ボローニャ歌劇場日本公演
ヴェルディ「ドン・カルロ」

(文中の敬称は省略しています)

●98/10/17 1ヶ月近くに渡って日本での公演を行ってきたボローニャ歌劇場の最終公演で、NHKホールで行われたヴェルディ「ドン・カルロ」に行ってきた。かなり空席があるんじゃないかと思っていたんだけど、NHKホールはほぼ満員の盛況。たぶん来日後の公演の評判が良かったので、売れたんじゃないだろうか。

 この「ドン・カルロ」を見るのは、藤原歌劇団の公演に続いて2回目。演奏会形式なら昨年の東フィル「オペラ・コンチェルタンテ」でも聴いているけど、・・・ううむ、やっぱり好きになれないオペラのひとつだなぁ。主役級の登場人物が多すぎて散漫になりがちだし、ストーリーは荒唐無稽だ。どうしても感情移入しにくいのである。オマケに、このところコンサートや仕事で家に帰るのが10時過ぎの連荘なので、疲労がたまって睡眠不足。チケットを買っておいてなんだ!と言われるかもしれないけど、どうにもホールに向かう足取りは重かったのである。

 そんなワケで第1幕途中から爆睡モードに突入してしまったのだけど、たぶん歌手に関しては高い次元でバランスがとれていた上演だったろうと思う。問題だったのは、パオロ・コーニの声に張りがなく、高音部が相当苦しそうだったのが残念だったくらいで、その他の歌手はそれぞれの持ち味は十分に出していただろうと思う。印象的だったのはまずギャウロフで、威厳にやや衰えを感じた悲哀を感じる国王を渋い演唱で聴かせてくれたし、スカルキも嫉妬深いエボリ公女をテンションが高い声で歌いきった。クピードを聴くのは3回目だけど、これが何回聴いても超美声! 一本調子で陰影感がなく、感情が歌に乗りにくい歌手なんだけど、それさえ気にしなければビンビン伝わってくる声そのものがカイカンである。デッシーはちょっと存在感が希薄だったけど、影がある王妃役にはあっているかもしれない。宗教裁判長は、威厳のある声で、舞台をピシッと引き締めた。

 管弦楽は、音楽監督のガッティがタクトを取るということで期待していったんだけど、平凡な出来。どこか緩んだ感じがするタクトで、ヴェルディらしい緊張感が伝わってこない。オーケストラが巧いので救われているけど、管弦楽に関しては期待した水準は下回った。舞台装置は、黒を基調にした簡素なものだけど、ワンポイント的に付け加えられるスパニッシュな色合いや衣装がとても上品。照明も工夫が凝らされていたし、登場人物の動きも納得できる内容だった。

 終演後は、延々とカーテンコールが繰り返され、最後には「SAYONARA」と書かれた横断幕のもと、平服の合唱団や舞台の裏方さんもステージに。聴衆もほとんどの人が帰ろうとしないで、ステージとの一体感を楽しんでいたようだ。今回のボローニャ歌劇場の来日公演は、イタリアの歌劇場はスカラ座だけではないことを強く強く印象付けた。またの来日を望みたいが、チケットの値段だけはどうにかならないものか。