カルミナ・カルテット

(文中の敬称は省略しています)

●1999/10/12 昨年に引き続いてカザルスホールに登場したカルミナ・カルテット日本公演の初日。今回は「四つの世紀末」というテーマで選曲され、今日の演奏会は17世紀と19世紀末の作品が演奏された。

 今年のカルミナも、研ぎ澄まされた鋭角的な音楽を携えてステージに登場した。まるで鋭利な刃物で楽譜から切り取ったような音楽が、カルテットから奏でられる。作曲家が誰であるとか、その曲の背景とか、民族性や国家などという概念の一切を排除して、楽譜の中にある音符だけから音楽を構成しようとするのがカルミナの姿勢であるように思える。この姿勢が時には行き過ぎなんじゃないかと思えるときもあるけど、歴史にまみれた垢を削ぎ落として新たなロマンティシズムが生み出されることがある。ドヴォルザークのカルテットがまさにそうで、第1〜3楽章ではドヴォルザークの特徴である民謡性が排除されて、むしろ世紀末的な雰囲気さえ漂う。これが今回の来日公演のテーマ「4つの世紀末」の所以なのかぁ・・・と思った次第。

 後半のブラームスも贅肉が削ぎ落とされた演奏だが、やっぱりブラームスらしさは残る。しかし一般的なブラームス像よりはかなり怜悧で透明感のある演奏である。マイヤーのクラリネットも、カルミナの弦楽器に似合って寒色系の音だ。淡々とした演奏に聴こえるところもあったけど、一切の予断が排除されて、これこそブラームスのエッセンス!と思わせる部分も多かった。きっと好みは分かれる演奏だろうと思うけど、誰が聞いても新しいブラームス像を感じるに違いない。

 アンコールのモーツァルトのクラリネット五重奏曲第2楽章は天国的な美しさ! さらにウェーバーのCl五重奏曲第3楽章も、実に楽しい演奏だった。このように民族性を排し、機能性を優先させる姿勢は、現代のカルテットの傾向かもしれないけど、カルミナは間違いなくその最先端にいるカルテットだろうと思う。明日の演奏会にはいけないのが残念だけど、また何れ聴く機会があることを願わずにいられない。