プレトニョフ=ロシア・ナショナル管弦楽団

(文中の敬称は省略しています)

●98/11/23 ロシア・ナショナル管弦楽団を聴くのは、これで3回目。創立当時は、指揮者であるミハイル・プレトニョフが高額の資金を投入して既存のオケから優秀な奏者を引き抜いて物議をかもしたけど、その後はロシア経済は混迷を極めている。オーケストラの力は経済力と比例する側面もあるので、はたしてロシア・ナショナル管弦楽団はロシアの没落にどの程度影響を受けているのか、この公演の一つの見所である。会場は東京オペラシティ・コンサートホール。空席が目立つけど、7〜8割程度は入っていただろうと思う。

 で、私が座ったのは7,000円のC席。この値段で舞台の半分も見ることの出来ないL側サイドの2列目なのである。このホールは明らかに視覚に問題のある座席があるにもかかわらず、こんな高額の席として売ると言うのはほとんどサギと紙一重じゃないだろうか。私はステージから遠くても文句は言わないとけど、舞台の半分も見えないんじゃ、ぜんぜんオケの動きが分からない。これじゃライブを聴きに行く意味が・・・。こーゆー席は、あらかじめ視覚に制限があることを明記して2,000円程度で売るのが望ましいんじゃないだろうか。私は空席があったので、自衛のため座席を移ったが、こーゆーホールは好きじゃない。

 オケがステージに現れて、チューニングを始めた瞬間から音の大きさが伝わってくる。とにかく音がでかいオーケストラだ。最初のベートーヴェンの7番は、指揮者の力量を測るのに格好の曲のひとつだろうと思うけど、プレトニョフは無難にまとめきったんじゃないかと思う。タクトさばきは、はっきり言って不器用だけど、オケがバラバラになることなくダイナミックなリズム感を強調して、なかなかの演奏となった。ただし音色感は乏しく比較的べったりした感じ。伝統的なドイツのオケの音とはもちろん趣向が違ってとても大味だが、たまに聴くにはこーゆーのも面白いんじゃないだろうか。

 後半はお国物のチャイコフスキー。これはさすがに音色感が合っている。伝統的なロシアのオケよりも音が明るくて、影の部分の彫が浅い感じがするけれど、機能的にはバリバリ鳴らしてくれるしとにかく豪快である。ところどころで金管が音を外すあたりが、ロシア経済の反映か(^_^;)・・・などと思ったりしたけど、まぁ、ご愛嬌の範囲だろう。ただし、これが好みの演奏家と言うと、ウウム(^_^;)である。なぁ〜んの悩みもないチャイコだもんなぁ・・・たしかにバリバリの金管を聴くだけでもそれなりの価値はあるかもしれないけど、音楽的な内容はちと希薄だろうと思う。

 アンコールは、チャイコフスキーの「雪娘」よりメロドラマと、グリンカの「イワン・スサーキン」から「ポーランドの踊り」。