サイトウ・キネン・フェスティバル松本
ふれあいコンサート&ジョセ・ヴァン・ダム

(文中の敬称は省略しています)

●1999/09/05 オペラ公演のページ作成で疲れてしまったので、この公演の感想は簡潔に(^_^;)。サイトウ・キネンは、どちらかというとオケとかオペラが中心だけど、参加メンバーによる室内楽演奏やリサイタルも行われる。その主会場となるのが、松本から大糸線に乗って2駅目の「島内」下車徒歩2分くらいのところにある「ザ・ハーモニーホール」である。島内公園の中にあって雰囲気は抜群だけど、周りに食事をする場所が探した限りにおいては皆無(?)であった。車で来た人の比率が高かったみたいなのだが、電車で行く人は駅前のコンビニやスーパーで弁当を買うしかないので要注意である。

 3時からのコンサートは、室内楽アンサンブルである。ホフマイスターは聞き慣れない名前だけど、18世紀のウィーンで活躍した作曲家で、とても聴きやすい音楽だ。もともと第一ヴァイオリンで弾くパートをコントラバスで受け持った曲で、なかなか面白い。プロコフィエフもはじめて聴いた曲だったけど、どちらもとても楽しめる演奏だった。なによりも急造のアンサンブルなのに、緻密で整った演奏を聴かせたのが驚きである。先日の草津で聴いた室内楽アンサンブルと比較すると、ネームバリューでは草津の方が上かもしれないけど、内容的にはSKFの方が優れているのではないか。各奏者の均質性、求心力、アンサンブルとしての緻密さなど、私が聴いた範囲でに限って言えば、演奏の完成度はSKFの方が練り込まれている。もっとも草津はアカデミーの方が中心で、若手演奏家を指導する方に時間をとられてしまい、演奏会向けのアンサンブルを造りあげる時間が乏しいのかもしれない。したがってこの演奏だけを聴いて出演者や音楽祭の優劣を計るべきものではないのだろうけど、リスナーとしてどちらを聴きたいかと問われれば、SKFを選びたいというのが正直なところだ。

 後半はジュリアードSQを50年にわたって率いてきたロバート・マンが1stVnをつとめるのが注目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲。これは抱いていた心配がそのまま的中してしまった。と、いうのはロバート・マンの音色で、この人は昔からこーゆー音色だったんだろうか。音にはそれなりの光沢は伴っているんだけど、ベチャっと潰れた感じで音に膨らみがない。そのせいだろうか、ピッチは合っているみたいなんだけど、音がうわずって聞こえてしまうのである。音楽の構成力だけ見たら申し分ない演奏なんだけど、うーん・・・音色の不一致だけが気になって、乗り切れない演奏になってしまった。

 午後7時からはジョセ・ヴァン・ダムのバリトン・リサイタル。リートは普段、全然聴かない人なので他の歌手と比較してどうのこうの言えないけど、ひとことで言えるのは「知性的」な歌唱であるということ。とにかく安定していて、過大な表現を感じさせない。何も足さない、何も引かない、といった表現姿勢を感じるのである。終演後に電車の中で聞いた話によると「詩人の恋」は所々でキーを下げて歌っていたらしいけれど、私ははじめて聴く曲なのでさっぱり分からなかった(^_^;)。

 メイン・プログラムは8時半には終わってしまったので、お約束のアンコールは4曲。3曲目のロッシーニのオペラ・アリアは、爆発的な拍手を浴びていたけど、この人はホントに表現力のある歌手だと思う。願わくばリートじゃなくて、聴きなれたオペラ・アリアとかを聴きたかったけど、それはまた来日したときにお願いしたい。