高関健=NJP
(文中の敬称は省略しています)

●1998/01/22 先日の群馬交響楽団で、オーケストラビルダーとしての力量を見せた高関健がNJP定期に登場。会場のトリフォニーホールは定期会員で売り切れのハズのB席やC席も空席が目立つ。NJPの定期会員は、とりあえずチケットは確保しているけど、プログラムや登場する指揮者・ソリストによって来ない人が多い。もちろん他のオケの定期会員でもこのような人がいることはいるけど、NJPはその比率が高いような気がする。まぁ一回券のチケットがべらぼうに高いから、仕方がないと思うけど・・・。

 はじめのベルリオーズは実演されるのは珍しく、私も初めて聴く曲。ところどころベルリオーズらしい旋律や楽器の扱い方を聴くことが出来るけど、あくまでも主役は歌手だ。白井光子は、ウェットでしっとりした美声の持ち主で、声量にも不満はない。トリフォニーはどちらかというと残響は控えめなので、声楽には向いていると思う。ただ言葉としては不明瞭な感じで、フランス語的な美しいイントネーションは聴くことが出来なかった。これは曲に起因すのか、歌手の問題なのかは解らない。まぁ、きれいな曲だけど、個人的には好みの傾向ではない。

 休憩後はベートーヴェンの「エロイカ」。話題のベーレンライター新校訂版に高関独自の解釈を加えたものらしいけど、個人的には「版」の問題には無頓着なので・・・あんまり関係ないし、どこがどう違うのか解説でもしてくれれば解るのかもしれないけど、私の耳で聴く限りはその違いは解らない。管弦楽は、高関らしいオーソドックスな自然な流れを重視したもの。第1楽章はスピーディな展開だったけど、第2楽章は腰を落ち着けてじっくりとした音楽を醸し出す。「弦楽器の音が後退する」「金属的な響き」という弱点を指摘されていたトリフォニーホールも、先日の定期演奏会からバランスの良い音で響くようになってきており、今日も16型の弦楽器と舞台正面奥に並んだ8本の弦楽器はなかなか壮観で、それが功を奏したのかトリフォニー移転以降、もっとも充実した弦楽器を聴くことが出来た。管楽器はもともと評価の高いNJPだけに、管弦楽の健闘が光った。オーソドックスで見通しの良い「エロイカ」だったけど、個人的にはもう一工夫欲しい気がした。