フライシャー=NJP
(文中の敬称は省略しています)

●1998/05/21 5月のNJP定期は、このオケの指揮者陣の一角を占めるレオン・フライシャーの登場。前にも書いたけど、この人はピアニストとしては良いものをもっているのかもしれないけど、指揮者としてみた場合は好みではない。ハッキリ言って、苦手系の指揮者のひとりだ。

 この日の演奏会を一言で言うと、期待はずれ・・・というか始めっから期待していなかったので正確には期待はずれではないが、とにかくそーゆーことだ。モーツァルトはリズム感が重くて管楽器の音色が悪くてダメだったし、ベートーヴェンも同様。ところどころでオケを鳴らし過ぎて、見通しが悪くなってしまったのは問題だ。7番は特に指揮者の力量を要求される曲だから、フライシャーでは難しいだろうと思う。マルタンの曲は爆睡したので、コメントはパス。

●1998/05/28 そんなこんなで「時間の無駄かなぁ・・・」と思ってトリフォニーB定期は行きたくなかったんだけど、結果的には「期待以上」の出来だった。まぁ「期待」そのもが低いレベルなので、この日の演奏が高いレベルかと言われると困るのだが、まぁ、そーゆーことである(^_^;)。

 21日との違いは、コンマスが深山尚久から豊嶋泰嗣に変わっただけ。しかしオケそのものから奏でられる音は、遙かに緊張感が高いものになった。「プルチネルラ」は、金管楽器に不満を感じたけど、大筋ではなかなかの演奏で、とくに弦楽器のテンションの高さはこの曲の魅力を伝えるには充分な内容だったと思う。ラヴェルの左手の協奏曲は、以前にもNJP定期でフライシャーが弾いたことがある曲である。昨年のモーツァルトの12番を弾いたときは、やっぱり右手の指廻りに不安を感じたけど、左手に関しては全く問題を感じさせない。両手の協奏曲に比べれば音譜の少なさは明らかなんだけど、音楽的な密度が高く感じられ、音色の美しさも相まってレヴェルの高い独奏を聴かせてくれた。

 後半は超通俗名曲「新世界より」。フライシャーは「間」を充分にとってちょっと濃厚系の「新世界」を奏でるけど、決してくどくならない範囲の味付け。フライシャーの時のオケは、アンサンブルが荒めで、音色が濁るのが難点だったけど、このときの演奏を聴く限りにおいては許容範囲で、各パートの音も混濁することが少なく見通しもまぁまぁ。全体的には聴き応えのある「新世界より」だったろうと思う。

 フライシャーはオケのトレーナーという感じではないし、かと言って、解釈に優れていてもう一度聴きたいと思わせる指揮者じゃない。このまま定期的に演奏会に招聘することによってNJPのためになるのか・・・というと否定的な立場なんだけど、まぁ、このレベルの演奏会だったら怒ることなく家路につくことが出来た(^_^;)。