インバル=都響の「ワルキューレ」第2幕

(文中の敬称は省略しています)

●1999/10/19 この秋の都響定期の目玉公演のひとつがコレ。・・・なんだけど、客席には空席が目立つ。Pブロック後方は多分販売しなかったんだろうけど、それを割り引いても客の入りは8割強といったところ。指揮者がインバルで、超強力なソリストが登場するにもかかわらずこの入りというのは、やっぱり第2幕だからなんだろうと思う。たしかに「ワルキューレ」の中では一番聴きどころが少ない幕であることは確かなのだが・・・。

ブリュンヒルデ ガブリエレ・シュナウト
ジークリンデ 緑川まり
フリッカ 寺谷千枝子
ジークムント 田中誠
ヴォータン アルフレッド・ムフ
フンディング 戸山俊樹

 今日の定期は、何と言ってもシュナウトとムフの迫力に圧倒された演奏会。オペラと違って、オケと歌手が同じステージに乗っているのに、シュナウトとムフの声はオケの音を突き破って聴こえてくる。ワーグナー歌手として一番の条件である強靭な声質と声量は、もう素晴らしいのひとこと。ジークリンデの緑川まりも良かったけど、シュナウトと比較してしまうとやっぱり分が悪い。スケール感がひとまわり以上違って聴こえてしまうのだ。この二人の声を聴きに行っただけでも、この演奏会に行った価値がある。

 逆に問題だったのが、寺谷千枝子と田中誠。フリッカはヴォータンとの「夫婦ケンカ」では声量と迫力に不足して、物語的な説得力に欠けてしまう。このシーンではヴォータンを圧倒しなくちゃ、ダメなんだよねー。田中誠もヘルデン・テノールという感じの声じゃなくて、出始めのシーンではおかしなビブラートがかかっていて気持ち悪い。ジークムントは「英雄」なんだから、もうちょっと剛直な声じゃないと共感がもてない。

 オーケストラは、インバルが振った演奏会の中では平均的水準。やっぱり金管の音がへなへなしていたり、アインザッツがイマイチ揃わなかったり、前半は弦楽器のテンションも低かったり・・・といった問題点もあったけど、全体的に見ればレベルの高い演奏。インバルが振るというと、もっと高いレベルを要求してしまうけど、終演後のカーテンコールはめちゃんこ盛り上がった。24日の第3幕は好調なシュナウト、ムフ、緑川まりの声が堪能できるだけに、第2幕以上に楽しみ!