東京二期会オペラ劇場
ブリテン「真夏の夜の夢」

(文中の敬称は省略しています)

●2000/08/04 「真夏の夜の夢」というと、言うまでもなくシェイクスピアの名作である。シェイクスピアの戯曲は、さまざまなオペラやバレエの素材に使われているけど、「真夏の夜の夢」だとメンデルスゾーンの劇音楽が有名だろう。メンデルスゾーンの劇音楽は、喜劇的で胸がわくわくするような躍動感溢れる音楽がとても楽しい曲だけど、このブリテンの「真夏の夜の夢」をそーゆーイメージを持って聴きにいくと、きっと面食らうに違いない。もちろん、私もその一人であった。喜劇的要素もなくはないけど、基本的にはメルヘンチックで、水彩画的な色彩感を携えながら淡々と音楽が進んでいく感じ。ワタシ的には、これといった聴きどころを見つけることも出来ず、音楽的には退屈してしまったのだが、この機会を逃したらきっと一生巡り合えない珍しい作品なので、我慢して聴きつづけたというのが正直なところである。もしかして何回か聴いたら評価が変わるのかもしれないけど、現時点では音楽的には面白いとは思えない。

 物語はとっても面白い作品なんだけど、淡々としたメルヘンチックな音楽がベースにあると、ストーリー的にもシリアスにならざるを得ない。加藤直の演出は、シンプルな舞台装置に演劇的要素をたっぷりと盛り込んだものだったけど、・・・・うーん、物語の起伏がぜ〜んぜん感じられないんだなぁ。どこに物語の山があって、谷があるのか、さっぱりわからない。アテネの職人達の劇中劇も冗長。これは演出上の問題というよりも、音楽的に原因があるような気がするんだけど、「真夏の夜の夢」というストーリーの起伏が全然伝わってこないのだ。役者の英語も、ううむ・・・・・英語っぽく聴こえてこないんだなぁ。英語は比較的日本人にもなじみのある言語だけに、シビアに判定してしまうんだけど、急遽、日本語上演から言語上演に変えてしまったツケなのだろうか。

 歌手はみ〜んな立派だったし、若杉弘=東フィル室内管も、淡い色彩感をきれいに表現していたようだし、少なくとも上演サイドを見る限り決定的に悪い点は見当たらない。しかし3時間弱の上演時間がそれ以上に感じてしまった原因は、作品そのものに内在しているのではないだろうか。私の隣の席の人はホントに「真夏の夜の夢」の世界に突入していたし、カーテンコールもちょっとお義理的だった。頑張ったから「努力賞」といった感じのカーテンコール。しょうがないからウチに帰って、DVDで「恋に落ちたシェイクスピア」を見たんだけど、この映画は何回見ても面白い。こっちの映画はオススメ。