オッコ・カム=読売日本交響楽団

(文中の敬称は省略しています)

●2000/06/23 このところ好調をキープしている読売日響、6月の定期演奏会はフィンランドの指揮者オッコ・カムの登場である。彼のタクトは都響の定期演奏会で聞いたことがあるけど、ホントに久しぶり。会場はほとんど満員だったけど、ソリストのオーギュスタン・デュメイが突然のキャンセルで渡辺玲子に変更となったため、会場のあちこちで「エーッ!」という声があがっていた。

 渡辺玲子のヴァイオリンは、久しぶりに聴いた。かつて竹澤恭子、漆原朝子とともに「ヴァイオリン三人娘」と呼ばれていた(?)頃と比較すると、とても良いヴァイオリニストに成長しているような気がする。この日はサントリーホールの最後列で聴いたんだけど、音量的な不足感は全く感じさせず、適度な太さがある堂々たるヴァイオリンで、音色的にも密度感と光沢感があって美しい。読響の分厚い弦楽器群にも埋もれることなく、ワタシ的にも好みの音色である。チャイコフスキーの浪花節的な歌いまわしにも、過度な感情移入することなく、冷静なアプローチも好ましい。しかし、急な代役だったせいか、ところどころで音楽の流れが阻害されるところがあったのが残念。これはオケとの齟齬なのか、彼女の歌いまわしの癖なのかは不明だが、曲が終わったら会場から大きな拍手を浴びていたのでオケ側も安心しただろう。「デュメイじゃなくても良かったね」という声もチラホラ。

 休憩後のシベリウスは、前半以上の素晴らしい演奏になった。読響の弦楽器の音は、日本のオケの中では珍しく重量感があって太めの音が出るんだけど、この読響の音は、ふつーの音楽ファンが頭の中に思い描くシベリウス像とは、あまり噛み合わないのではないだろうか。しかし、この日のカム=読響のシベリウスは、そんなイメージの相違を吹き飛ばしてしまうほどスケールが大きく、ドラマ性に満ちた演奏に仕上がった。第3楽章スケルッツォに美しい牧歌的主題が登場し、第4楽章のフィナーレに至るパノラマ的な広がり、スケールの大きさは、他の指揮者のシベ2では味わったことのないものだった。ただひとつ残念だったのが、他のパートと比較してホルンの音がへなちょこ過ぎたこと。でも、弦楽器群のボウイングなんかやる気に満ちていたし、現在の読響は東京のオケの中で最も好調なのではないかと感じさせるに充分な内容だったと思う。読売新聞や巨人、ナベツネはキライでも、読響は聴いておいて損はないと思うぞ。