五嶋みどり&ロバート・マクドナルド

(文中の敬称は省略しています)

●2000/06/04 先日、ある同業者(?)の人と話をしていて思ったことがある。私は視察を目的に伺ったんだけど、その人の話し方、目線の配り方、話の内容・順序・・・・などがすごく印象的だった。その人の説明は説得力に溢れ、確信に満ちていて揺らぎがない。私のつたない質問に対しても、その意味を汲み取って的確な答えを導き出す。その人がそのポジションで先進的な仕事の屋台骨を支えているのであろうことは、容易に想像が出来た。時にこのような人と出会うと、自分のロールモデルに出会ったような感じになる。私ももっともっと勉強しないと!

 さて、音楽においても共通することが多い。この日の横浜みなとみらいホールは、ほとんど満員。いまや彼女は世界のトップレベルの人気を誇るヴァイオリニストだけど、五嶋みどりのヴァイオリンを聴くと、彼女の音は確信に満ちてていて揺らぎがない。かつての少女のときのように、「年令」と奏でられる「音楽」とのギャップ、・・・そこから生じる驚きはあまり感じなくなったけど、彼女の音楽は説得力に満ち溢れている。選曲は、バッハから20世紀の前衛的作品までバラエティに富んでいて、最初のバッハのヴァイオリン・ソナタ第3番は、かなりアグレッシブなアプローチで、いわゆるバッハ的な古典的な構造よりも、ところどころに現れるロマンティックな表情が印象的な演奏。プーランクのソナタは、演奏前に作曲の経緯を五嶋みどりが解説するというオマケ付き。あまりバランスがよい作品ではないような気がするけど、ストーリー性のある音楽はなかなか面白い。休憩後のウェーベルンのヴァイオリンとピアノのための5つの小品は2度演奏されてもワタシ的にはよくワカラン曲だったが、メインのベートーヴェン:ソナタ第9番「クロイツェル・ソナタ」もアグレッシブ。彼女の演奏しているスタイルは、何かにとりつかれているような集中力が特徴なんだけど、彼女にかかると古典的なベートーヴェンから、シャープな現代的な音が聴こえてくる。

 残念ながら座った席がステージ横で、間接音しか聴こえてこないため、音色的にはイマイチ・・・つーか、イマニ、イマサンくらいだったので、感動的なコンサートだったと言えないのが残念なんだけど、五嶋みどりの音楽が以前と変わらず、テクニック的にも素晴らしいものであることは確認できた。アンコールは「美しい夕暮れ」と「踊る人形」の2曲。終演後にアナウンサーがステージに登場して、休憩時間に集めたQ&Aに五嶋みどりとロバート・マクドナルドが答えるというコーナーが始まった。このようなファン・サービスはUSA的な発想だし、MIDORI教育財団を通じて子供向けのレクチャーコンサートを数多く行っている五嶋みどりらしい配慮でもある。終演後に、こーゆーコーナーがあるっていうのは初めてだけど、結構新鮮でいいかも。