ホルスト・シュタイン=N響
(文中の敬称は省略しています)

●1998/02/06 N響に定期的に登場する指揮者の中で、最も注目すべき指揮者のひとり、ホルスト・シュタインが久々にN響の指揮台に登場した。しばらく健康を害して指揮台から離れていたけれど、再びN響の指揮台に登ると聴いて当日券で聴きに行ったけど、地味目のプログラムのせいだろうか、ホールには空席が目立つ。

 N響のプログラムには、おおよその演奏時間が書かれているんだけど、それによるとこの3曲の合計時間は62分! はたしてこれで一夜のプログラムになり得るのか、と思うけど、病み上がりのシュタインの健康を気遣ってのプログラミングかもしれない。

 まずバルトークのコンチェルトだけど、私には理解不能な曲なのでコメントはパス。独奏のテツラフは、初めて聴くヴァイオリニストだけど、非常に堅実なテクニックの持ち主でハッタリめいた表現は全く用いない。とても好感が持てるソリストだ。個人的には聴き疲れのする曲なので、演奏後、すぐに外へ出て缶コーヒーを飲んでいたらアンコールの演奏が始まってしまった。たぶんプログラムが短いので時間調整の意味合いもあったんだろうけど、バッハの「パルティータ」ニ短調と、「ソナタ」イ短調第3楽章の2曲をアンコール。これを聴いた感じだと彼はコンチェルトよりもソロ・ヴァイオリンの方が実力が発揮できるのではないだろうか。リサイタルも注目すべきかもしれない。

 休憩後はリストの管弦楽曲。「メフィスト円舞曲」は初めて聴く曲だけど、これもよく解らない曲。もうちょっとテンポが速ければ印象が変わるかもしれないが、リストの曲にしては聴き映えがしない曲だと思った。「レ・プレリュード」がプログラムの最後に演奏されるのも変な話だけど、これもテンポが遅め。重厚なオーケストラの響きはシュタインの特徴だし、オーケストラは情熱的な演奏で応えたけど、この曲の魅力を伝えるのに相応しい演奏だったかというと疑問だ。

 このプログラムではシュタインの本領を聴くことが出来なかったけど、Bチクルスではシュタイン得意のワーグナー「パルジファル」第3幕が演奏される。登場する歌手もエルミング、サルミネンといった望みうる最高の歌手が登場するのも楽しみだ。