「佐々木忠次vs遠山一行」論争の行方は?
(文中の敬称は省略しています)

●98/06/13 新国立劇場をめぐるNBSの佐々木忠次氏と新国立劇場副理事長の遠山一行氏の「論争」は、リスナーの間で大きな話題になった。遠山氏の反論が掲載された「NBS NEWS vol.138」(1998.5月号)は、たくさんコンサートに通っている私でさえも入場の際にもらうチラシ袋の中で見かけたのは2回だけ。そのうち1部は人にあげてしまったので、手元にあるのは1部だけである。東京以外の人はもちろん、東京でコンサートに行っている人の中でもこの記事を読んでいない人は多いのかもしれない。

 この手の「論争」は、私がコンサートに通うようになってからは、たぶん、初めてのことだろうと思う。バブルの頃、外来演奏団体の来日ラッシュの時に、日本の音楽家の演奏活動を圧迫するので何らかの負担を求めるべき・・・という議論が起こったことがあったけど、あれはどーなったのか? 今回はオペラ・ファン「待望?」の新国立劇場の計画や運営に対しての議論であり、さまざまな意見があるのは当然のこと。出来れば発展的な議論の継続を望みたい・・・けど、このNBS NEWSを読んで感じるのは、明らかに遠山氏の反論はボケツを掘っているとしか思えないことだ。佐々木忠次氏の文章は毒気が多いので、にわかには賛同しにくいんだけど、大筋では佐々木忠次氏に理があるように思える。

 私は新国立劇場のオープニング前から前から言ってきたことだけど、新国立劇場のホントの責任者を明らかにすべきだと思う。遠山氏の文章を読む限りだと、氏は「非常勤」みたいな立場なので、実際の演目の決定などにはタッチしていない、そしてオペラに関する全権は音楽監督の畑中良輔氏にあると言うことなのだ。言うまでもなく理事会は、財団法人など(公益法人)の最高意志決定機関である。年に数回の理事会において財団の方針を決めるのが理事会の役割だ。副理事長は、理事長に次ぐ最高のポストのひとつである。

 しかし理事を務めている人の中で、日常の運営に携わっている人というのは極めて少ないのが大方の財団法人(公益法人)の現状だろう。副理事長の要職にある遠山氏が演目やキャストの決定などに携わっていない・・・というのは日本の財団法人の運営の中ではあり得ること・・・というよりは、むしろ当然のことかもしれない。しかしそれと責任問題とは全く別のことである。現場の運営がうまくいっていない場合や、問題がある場合、それに対して提言したり問題を是正するのは、他でもなく理事長や副理事たる遠山氏の職務職責だろう。ハッキリ言って遠山氏の「反論」からは、その意識が感じられない。自らの職責に対する認識は甘すぎると言われても仕方がないんじゃないだろうか。

 新国立劇場に関連する「NBS NEWS」の記事を読むのは、オペラ・ファンのひとつの「楽しみ?」になりつつある。この議論、いい加減なかたちで終わらせることなく、みんなの目に触れるところできちんと決着がつくまで継続して欲しい。できれば東京に住んでいる人だけではなく、全国のオペラ・ファンの見えるところでの議論が望ましい。それにはインターネットが格好のメディアだと思うのだが。