フェドセーエフ=東フィル
(文中の敬称は省略しています)

●98/06/12 いまや東フィルの「顔」の一人となった首席客演指揮者のフェドセーエフの登場した定期演奏会で、オーチャードホールはほぼ満員の盛況となった。

 一見、なんの関連性も感じられないプログラムだけど、コープランドとストラヴィンスキーは、アメリカとロシアと全く違うお国柄なのに、どことなく遊びの要素が似ているのが面白い。コープランドは先日のNYPで聴いたばかりだけど、この東フィルの演奏もそれに負けないくらいの演奏だった。オケは弦楽器とピアノ、ハープだけという曲だけど、弦楽器の引き締まった音色の美しさとタクトに対する反応の良さが光る。美しいメロディーとJAZZ的な要素が混在する曲だけど、その楽想のつながりはあくまで自然だ。ソリストのペルムジャコフはフェドセーエフの信任厚いクラリネット奏者らしく、引き締まった音色の美しさには心ひかれるものがある。とはいえ、NYPのドラッカーと比較するとテクニック的にも音色的にもドラッカーの方が上だ。ストラヴィンスキーは考え事をしながら聴いていたので、コメントはパス(^_^;)。

 後半はベートーヴェンの7番。たぶんベートーヴェンのシンフォニーの中では最も難しい曲だろうと思う。フェドセーエフのアプローチは「快速」。最初からテンポは「快速」だったけど、第4楽章は「メチャ快速」なのだ。ほとんど「ルスランとリュドミュラ」状態・・・と言ったら言い過ぎだけど、とにかくそれほど速いのだ。この速さでもオケが崩壊しないのはたいしたものだけど、音楽的には好みが分かれるところ。個人的には笑っちゃうくらい面白いアプローチだと思うけど、一般的に言われる重厚なベートーヴェン的な響きとは対照的な世界である。

 定期演奏会にしては珍しく、オケのアンコールあり。チャイコフスキー「眠れぬ森の美女」から「パノラマ」は、リラの精が王子をオーロラ姫のところに案内するシーンで流れる音楽で、とても美しい曲。ちょっと弦楽器の音にざらつきがあったのが残念。