デプリースト=都響
(文中の敬称は省略しています)

●1998/05/22 先日の定期で素晴らしいショスタコーヴィチの演奏を聴かせてくれたデプリーストの登場する定期演奏会Aシリーズ。もともと定期会員券の売り切れている上に、デプリーストの人気も加わって、東京芸術劇場の当日券売場にはキャンセル待ちの行列が出来た。

 デプリーストの音楽を聴くとき、オーケストラに有機的な一体感が生まれるような気がする。先日のショスタコ・プロもそうだったけど、弦楽器の音に厚みが増して各パートの音色に統一感が生まれる。今日の最初のプログラム、ファリャの「三角帽子」は豊かなスパニッシュな音色感とリズム感が魅力の曲。デプリーストの指揮する都響の音は、ファリャらしい南欧風の魅力を感じるけど、リズム感はやや重めで、楽想に応じた音色の変化にももう少し工夫が欲しいところ。

 つづくバルトークのヴィオラ協奏曲のジェラール・コセーは初めて聴くソリストだけど、これまで聴いたヴィオリストの中では最も美しい音色と抜群のテクニックの持ち主だと感じた.。ヴィオラとしてはやや硬質の部類だと思うけど、引き締まった音色は美しい。テクニック的にもヴァイオリンのソリストに匹敵するんじゃないかと思うほど。オーケストラのサポートも不満のない内容だったけど、全体的に見るとどうしたことか、ちょっと感動の希薄。どうしてなのかなぁ・・・と考えたんだけど、どうもバルトークに特有の翳りが希薄なんじゃないかと思ったんだけど、・・・うーむ、どうにもよく解らない。

 休憩後はサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。管弦楽とオルガンによって奏でられるコラールを聴くと、心洗われ、何とも言えない感動的な気持ちを呼び起こす。個人的にも大好きな曲である。デプリーストの奏でる音は、弦楽器を中心に統一されてオルガン的なトーンを醸し出す。ただ先日のショスタコと違うのは、管楽器の問題が露呈して、ところどころのミスが聴き手の緊張感をそいでしまった点だろうか。それほど大きなミスは感じなかったけど、サントリーホールでの定期が良すぎたと言うべきなのだろう。オルガンは井上圭子で、彼女のオルガン交響曲を聴くのはサントリーホールでのシャローン=都響以来だろうと思う。聴いたのもずーっと前のことなので記憶はいい加減だけど、あのときの方が音が柔らかく、微妙なニュアンスが伝わってきたような気がする。彼女のホームページにも書かれているので一読をオススメするけど、それによると東京芸術劇場のオルガン、特にモダン側の問題は相当に酷いらしい。とはいえ一部後半のオルガンが登場するアダージョはなかなか感動的で、改めてこの曲の良さ を味わうことが出来たのは収穫。決して悪い演奏ではなかったが、デプリースト=都響の先日の演奏水準からすると、期待以上のものではなかったのも事実だろう。