オーレン=東響の「巨人」

(文中の敬称は省略しています)

●2000/03/31 東響は他のオケに比べて、定期会員券も1回券も値段が高い傾向にあるので、すでにいくつものオケの会員に入っている私にとっては、足が遠のいてしまうオケである。意欲的なプログラミングで注目の現代音楽の初演なども聴きに行きたいんだけど、すでに他のスケジュールが入っていたり、値段がううむ・・・だったりして、新国立劇場のピット以外ではほとんど聴くことはない。しかし、なぜか(?)今回は招待券が手に入ってサントリーホールの定期演奏会を聴きに行った。今回の定期のテーマは「ユダヤ人音楽家の真髄」。指揮者のオーレンは、ユダヤ教のものと思しきちっちゃな帽子?をかぶって登場した。

 オーレンはご存知のとおり、体が大きい上に、指揮台の上で飛んだり跳ねたりパフォーマンスが大きい指揮者である。足音がめちゃんこうるさいところは何とかしてほしいのだが、CMに出ている日本人指揮者Sのようにタクトが空回りしないあたりは好感が持てる。指揮者がこのようなパフォーマンスを見せると音楽も派手そうになりそうだけど、実際に流れてくるマーラー「巨人」は意外なほど正統的な表現だ。個人的にはもう少しダイナミックレンジを大きくとった演奏が好みなんだけど、第一楽章の朝霧のような出だしは、音が大きすぎるし、表現の荒さが目立ったためか、ffの表現が生きてこない。また肝心なところでホルンの音程がおかしくなったり、ワタシ的にはいまひとつ音楽に乗り切れなかったのだが、第4楽章のホルンをスタンドアップさせてコーダに持っていくところはサスガ!「ユダヤ人音楽家の真髄」と言ったところ。ただし名演奏が多い「巨人」の中では、凡庸な感じは否めない。

 この日は招待券ということもあって、普段は座ることのない1階真ん中の席。チケットのマジックで消されたところを見ると8,000円のS席なんだけど、ハッキリ言って音は良くない。音が頭の上をスースー抜けていくようで、弦楽器の音が届かないもどかしさを感じる。特に低弦が薄くて、管楽器の音はダイレクトに届くので、音の重心が明らかに高くなってしまう。こーゆー席でオケの力量云々言っても、フェアにはならないだろう。なお前半のメン・コンに登場したコー・ガブリエル・カメダは、テクニックのしっかりしたビロードのような音色が美しいヴァイオリニスト。しかし音色の変化に乏しく、表現が平板なのが残念だった。