ブロムシュテット=ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

(文中の敬称は省略しています)

●1999/05/11 旧東ドイツの名門オーケストラ、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が来日し、(都民劇場をのぞけば)東京では2回のコンサートを行う。ゲヴァントハウス管というと、10年くらい前にサントリーホールでベートーヴェン・チクルスをやったときに聴いた以来かもしれない。すんごい久しぶり。

 ところで・・・このオーケストラのイメージとして、どうしてもクルト・マズアの顔を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか? 頑固な典型的なドイツの「マイスター」という容貌は、ゲヴァントハウス管の顔としてピッタシだと思うのだが、マズアは96年にゲヴァントハウスからは去って、98年から新「カペルマイスター」としてヘルベルト・ブロムシュテットが就任した。ブロムシュテットその人はスウェーデン系なんだけど、シュタートカペレ・ドレスデンの指揮者も長く勤めていたせいか、ゲヴァントハウス=コテコテのドイツのオケの顔となってもあんまり違和感がない。はたして、前に聴いてから10年という時間と、新しい指揮者は、ゲヴァントハウス管弦楽団をどのように変えたのだろうか。

 今回も例によって一番安いD席なので、Pブロックの後ろの方。曲目が「ツァラトゥストラ」なので、当然、オルガンが超近距離で、しかも後ろからきこえてくる。「2001年宇宙の旅」でもお馴染みの冒頭部分は、超低音ではじまるんだけど、イスが振動するほどのド迫力。音楽的にどーのこーのではなく、これは一種のオーディオ的快感である。家でこれだけの低音を再現したら(ふつーは出来ないが・・・)ヒンシュク間違いなし。オーケストラ的には、管楽器の柔らかい響きが印象的で、とってもまろやか。音の立ち上がりが自然で、ppからffまで音色に差がないのが良い。Pブロックで聴いたので、あんまり自信はないのだが、フルート、トランペット、ホルンはとってもいい音だ。

 でも・・・弦楽器はというと・・・ちょっと??? 密度が高くて金属的な日本のオケの弦楽器とは対照的で、ゲヴァントハウスの弦はしなやかで柔らかい音。音色的には管楽器との親和性も高いので、その意味では伝統を感じさせるんだけど、アインザッツやピッチはちょっと雑な感じがする。弦楽器の配置も、舞台に向かって左から1stVn−Vc(後ろにDb)−Vla−2ndVnというものなので、左右に分かれたVnのばらつきが目立つ感じがする。良い意味ではおおらかさを感じるんだけど、名門オケとしてはちょっと物足りない。後半のブラームスに至るまで、こーゆー感じだったので音楽的な緊張感はイマイチ。これは指揮者に起因するのか、それともオケの機能低下なのかはわからない。

 ブロムシュテットは譜面台を置かずに暗譜でタクトを振る。その解釈は、ごくごく正統的で説得力が高いもの。ブラームスは、冒頭よりスピーディに展開して、推進力にあふれる演奏。ロマンティシズムは抑えて、辛口の解釈は好きな傾向である。オケにちょっと問題ありだったので、満足度はあまり高くなかったけど、これはこれで個性的なオーケストラである。音色には魅力があるので、明日の演奏も楽しみ。

 アンコールは、ブラームスの4番第3楽章。