大野和士=東京フィル

(文中の敬称は省略しています)

●1999/04/04 先月の東フィル定期は都合があって行くことが出来なかった。そのため4月は今シーズン最初の定期演奏会である。注目は何と言ってもメイン・プログラムのソリストを務めるアナトール・ウゴルスキのピアノだろう。

 前半は、仕事の疲れから完全に集中力欠如に陥り、爆睡モードに突入! おぼろげな記憶の中では破綻のない演奏だったと思うが、話はいきなり後半のブラームスのコンチェルトに移る。

 ウゴルスキは、現役ピアニストの中では最も好きな人の一人だが、この日のブラームスはちょっと期待ハズレ。彼の最大の美点である音色の美しさ(特にピアニッシモ!)は健在なので、それなりに聴くことが出来たのだが、他を寄せ付けない超絶技巧テクニックはかなり後退しているように感じた。心なしかミスタッチと思えるような部分も多く、速いパッセージでのキレも良くない。もともと自由奔放な解釈を身上とするピアニストなので、このようなコンチェルトではその真価は発揮しにくいのだと思うけれど、オケをねじ伏せてしまうような超常的解釈?を期待していた私としては物足りなさを覚えてしまう。

 オケとの噛み合わせの悪さもあって、やや残念な出来の演奏会。アンコールに弾いたメンデルスゾーンの「カプリッツォ」がそこそこの出来だったのが救いだろうか。