新国立劇場
R・シュトラウス「サロメ」

(文中の敬称は省略しています)

●2000/04/13(速報版) この日はやや空席が目立った新国立劇場。やはり新装開店のご祝儀が去って、低水準のオペラ公演が続いていることがたたっている。新聞でもオペラの有料入場率が下がって、上演水準が上がっているバレエの有料入場率が上がっていることが伝えられたが、カネを払って聴きにきている人は実に正直だ。しかしこの日の「サロメ」は、新国立劇場がオープンして以来、もっとも見ごたえのある舞台に仕上がったと思う。

 まず故エヴァーディングの演出が舞台の端役にまで見事に徹底されていて、オーソドックスな舞台を引き締めていたことが特筆される。亡き演出家に代わって彼の筆頭アシスタントだったヘルムート・ヘーベルガーが実際の指導をしたというが、その実力は舞台の公演水準に見事に現れていた。つづいて、管弦楽も素晴らしかった。正直言って新星日響がピットの入るという事で期待はしていなかったんだけど、この難しいR・シュトラウスの世界を、ここまで表現できるとは思わなかった。先日のバレエ「ドン・キホーテ」の時も悪くはなかったんだけど、この日の新星日響は正確に演奏できているという水準を越えて、グロテスクで官能的な「サロメ」の世界を新国立劇場に再現した。R。シュトラウスを得意とする若杉のタクトも見事で、音楽のメルクマールへの持っていき方なども共感が持てる。

 歌手では緑川まりが熱演。声は最後まで衰えなかったのはもちろん、七つのヴェールの踊りも(もちろん限界はあるけれど・・・)それなりの振り付けをきちんと踊っていたし、倒錯した異常な官能的な世界を表現できていたと思う。その他の歌手陣も、おおむね満足できる出来栄え。この「サロメ」は、「沈黙」以上に満足できる公演水準だった。