ガブリエーレ・フェロ=読売日響
(文中の敬称は省略しています)

●1998/02/04 都民芸術フェスティバルの読響の公演は、イタリアの指揮者ガブリエーレ・フェロの登場である。プログラムによると、現在、ドイツのシュトゥットガルト州立歌劇場の音楽監督を務めているらしいけど、個人的には初耳の指揮者。会場となった東京芸術劇場の3階席は、ちょっと空席が目立つ。

 フェロという指揮者は、ゆったりと旋律を歌わせる指揮者だ。タクトの振り方も特徴的で、大げさなジェスチャーでオーケストラをドライブするけど、その割に流れてくる音楽はきちんとしている。指揮法のことはよく分からないし、指揮者の後ろから見るしかないのだけど、あのタクトでよく縦の線が合うなぁ・・・などと感心してしまう。この日の演奏の中で一番よかったのが、メインのドヴォルザーク交響曲第8番。ボヘミアの美しい旋律をたっぷりと歌わせた演奏だったけど、オーケストラもよく反応して、艶のある弦楽器が美しく旋律を表現する。このように旋律が際立つ曲だと、フェロの芸風によく合うんじゃないだろうか。

 ところが前半の「マイスタージンガー」はイマイチ。テンポが全体的に遅めなのは良いとしても、オケが鳴らない。重心が高くてバランスが悪く、高音部も艶がない。テンポを遅くした代償として、音の密度を失ってしまったようだ。ドヴォルザークのチェロ協奏曲は向山佳絵子の独奏だったけど、堅実で伸びのある音が美しい。しかし、これもオケのサポートが今一つで、全体的には印象に残らない演奏になってしまった。

 アンコールはモーツァルトのディベルティメントK.136 第3楽章だったけど、私は帰りを急いでいたのでホールから洩れてくる音をエスカレーターの上で聴く事になってしまった。