第20回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル
草津よいとこ〜♪

(文中の敬称は省略しています)

ご存じ、「湯畑」!

●1999/08/23 この音楽祭が目的で草津に行ったワケではないんだけど、日程的にちょうど音楽祭の日程と重なっていることが解って、「こりゃ丁度いい」という感じで、温泉のついでに音楽祭を聴いてきた。音楽祭というと、現在ではサイトウキネンや札幌のPMF、倉敷や霧島などで夏期の音楽祭が行われるようになったけど、日本で一番最初の夏期音楽祭は、この草津らしく、今年で20回目を迎える。音楽監督は、前新国立劇場副理事長の遠山一行氏が勤め、世界的な名演奏家が若手音楽家を指導するアカデミーを行うのと平行して、連日のようにコンサートを行う。主はあくまでも若手音楽家を育成するアカデミーの方で、コンサートは副産物という位置づけ。そのせいかチケットの値段はほとんどのコンサートが指定席4,000円、自由席3,500円と安価。これを600人収容の音楽専用ホールで聴けるのだから、音楽ファンの夏のリゾート地としては好適と言って良いんじゃないだろうか。

草津白根山の湿原の中心にある池、
 下は火口にできた白い湖

 草津というと、「草津良いとこ、一度はおいで〜♪」で有名な日本有数の温泉地。温泉地というと湯気もうもうの蒸し暑さを連想してしまうんだけど、この草津の夏は涼しい。標高千メートルを超えているので、気温はもちろん湿度も低くて、東京とは比較にならない過ごしやすさだ。「原宿」化してしまった軽井沢などと比べると、ずーっと落ち着いたたたずまいなので、避暑地としては草津の方が断然好ましい。温泉宿はいくつもあるんだけど、私が泊まったのは「ホテル・ヴィレッジ」というところ。音楽祭のチラシやプログラムでも、一番目立つところに広告を掲載しているし、この音楽祭の実行委員長はこのホテルの相談役なのである。たぶん、このホテルは音楽祭の中心的な役割を担っているんだろうと思うけど、私が見かけた限りではウェルナー・ヒンク(ウィーン・フィルのコンマス)、カール・ライスター(ベルリン・フィルの元主席Cl奏者)もこのホテルに宿泊していた様子。とくにライスターは私と同じフロアーの部屋で、エレベーターで2回も同乗してしまった。ドイツ語で「やぁ、ライスター君、久しぶりだねぇ」と話しかけたら、ライスターは「あ、いつぞや教えていただいたホラの吹き方と、二枚舌の使い方はとても役にたっております」ということである(ウソ!)。もしかしたら、他の奏者もこのホテルだったのかもしれない。さらに夜9時になると、このホテルの中でアカデミーに参加している生徒による「草津音楽アカデミー・スチューデントコンサート」が開かれる。毎晩5人の生徒が代わるがわる登場して、アカデミーの成果を披露するのだが、音大生や高校生などに混じって、百武由紀(都響の元首席ヴィオラ奏者)もスチューデントとして演奏したのには驚いた。プロとして一定の地位を築き上げている人が、いくら向上心があったとしてもなかなかできることではないと思う。

 反面、グルメ指向の強い人や、観光を重視している人からすると、この草津はちょっと物足りなさを感じるんじゃないだろうか。ホテルのディナーは、懐石やしゃぶしゃぶ、イタリアン、フレンチ、中華などからチョイスできて、味も一定以上の水準はキープしているんだけど、インパクトのある地元の名産品らしいものを見つけることはできなかった。地元の酒蔵もほとんどないので日本酒通には物足りないかもしれないけど、地ビールの「草津ビール」を、あちこちの飲食店で飲むことができる。アルコール分は4%と普通だが、麦の香りと味が濃厚でどっしりとした味わいの本格的ビールだ。このビールの味に負けないつまみを選ぶのは大変そう。小瓶が600円(ホテルでの小売価格)と値段も「本格的」?だけど、ビールが好きな人は一度試す価値があると思う。

 観光地で行ったのは白根山だけ。標高2千メートルを活火山で、バスが山頂付近に着くと、草津町内よりもさらに涼しい。写真の通り天気もすごく良かったので、とても良い眺望を楽しむことができた。まぁ、観光地としてはインパクトに欠ける気はするし、音楽祭のコンサートもサイトウキネンなどと比較すると遙かに地味だし、音楽それ自体を目的にはしにくい。でも、トータルバランスで考えれば、草津はじっくり腰を落ち着けての湯治や避暑には打ってつけの場所だろうと思う。コンサートについては、次回の更新で!