東京都交響楽団定期演奏会Aシリーズ
朝比奈隆のブルックナー第8交響曲

(文中の敬称は省略しています)

●98/09/28 もはや神格化されつつある朝比奈隆のブルックナー、今回の都響定期は発売日に完売した「超」がつく人気公演である。曲は、ブルックナーの中でも一番の人気を誇る第8交響曲だ。開演前からホールには緊張感がみなぎり、指揮者がステージに現れるとひときわ大きい拍手が贈られる。朝比奈が登場するときの演奏会は、他の指揮者とはまったく違う雰囲気だ。

 しかし演奏内容には、非常に大きな不満が残った。剛直なフレージングは朝比奈ならではのものだし、都響の弦楽器もテンションの高い音を聴かせてくれた。しかし管楽器、とくにホルンとワーグナー・チューバが酷すぎる。バリバリとしたとげのある音で、しかも音程が非常に不安定。ブルックナーでとても大きな役割を果たすべき楽器がこれでは、音楽全体が成り立たない。もともと都響は弦楽器のレベルと金管楽器のレベルのギャップが大きいオケだけど、ここまで酷いと耳を覆いたくなる。またホールの音響が原因なのかもしれないけど、サントリーホールや東京文化会館で朝比奈を聴いたときに比べると、ステージ上の音が遠く、さらにデュナーミクの幅が小さく感じられた。全体的に緊張感を欠いたブルックナーとなってしまった。

 最後のコーダが終わったときには拍手が起こったけど、いつもの朝比奈の演奏会と比べると明らかに控えめなもの。ホルン&ワーグナー・チューバには盛大なブーイングが飛んだ。これだけ注目された演奏会であるにも関わらず、その期待に応えてくれなかったのは残念だ。都響が同じプログラムを2日間組んでいる場合、明らかに2日目のほうが良いという傾向があるらしい。私自身は定期会員なので、いつも初日を聴かされているんだけど、あとから2日目のほうが良かったという話を聞いて悔しい思いをすることしばしばである。今回のブル8もそうだったらしいが、こりゃ何とかならないものか?