東京都交響楽団 作曲家の肖像シリーズ
マリナーの「メンデルスゾーン」

(文中の敬称は省略しています)

●98/10/10 先日の定期演奏会で都響の好演を引き出したマリナーが、「作曲家の肖像」シリーズでは「メンデルスゾーン」をとりあげる。双方の美点がかみ合えば、とても良い演奏が聴けそうな期待を持って芸術劇場に出かけた。

 マリナーのアプローチは、やはりトラディショナルで奇をてらわないもの。音楽の流れはきわめて自然で、安心して音楽に浸ることが出来る・・・・ハズだったけど、この日の都響のアンサンブルはちょっと問題。「スコットランド」なんかは室内オケでも演奏される曲だけど、この日の都響は16型の大きな編成。弦楽器はユニゾンになると驚くほど綺麗な音を聴かせてくれるんだけど、全曲を通じてみた場合、大きな編成のためか音が濁りがちで見通しが悪くなる。管楽器、特にホルンなんかは、ほとんどあきらめの境地に入らざるを得ない。芸術劇場でも、モダン楽器だったら12型以下でも十分な演奏が出来るんじゃないだろうか。

 ヴァイオリン協奏曲のソリストは堀米ゆず子。翳をともなった細めの美しい音色は魅力的だけど、すこしテクニックに偏りがちの印象をもった。第1楽章なんかはふつうよりかなり速いスピードで展開してちょっと落ち着かない雰囲気。速いパッセージはより速く。テクニック的には安定しているので、決して弾き飛ばしたような感じではないんだけど、これが音楽的に生きているかというとちょっと疑問符がつくアプローチである。少なくとも私の好みのメン・コンではない。

 この日の演奏はちょっと期待ハズレ。とはいってもマリナーのタクトはきわめて明晰で、とても75歳と言う年零を感じない。たぶん都響は、このように指揮者と愛称が良いはずなので、今度の定期に期待したい。