ブロムシュテット=ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

(文中の敬称は省略しています)

●1999/05/12 昨日に引き続きブロムシュテット=ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で、今日はマーラーの「巨人」をメインとするプログラムである。座席も昨日と全く同じ座席番号で、Pブロックの6列目。音の良さではあまり期待が出来ない席だけど、オケの動きがよーく解るので、割り切ってみれば結構楽しめる座席ではある。もっとも音質重視の私にとってはあまり好きな席ではないのだが・・・、まぁ、値段を考えて割り切るっきゃない。

 今日のコンマスは昨日とは違う人で、私の記憶に間違いなければたぶんカール・ズスケ。それが理由かどうかわからないけど、弦楽器の鳴りが昨日とは大きく違う。柔らかく膨らみのある音色という基本は変わらないのだけど、音楽の縦の線をはじめとしてアンサンブルの精度は大きく向上しているように思える。柔らかい管楽器の音色も実に魅力的で、どの楽器も出しゃばることなく、オーケストラ全体が溶け込むようなアンサンブルがホールを満たす。ベートーヴェンのような古典的でシンプルな曲を演奏すると、そのオーケストラの基本的な性能がわかりやすいんだけど、ゲヴァントハウス管弦楽団の知名度に負けないパフォーマンスを持っている。ブロムシュテットタクトが醸し出す音楽の流れはとても自然で、作為的なものは全く感じない。これは後半のマーラーに期待を持たせる演奏となった。

 「巨人」も、実演ではなかなか聴くことの出来ない水準の名演奏となった。ブロムシュテットのアプローチは、ダイナミックレンジの幅も必要以上に大きくとることもなく、テンポも中庸。マーラー的な死生観やグロテスクさは後退し、どこかのどかな雰囲気が漂っているんだけど、音楽的な特徴を書こうと思っても、なかなか思い浮かばないくらいなのだ。でも、ブロムシュテットは、このオーケストラの美点を余すところなく引き出しているんじゃないだろうか。メチャクチャ巧いというわけではないし、派手なところは皆無に等しい。だけど、柔らかく暖かみのある音色にブロムシュテットのタクトが加わって、飽きのこない音楽を創り出す。最後のコーダに至るまで緊張感の持続した良い演奏に仕上がって、久しぶりに聴いた感動的な「巨人」。熱烈な拍手に応えて第2楽章をアンコール。ゲヴァントハウス管弦楽団は、今も健在であることを証明した来日公演になったんじゃないだろうか。