第20回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル
草津音楽の森国際コンサートホール

(文中の敬称は省略しています)

草津音楽の森国際コンサートホール

●1999/08/23 このフェスティバルの主会場となるのが「草津音楽の森国際コンサートホール」である。文字通り、建物は森の中にあって、広々とした芝生に寝ころぶもよし、周辺を散策するもよし、リゾート地のコンサートホールとしては申し分ない環境にある。ただし交通の便は・・・・マイカーで行くんだったら駐車場完備なので全く問題はないんだろうけど、そうじゃないとなると・・・。私が宿泊したホテル・ヴィレッジからは、開演30分前に送迎バスが出発し、コンサートが終わるとバスが迎えにきているので、まったく不便はなかったけど、もしこの送迎がなかったらかなりめんどいのではないだろうか。私の場合は送迎バスの時間に拘束されてしまったので、周辺を散策する時間が全くなかったのがちょっと残念だったけど、周辺に食事をするスペースは見あたらない様子。ホール内にバーカウンターがあってドリンクの注文は出来るけど、「ホールの近所で食事をしよう」と思っても、ちょっと難しいかもしれない。ただしこの音楽祭に限って言うと、コンサートの開演時間は午後4時なので、食事はコンサートが終わってからホテルで・・・というのが丁度良い。「ホテル・ヴィレッジ」だと、午後7時半からのディナーをチョイスするのがベスト。

【上】ステージ後方はガラスとなっていて、
森や晴れていれば遠くの山々が一望できる
【下】座席配置図

 8年前に完成したコンサートホールは写真の通りで、森の中のホールに相応しいロッジ風の外観。(このホールが完成する以前は、近くにある天狗山スキー場のレストランを改造したホールを利用していたとのことである) クラシック音楽専用の608席の室内楽ホールは、東京文化会館大ホールを縮小したような六角形の座席配置。ステージ後方の壁はガラスになっていて、後方の森や、晴れた日なら遠くの山々まで客席から一望できる。池袋の東京芸術劇場大ホールも似たような機能を持っているけれど無機的な風景しか見ることが出来ないのに対して、周辺の自然環境を有効に生かした草津とは、月とスッポンの差である。(なお、この窓は開演と同時にカーテンが降りてきて、閉鎖される) とは言っても、ホールの命は音響である。環境がいくら良くても、音響が悪いホールでは評価することは出来ない。

 私が座った座席は、23日が10列目ど真ん中、24日は13列目やや左側だったんだけど、視覚的には前後の座席の高低差が充分にあって問題はなし。見やすいのは13列目以降の高低差が大きくなるのでオススメ。さらに、このホールも座席は後ろの方が音がよさそう。きちんとクラシック音楽向けに音響設計されたホールであることは間違いない。ただし東京のカザルスホールや紀尾井ホールと比較すると、どうしても物足りなさを感じてしまう。

 室内楽ホールとしては充分な残響時間が確保されているけど、弦楽器の演奏には(中高音の?)残響の豊かさに欠けるのか、華やかさを感じない。ステージ上の楽器の定位がイマイチで、どの方向に楽器があるのは聴覚上でわかりにくい。音響の専門家ではないのでなんとも言えないんだけど、もしかしたら「樽型」のホールの特徴的な音響なのかもしれない。音響的には、東京の室内楽ホールの方にアドバンテージがありそう。と書いてしまうと印象悪げかもしれないけど、トータルで考えれば決して悪いホールではないと思う。もしかしたら座る席によって、また印象が変わるかもしれない。【次号につづく】

※ 写真は、Nikon COOLPIX900で撮影したものです。