サントリー音楽財団サマーフェスティバル1998
20世紀の音楽名曲選展

(文中の敬称は省略しています)

●98/08/24 サントリーホールで行われる夏の恒例行事、「サマーフェスティバル」が始まった。いわゆる「現代音楽」がメインの音楽祭だけど、今年のテーマとなる作曲家はヘンツェ。しかし、日程的にそれは聴くことができないけど、24日の大ホールは20世紀の音楽の中でも比較的聞きやすい作品を選んで紹介するプログラムがあるので、それを聴きにいった。

 演奏するのは井上道義指揮の東京交響楽団。たぶん、このようなプログラムを振らせたら井上道義以上の日本人指揮者はいないだろうと思う。ラテン的な(あるいはスパニッシュな)明るさやリズム感が要求されるだけに、井上のリズム感が発揮されれば、8月で最高のコンサート(とは言っても2回しかコンサートに行かないのだが)になることは間違いないと思ったのだが、コンサートを聞き終えて、その期待に違わぬ演奏だったと思う。「パリのアメリカ人」も良かったけど、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」は、それ以上に素晴らしかった。明晰なリズム感に裏打ちされた明るい音色は、ファリャのスパニッシュなイメージを体現しているし、デュナーミクの幅を大きく取って音楽の奥行きを大きく聴かせる術にも長けている。バレエ音楽全曲版での演奏だったけど、決してその長さを感じさせないすばらしい演奏で、東京交響楽団も音色的には望むべきところもあったけど、全体的に見れば申し分ないものだったと思う。

 プーランクのクラブサン協奏曲(?)は、初めて聴いた曲だけど、やっぱりまとまりには欠ける曲である。さまざまな楽想が持ちこまれていて、バロック的なクラブサンの響きが対立したり強調したり、はっきり言って統一感は感じられない。まぁ、プーランクらしいと言えば「らしい」曲である。曲自体には、あまり共感が持てなかったけど、クラブサン(ハープシコード、チェンバロ)の音の響きは、とても魅力的だと思った。さすがに大ホールで管弦楽と対峙するには音量的な問題があると思うけど、機会があったら小さなホールでリサイタルなども聴いてみたいと思った。