マリア・グレギーナ ソプラノ・リサイタル

(文中の敬称は省略しています)

●1999/04/27 サントリーホールで行われたマリア・グレギーナのソプラノリサイタル「華やかなオペラアリアの魅力」を聴きに行って来たんだけど、ホールはPブロックを除いてほとんど満員に近い盛況。METの「トスカ」や新国立劇場の「アイーダ」などで一躍注目を集めたソプラノだけの関心度は高い。しかし・・・・そのコンサートの内容はとても残念なものだった。

 グレギーナは最も期待しているソプラノの一人なんだけど、単なる「不調」なのか、それとも「壊れて」しまったのか・・・・、。そもそもグレギーナの声質で「ノルマ」とか「ルチア」のアリアを歌うと言う選択からして「あぁ、勘違い」なのだが、声質の違いどころか、高音部がどん詰まりで明らかに声がかすれている。 ピアニッシモの時の声のコントロールも効かないし、声のつながりも良くない。「セビリアの理髪師」の「今の歌声は心にひびく」も声質の違いが明らかだし、グレギーナに適性があると思われる休憩後のヴェルディ「ドン・カルロ」や「アイーダ」「オテロ」までも不安定!たしかにオケを突き抜けてくるffの声量の大きさは健在なんだけど、微妙な表現、繊細な表現になると、声のコントロールが出来ていない感じ。高音になるとやっぱりドン詰まり感があって、「どこで破綻するか!?」とハラハラドキドキ。落ち着いて聴けたもんじゃない。きちんと聴けたのはラストの「マクベス」の「勝利の日に〜早く来て明かりをつけて」だけ。マダム・マクベスはヴェルディの中でもいちばん重い声を要求されるソプラノじゃないかと思うけど、それだけがマトモと言うのはどのように解釈すれば良いのか? 単なる「不調」だったら良いけど、ここまで酷かったら絶対にコンサートを中止するべきではないだろうか。

 会場は熱烈な拍手とブラボーに包まれていたけど、この日のリスナーまでも声がデカければ満足だと言うのだろうか・・・。アンコールに「運命の力」から「神よ、平和を与えたまえ」を歌ったけど、私はむなしい気持ちでホールを後にした。グレギーナは今秋の新国立劇場の看板公演「仮面舞踏会」を歌うことが発表されているけれど、ホントに大丈夫なの?