N響・オーチャードホール定期演奏会
ヤノフスキ=NHK交響楽団

(文中の敬称は省略しています)

●98/09/26 N響というとサントリーホールに移ったB定期が話題になったけど、この日が第1回定期演奏会となったオーチャード定期も始まった。厳密にはオーチャードホールの主催なので、A・B・Cとある3つのN響主催定期とは位置付けは違うのだろうけど、登場する指揮者は定期演奏会に登場する人がそのまま登場する。テレビカメラも入っていたので、ホントにN響定期と同格の扱いである。でも会場には空席が目立って、私が座った3階なんかは6割程度しか入っていなかったんじゃないだろうか。さすがに東京のコンサートは供給過剰なのかもしれない。

 ヤノフスキをナマで聴くのははじめてだけど、かなり緻密かつ繊細な音楽作りをする指揮者である。オケの細部に至るまでコントロールし、室内楽的な緻密さを醸し出す。しかし音楽の躍動感が伝わってこないのが難点で、音楽の横の線のつながりが弱い上に、デュナーミクの幅が小さいのが原因ではないだろうか。「田園」を聴いても、のびのびとした田園的ムードは伝わってこない。もっとオケをおおらかに鳴らしたほうが活き活きとする思うが。

 しかしそれが美点になる曲もある。「動物の謝肉祭」なんかは滅多にメジャーオケの定期に登場しない曲で、私自身も聴くのは2回目だけど、これが室内楽的な緻密さが生きた演奏となった。純音楽的な意味で、これほど上質な「謝肉祭」を、今後、ナマで聴く事は難しいだろうと思うほど。ただし、表題的アプローチを重視する人の中には、ちょっと神経質過ぎて好みではないという人もいるかもしれない。

 アンコールはネットル&マークハムによるミヨー「スカラムーシュ」第1楽章「ヴィフ」と、シューベルト「ロザムンデ」より間奏曲。