尾高忠明=紀尾井シンフォニエッタ東京

(文中の敬称は省略しています)

●98/10/24 ソリスト級の奏者が集まって年に5回の定期演奏会を行っている室内オケ、気負いシンフォニエッタ東京の今回の定期は、オーソドックスなプログラムで、室内管弦楽団としては正攻法の展開を聴かせる。

 古典交響曲とベートーヴェンの弦楽5部は、8-6-6-4-2の編成。紀尾井程度の大きさのホールだったら、弦楽器は十分な厚さで響いてくる。きびきびした歯切れの良さ、タクトに敏感に反応するオケの動きが心地良い。このような敏感さは、なかなかフル・オケでは味わえない。ベートーヴェンの7番は、並みの指揮者だとパートがずれて、音楽が停滞して足踏みしそうな感じになることがあるけど、尾高=KSTが見せた躍動感はレベル高め。

 チェロ協奏曲のソリストは、イギリスの若手チェリスト、スティーヴン・イッサーリス。1730年製ストラディヴァリウスを駆使して美しい音を響かせる。硬質の貴金属系の音で、ストラディヴァリのチェロってこんな音がするのかぁ・・と思った次第だが、包み込むような豊かな音が好みの人にはチト違う系統かもしれない。やや技巧が前面に出過ぎる嫌いはあるけど、これはこれで一つのアプローチだろうと思う。アンコールで演奏されたカタロニア民謡「鳥の歌」(カザルス編曲)は、祈りが込められたような美しさ。こんどは是非、リサイタルで聴いてみたいチェリストである。