シュタイン=バンベルグ交響楽団

(文中の敬称は省略しています)

●98/10/27 交通手段が発達して、機能的には格段の進歩はしたけれど、オーケストラの個性が乏しくなったと言われている中で、かつての伝統の音を守りつづけているオーケストラも存在する。シュタイン率いるバンベルグ交響楽団もそのひとつだ。

 このオケを聴くのは、以前にもブラームス・プログラムを携えて来日したとき以来だ。その後、シュタインは体調を崩して心配されたけど、昨年のN響定期では(演奏の出来はともかく)きちんと来日を果たしたし、この度のバンベルグ響との来日公演では、ちょっと足取りのおぼつかなさは感じたけど昨年のN響よりも元気なイメージだ。そして、この日、座ったのはPブロック。タクトの動きは最小限にとどめている感じだけど、打点はつかみやすい感じがする。

 さて、ブラームスの第3交響曲がホールに奏でられると、「あぁ、これがブラームスの響きなんだ・・・」という説得力にあふれている。やや遅めのテンポに重心の低い響き、いぶし銀のような弦楽器の音をベースに調和する木管・金管の響きは、まさにブラームスを演奏するために存在するオーケストラのようだ。決して高機能のオーケストラではないのだろうけど、どの楽器にも穴がなくとてもバランスが良いのが印象的。

 後半のピアノ・コンチェルトのソリストは、ラドゥ・ルプー。Pブロックに座るとピアノの音は反射音しか聞こえないのが残念だけど、彼らしい粒立ちの良い音色は魅力的。このピアニストも超絶技巧をほこるピアニストではないけれど、重厚な管弦楽の中でもピアノの音色が埋もれることなく、音のコントラストが映える。

 ブラームスには「秋」という季節が良く似合うと言うけれど、シュタイン=バンベルグのブラームスはまさに晩秋の音楽。その含蓄の豊かさに満足した一夜である。