。無理しないでね、マエストロ。(00/11/28)

今日のひとこと(暫定版)  ウチに帰ったのが12時近くで、まだ頭の中の整理がつかないので断片的に「トリスタンとイゾルデ」レポート。まずオケは凄い。巧さで言うと日本のオケに比ではない。あの透明感、ソロの正確さ、もう脱帽である。ただしバンダのホルンは日本人的にヘタ。もしかしたらホントに日本のエキストラ?
 アバドのアプローチは、いわゆる濃密な官能性とは一線を画していて、ひとことで言うと蒸留水のようにさらさらとした音楽。室内楽的な透徹した音楽を、そのまま拡大したような感じで、アバドらしい淡白な音楽はは熱烈なワグネリアンの好みではないかもしれない。しかし、そこはワーグナーの音楽である。どんなに淡白な演奏であってもそれなりの官能性は滲み出てくる。その限りにおいては、実に完成度が高い音楽である。
 歌手もみーんな素晴らしい。、特にイゾルデを歌ったポラスキは、最高! 詳しくは明日書くけど、さすがアバド=ベルリン・フィルとつり合うだけの歌手が揃っている。
 しかーし、演出はダメ。全然ダメといってもいい。ほとんど演技らしい演技はなく、例えて言うと、演奏会形式のオペラに舞台装置をつけたような感じ・・・って言ったら言い過ぎか(^_^;)。しかしそのくらい言いたくなるほど演出は酷い。ワタシ的な感動度が低かったのも、ひとえに演出のせいである。第一幕のネオン管付きパイプででスケルトン状に作られた船はどーゆー意味? 時々ネオン管が消えたのはトラブル? 第2幕でも、トリスタンとイゾルデは愛し合っているようには見えないし、トリスタンとメロートの決闘は完全に大根役者。第3幕が一番マトモだったけど、・・・とりたてて誉めるところはなし。
 それでもイゾルデの愛と死は感動的だったなぁ。歌手やオケの感情的な表現は禁欲的なまでに抑えて、その中から湧き上がってくるトリスタンとイゾルデの愛の心髄が痛いほど伝わってくる。最後はホントに惹きこまれた。
 でも、ホントに痩せちゃったね、アバド。骨皮筋衛門状態。こんな姿であれだけの演奏が出来るなんて、あのカーテンコールを見ていたら涙が出ちゃったよ。まるで命の糸を紡いで「トリスタンとイゾルデ」を奏でているみたい。ホントに健康には気をつけてよ。無理しないでね、マエストロ。(00/11/28)

今日のひとこと 24日は都響の定期演奏会Aシリーズ。音楽監督ベルティーニ、ソリストにギル・シャハム、秋に定番のブラームス・プログラムと3拍子揃ったためか、滅多に満員にならない東京文化会館定期にもかかわらず、5階両サイドまでほぼ満員の大盛況。
 注目のギル・シャハムはブラームスという選曲を意識した渋めの音作り。意外とテンポを揺らしたり、独特の節回しをつけたりとかで、個人的には乗り切れないままで演奏が終わってしまった。第3楽章のアグレッシブなアプローチには、さすが!と思わせるところもあったんだけど、もっとオーソドックスなアプローチの演奏を聴きたかった。オケとの噛み合わせもイマイチで、ギル・シャハムが繊細にppで奏でているところに、ぶっきらぼうな管楽器(ほるん)がぬおーっと入ってきたりとかで、曲作りの意思疎通が不足アリアリで、協奏曲の練習時間不足が露呈している。
 そんなわけで後半は期待していなかったんだけど、意外や意外、交響曲第4番はかなり良い出来の演奏だった。同曲は、アバド=BPO、小澤=VPO、シュタイン=バンベルグ響など超メジャーな組み合わせで聴いたことがあるけど、ワタシ的ブラ4のベストは、フルネ=都響の演奏である。24日のベルティーニ=都響の演奏は、フルネ=都響に肉薄する演奏内容といってもいいんじゃないだろうか。
 とにかく出だしから協奏曲とは練習量の違いを感じさせる音で、実に滋味深いブラームスの音が響いてくる。ベルティーニのアプローチの極めて正統的なもので、アンサンブルもよく整い、安心して音楽に身を浸せるのだ。これといって特徴のない音楽作りだから、うまく文章にしてあらわせないのだが、ブラームスという音楽の素材を最大限に引き出した演奏といってもイイ。オケの機能性から、ソロの出来とかに限界はあるんだけど、久しぶりに都響から納得できる演奏を聴いたって言う感じ。終演後は、ベルティーニも納得の表情で、会場もブラボーが飛び交った。
●さて、今日は、いよいよアバド=ベルリン・フィルの「トリスタンとイゾルデ」。これまでに買った最高額のチケットだけに、めっちゃ期待大。(00/11/27)

今日のひとこと 世間は冬モードが深まり、いよいよ世紀末。このHPも4年半が経過して、新世紀モードへの衣替えを考慮中。その構想も少しづつ固まりつつあるのだが、先日、ヒマがあったので数年前に書いた「こんさぁと日記」などを読み返していたら、「いやぁ〜、前は一回々々のコンサートを前は丁寧に書いていたなぁ〜」などと驚愕して、過去の自分にちょっと畏敬の念(?)を覚えてしまった。
 この手の文章を書きやすいのが、ボロクソにけなしたくなるような酷いコンサートか、めっちゃ感動的な素晴らしいコンサート。自分が思ったことをそのまま文章にすれば、それなりに読める文章になりやすいし、そーゆーコンサートは特徴もあるから、文章を書くにもとっかかりやすい。しかしこの手のコンサートに出会うことは少なく、大部分は特に感動もしなかったけど、それほど酷くもないという偏差値56〜45くらいの:コンサート。こーゆーコンサートで一番困るのが、文章の創作意欲が全く湧かないということ。私は訳のわからんレトリックを駆使して、文章をでっち上げる?ようなテクニックは持ち合わせていないので、こーゆーコンサートに出会ったら素直に「何も書かない」のが一番健康的だと思い、最近はそうしている。しかしそれでも、数年前はちゃんと文章にしていたんだなぁ。
 ま、私はこのHPで生活している訳じゃないから(アタリマエ!)、そんなに力を入れる義務も必要もないのだが、せっかくここまで育てたHPだからそれなりの愛着はある。国内初のライヴ(コンサート)系クラシック音楽のホームページとして、どのような新世紀を迎えようか。新展開をちょっとだけ期待してね。(00/11/23)

今日のひとこと チケットぴあのホームページを見ていたら、一昨日まで残っていた「トゥーランドット」のE席のチケットはさすがに売り切れになっていたけど、グルベローヴァの「椿姫」を除くと売れ残りが多く、苦戦は明らか。特に「トゥーランドット」の平日公演は惨憺たる状況で、これからMETの発売も控えていることも考え合わせると、会場をいっぱいにするのは難しい状況なんじゃないだろうか。
 この間の来日オペラに共通するのは、NHKホールで行われる公演の売れ行きの悪さである。「トゥーランドット」だって決して知名度が低いオペラじゃないし、スカラ座の「リゴレット」はヴェルディの中では一番人気のあるオペラのひとつにもかかわらず売れ行きは低迷。ウィーンの「リンダ」は演目的知名度はなかったが、主役にグルベローヴァという金看板を持ってきたにもかかわらず、最後までチケットは売れ残った。
 ワタシ的に言わせて頂ければ、海外のメジャーなオペラハウスというだけで客が入る時代は終わったと言っていいのではないか。引っ越し公演とはいえ、現地のオペラハウス(建物)までは持ってくることは出来ない。しかし、少なくとも現地のそれに少しでも近い環境を求め始めているのではないだろうか。ワタシ的にはホールに対して並々ならぬ(?)コダワリを持っているので、NHKホールみたいに音がよくないホールで開催されるウィーン国立歌劇場などの公演はホンモノの音だとは思っていない。せっかくホンモノを持ってくるのなら、ホンモノの音が味わえるホールで公演を行うのが筋というものだろう。聴き手のホンモノ志向は、どんどん高くなっているのだ。
 METの来日公演のチケットがもうすぐ発売されるけど、あそこはもともと会場がデカいので、NHKホールでも苦にしないかもしれない。NHKホール&神奈川県民ホールが会場となる、「サムソンとデリラ」の5回の公演のうち3回までも土日にするあたりは商売上手な感じだが、いくらドミンゴ参上とはいえ、あまり日本では馴染みのない演目で、他の演目より割高であるにもかかわらず平日公演も満員に出来るんだろうか? ま、私が心配することじゃないけどね(^_^;)。(00/11/22)

今日のひとこと この前、ミュージカル「夢から醒めた夢」を観るために、四季劇場に行った。ミュージカルを見たのは10年位前に「ラ・マンチャの男」に行ったのが最後だから、すっごく久しぶりである。私はミュージカルを自発的に観に行くことはなく、今回は急なお誘いを受けてストーリーも出演者もまったく知らずに行ったんだけど、それでも意外と面白かった。もちろんオペラだって、筋書きや出演者を知らなくても楽しめる場合もあるだろうけど、その可能性はミュージカルと比べればかなり低いに違いない。
 ミュージカルの場合、PAを使用するので音は良くないが、歌詞が日本語モードで作曲されているので、音楽と言葉がごく自然に入ってくるのがイイ。これが外国語のオペラの日本語上演の場合は、まず日本語として聞き取るのは難しいし、多くの国産オペラの場合も字幕スーパーが欲しくなる(こんにゃく座を除く)。これはオペラの発声法と日本語との関係なのだろうか? ずーっと前に大学の先生に、イタリア人やドイツ人はオペラの歌をきちんと聞き取っているのかどうか尋ねたことがあるけど、やっぱり現地に人もあまり聞き取れていないらしいという返事だった。やっぱりオペラはそーゆーモノだと思った方がいいのかもしれない。
 「夢から醒めた夢」は、もう初演されてから10年以上のミュージカルらしいけど、それなりの年月を経ているだけあって、よく出来ていると思う。客はやっぱり女性が8割以上といった感じだけど、内容的には子どもでも十分に楽しめる・・・というか、子ども向きのミュージカルといってもおかしくない内容なので(^_^;)、家族連れでもイイかも知れない。(00/11/21)

今日のひとこと 都響から来年度の定期演奏会継続の案内がきた。都響は一番最初に定期会員になったオケなので、なんだかんだ言っても一番愛着があるオケである。で、来年度のプログラム(まだ都響のHP未掲載)を見たんだけど・・・・、うーん、イマイチだなぁ。登場する指揮者はベルティーニ(4&11月)、フルネ(6月)、若杉(9月)、コミッショーナ(12月)、その他は、小泉和裕、高関健、朝比奈隆(5月にブル7)、ボッセ、沼尻竜典、矢崎彦太郎。新登場は2月のローレンス・フォスターと3月の金聖響。ちょっと変わり映えのない陣容かな?
 ワタシ的な趣味で言うと、フルネ以外には興味薄。曲目的にも、かなり地味目で、目玉に乏しい演奏会が多い。財政難でどのオケも超一流ソリストの登場が少なくなっているけど、都響も同じ。
 ただしチケット価格が一部変わって、東京文化会館で開催しているAシリーズの4〜5階席サイドが全部Ex席という分類になって、1回券価格は1,400円と爆安になった。これはN響の3階自由席よりも安く、東京で一番安い定期演奏会が誕生した(ただし定期会員でも割引なし)。これまで東京文化会館の4〜5階サイドは空席が多かったのだが、来シーズンからはかなり客が増えるかもしれない。
 さて「チケット掲示板」に、新国立劇場「青ひげ公の城」初日と、一般発売前の「ラインの黄金」のチケットを出しました。興味のある人は見てね!(00/11/16)

今日のひとこと 東京オペラシティで行われたヴァント=NDR響のコンサート初日。私は90年のNDR響の来日公演は聴く事が出来なかったのだが、今でも語り草になるような名演奏だったらしい。もはや日本でヴァントのタクトを見ることは出来ないだろうと思っていたら、急遽実現し、発売即売り切れになった。今日も当日券売場にキャンセル待ちの行列が50人くらいはいただろうか。
 齢88歳のヴァントの来日は日本のブルックナー・ファン待望だったけど、現地では「訪日反対」の声が挙がるなどしたのは周知のとおり。このあたりの経過は読売日響のプログラム「Orchestra」11月号に掲載されている岸浩氏の「欧米音楽会情報」に詳しいのだが、訪日は日本と日本人が大好きなヴァント氏の強い希望によるもので、好きな日本を見せたいという理由でなんと90歳!の兄も同行しているという話だ。
 そのヴァント氏、健康状態が気遣われるけど、ステージに登場する足はおぼつかず、サポートの人の腕に捕まって歩いている姿はいささか痛々しい。しかし指揮台に立ったヴァント氏は、背筋がピシッと伸びて、用意されていた椅子には一度も座ることなくタクトを振りつづけた。指揮台の上にはタクトが2本置かれていたが、譜面はなく、完全な暗譜である。視線は鋭く、タクトも明晰で、まさに巨匠の貫禄ありありだ。
 曲目はシューベルト「未完成」とブルックナー9番。私は勝手にヴァント氏の演奏を、枯淡の粋に達し、ゆったりしたテンポ、澄み切ったサウンドを想像していたのだが、実演に触れてその想像とは全く違うことを知った。その演奏からは、まるで青年のような元気のよさ、脈々と息づく生命感を感じさせる。NDR響の弦楽器は光沢や透明感は乏しいが、やや太めの渋い音に特徴がある。オケ全体としてはそれほど機能性の高さは感じないが、ヴァント氏のタクトのもと、一糸乱れぬ演奏をするあたり、呼吸はピタリだ。
 「未完成」は平凡な演奏だと眠くなるだけだが、ヴァント氏の演奏は想像よりも速いテンポで、起伏に富み、シーンによる色分けが巧みに施されており、聴いていて飽きることはない。ブルックナーも、意外とアゴーギクを使い、テンポを揺らすところがあって意外な感じがしたが、これがヴァント氏のスタイルなのだろう。デュナーミクの幅も大きく、音楽全体のスケール感も雄大。残念なことに私の席はステージ右側の真上で、チューバとティンパニーの音が直撃して、音のバランスが悪い上に、弦楽器の音も直接音が強すぎてギスギスした感じがぬぐえず、正当な評価は出来ないのだが、音楽のタテの線はぴたりと揃っていたので聴く席さえ良ければ素晴らしい演奏が堪能できたに違いない。
 そんなわけでワタシ的には感動には至らなかったのだが、終演後のカーテンコールは朝比奈以上の盛り上がり。1階席はみなスタンディング・オベーションでヴァント氏を称え、オケが引き上げたあともヴァント氏は一度ステージに呼び戻されたほどだ。
 しかし私がこの日、何よりも感動したのは聴衆のマナーのよさである。緊張感に包まれたホールの静寂さは、明らかに他のコンサートと違う雰囲気で、携帯電話やアラーム時計の音が終始聴こえなかったのは当然のこととして、オケの最後のホールトーンが消えても拍手は起こらず、ヴァント氏がタクトを指揮台においてから拍手が始まった。そして、足が悪く疲れが見えるヴァント氏に気遣って「一般参賀」も一回で止めたのは適当だったと思う。もしかしたら聴衆をこのようにリードしたのも、ヴァント氏のオーラなのかもしれないが、個人的にはこのホールに集まったリスナーに感心した。この日の演奏は録音されていたようなので、いずれCDなどで聴く事が出来るだろう。3日間のコンサートが無事に終わり、ヴァント氏が元気で帰国の途につかれるよう祈りたい。(00/11/13)

今日のひとこと 8日は「シャモニーのリンダ」2日目。最も売れ残りの多かった同演目の中でも、平日ということで最も売れ残りが多いと伝えられた公演日だったにもかかわらず、なぜか3階席も満席に近い。そのワケは・・・当日券売り場には何故か団体受付のカウンターがあり、音大生と思しき若い女性たちがチケットを引き換えている。中には「3万円得しちゃったぁ!」などと嬉しそうに話している声もチラホラ。招待券なのか学生割引なのかは知らないけど、NBSも相当にセールスに苦労したみたいだ。
 公演内容は、初日とほぼ同様。オケは初日のほうが良かったような気がするけど、オケがどうあれ、この手のベルカント・オペラは管弦楽の比重は小さいので大差はない。しかし、2回も見るほどの演目かというと、ワタシ的には否定的。声そのものを楽しむという聴き方が出来る人には良いのかも知れないけど、オペラを総合芸術として楽しもうという人には面白い演目ではないだろう。特に第一幕はめちゃくちゃ眠たい。そして・・・ホントに寝ちゃったぞ。しかし第2幕は面白い。グルベローヴァのコミカルな演技から2幕最後の狂乱の場に至るまでかなりイケてる。ところが第3幕は、また弛んでしまって、また退屈度が増してくる。いくらウィーンで初演された演目とはいえ、ドイツ・オペラの他の演目が腐るほどあるんだから、今日、蘇生させて、日本公演に持ってくる価値はあるのだろうか? ワタシ的な価値観では「メリー・ウィドウ」以上におかしな演目である。
 さて、7日にはアルブレヒト=読響の定期演奏会でマンフレット・グルリット作曲「ヴォツェック」を聴いたのだが、これはレベルの高い演奏会だった。読響の音は緊張感が高く、歌手のレベルも実に高い。タイトルロールを歌ったヘルマンは、」この役にしては立派過ぎる声だし、マリーの緑川まりも、もうすこしスレた役作りが望まれたけど、それらは子細な問題だろうと思う。
 ただし、演奏中にホールから「脱出」した人が私の周りでも数人いたし、爆睡モードの人も少なくなかったようだ。演奏会形式ではわかりにくい演目だし、字幕スーパーも小さくて見にくかったので、ヴォツェックのストーリーを知らない人にはシンドイ演奏会だったと思う。とはいえ、アルバン・ベルグに肉薄する内容をもった音楽を今日、蘇生させた意味は大きいと思う。第2次世界大戦で弾圧された作曲家の再評価を積極的に行っているアルブレヒトらしく、来年度の定期は意欲的な取り組みが増える。観客動員という点では厳しいかもしれないが、ぜひ頑張ってほしいものだ。(00/11/09)

今日のひとこと 「シャモニーのリンダ」東京初日を見て一言。この演目は、今回、ウィーン国立歌劇場が持ってきたプロダクションの中では演出もよく、歌手の調子も揃っていて、ゆえに最も完成度の高い舞台となったことは多分・・・疑いない。この演目は、グルベローヴァのために組まれたプロダクションだけに、彼女の見せ場が多い。グルベローヴァのオペラ形式のリサイタルみたいなのだが(^_^;)、とにかく彼女は今日も絶好調。アクロバット的な超絶技巧を駆使しているにもかかわらず、ぜんぜん危うさを感じさせないのはさすが! サヴァティーニも、幕が進むごとに調子を上げて、グルベローヴァの相手役を立派に務めた。「メリー・ウィドウ」では不調だったハンプソンも、存在感ありありだったし、シモーネも3枚目的な演技力だけではなく、実に巧い歌を聴かせてくれた。とにかく歌手に関してはほとんど不満らしい不満はない公演で、ベルカント・オペラの屋台骨を立派に支えていた。オケに関しては、NHKホールといいこともあり、芳醇な響きには程遠かったが、まぁ無難な出来栄え。舞台装置も簡素ながら、スピーディな舞台転換を実現して、登場人物の演技という点でも満足できる水準。
 にもかかわらず、ワタシ的にはぜんぜん楽しめなかったのは何故か? やっぱりこの台本も音楽もぜんぜん面白くないんだなぁ。この手のベルカント的なイタ・オペで、面白い台本を期待するほうが無理なんだろうけど、やっぱり好きじゃない。音楽的にも・・・ううむ(^_^;)、眠いのひとこと。いちおう事前にCDで聴いていったんだけどなぁ。
 で、この日の友人との会話の中で出た暴言その壱。グルベローヴァの声を聴くと、「ピンクの電話」を思い出さないですか? 暴言その弐。NHKホールだったらウィーン国立歌劇場管でも、東京フィルでも大差ないよなぁ〜。今、思い返してみても、なかなか勇気ある暴言だと思ふ。(00/11/06)

今日のひとこと 今月の更新予定をちょっと。ウィーン国立歌劇場「シャモニーのリンダ」は5日の初日と8日の2回聴く予定。「メリー・ウィドウ」は前回よりももうちょと見やすい席で10日の公演を。さらにオペラでは、アルブレヒト=読響の「ヴォツェック」と、アバド(ホントに来るのか?)=ベルリン・フィルの「トリスタンとイゾルデ」にも行く。もちろん新国立劇場の「青ひげ公の城も忘れちゃいけない(29日)。バレエも同じく新国立劇場の「ラ・バヤデール」が21日の予定。12日にはブルックナー・ファン大注目のヴァント(これもホントに来るのか?)=ハンブルグ北ドイツ放送響の初日をレポートする。その他はN響オーチャード定期(13日)、都響定期(24&28日)など。
 なんだかんだで、やっぱり月に10回以上はコンサート(オペラ・バレエ)に行っているんだが、現在のようにトップページの更新だけなら即日or翌日更新も可能なので、当分はこのペースいく予定。(00/11/04)