矢崎=都響「小山清茂作品集」
(文中の敬称は省略しています)


●1998/01/21 都響の日本の作曲家シリーズは12年目に入り、 矢崎彦太郎指揮の都響によって小山清茂の作品が取り上げられた。演奏されたのは以下の5曲で、いずれも聴くのは今回が初めてである。

 プログラムには「民衆主義の作曲家」と書かれていたけれど、日本の民謡をモチーフにしてオーケストラ版にアレンジしたような作品が多い。ところどころにアイデアが凝らされていて、「鄙歌第1番」は鳥の声や蝉の鳴き声を模したオケの音をテープで流しながら、舞台上でオケが演奏したりするけど、この日の演奏を聴いた限りでは音楽的なヒラメキとかを感じ取るのは難しいと思う。音楽的には単純で明快、使っている楽器の種類が多い割にはオーケストレーションが薄めで、色彩感に乏しく、リズムにもノリにくい。どれか一曲だけを演奏会のプログラムの中に取り入れるならともかく、この人の作品だけで一夜のコンサートを保たせるのは無理があるんじゃないだろうか。休憩後の後半はかなり辛かった。そんな中でも一番完成度が高かったと思われる作品は、彼の代表作とされる「気挽歌」。九州地方の民謡を素材に、オーケストレーションで豊かな色彩感とリズム感を取り込んだ曲で、けっこう楽しめる作品だ。

 同じ傾向・・・と言ってよいのかどうか解らないけど、民衆主義的で土俗的なリズムをベースにした作曲家・伊福部昭も多くの作品を書いている。伊福部の曲を聴くと、カラダの中を流れる血が騒ぐのを感じるけど、小山清茂の作品はその点では平凡だ。まぁ、この平凡さが小山清茂の魅力なのかもしれないけど、今日の演奏を聴いた限りではまた聴きたいと思わせる作品には出会えなかった。初めて聴く作品だけに管弦楽の善し悪しを言うのは難しいけれど、矢崎=都響は手堅い演奏でまとめていたと思う。