小澤征爾=新日本フィル

(文中の敬称は省略しています)

●1999/12/21 ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任した小澤征爾が、ウィーンに縁の深いモーツァルトとベートーヴェンに取り組んだプログラム。彼は来年から「小澤征爾音楽塾」と称して、モーツァルトのダ・ポンテ三部作のオペラに取り組むけど、小澤もたぶんにウィーンに行くことを意識しているのだろう。人気指揮者の登場ということもあって、普段は空席が目立つトリフォニーホールも、概ね満員となった。

 モーツァルトの協奏曲は、いずれもNJP首席奏者がソリストとなった。管弦楽はいずれの曲もキレイにまとめられて、特に清涼感のある弦楽器が光った。モーツァルトに求められる各パートの分離感あって、結構、良い演奏になりそうな予感を感じさせたんだけど・・・・どうにもそれ以上の内容が乏しい。オーボエ協奏曲のほうは、オーボエの線が細くてメリハリが乏しかったし、管弦楽も抑揚に欠けてしまったのが残念。ホルン協奏曲は、ソリストの限界のほうが目立ってしまった。もともとホルンは日本人には難しい楽器だといわれているけど、キレの悪さ、低音の安定度に問題が目立ってしまって、安心して聞ける演奏にはならなかった。いずれにしても、モーツァルトをきちんと聴かせる演奏に仕上げるのは難しいと、改めて感じさせられた。

 休憩後は小澤が得意とするベートーヴェンの7番。かなり気合が入っていそうな出だしだったけど、全体的には不満な演奏に終わってしまった。その原因としてまず、音のバランスが悪い。これは私の座席に原因があるのかもしれないけど、音楽のの内声部を支えるヴィオラやチェロがほとんど聞こえず、やたらと芯のないヴァイオリンの浮ついた音だけが強調される。ベートーヴェンといえば重心がどっしりしていて骨格がガッシリしている演奏が求められがちだけど、この日の演奏は音楽の重心が高くて安定度に欠ける音楽となってしまった。音もキレイじゃないし、第4楽章ではやたらと推進力だけ強調されたけど、音楽的には空回り! カーテンコールではやたらと大きい拍手を集めていたけど、ムムゥ・・・これは頂けない演奏と言わざるを得ない。前半のモーツァルトを聞く限りにおいてはキレイな弦楽器だったんだけど、いざベートーヴェンのような曲になるとNJPの弱点である弦楽器(特に低弦)の重量感の乏しさが露呈してしまう。小澤=NJPのベートーヴェンの7番に関しては、以前に聴いたときのほうが良かったように思う。