佐渡裕=NJP
(文中の敬称は省略しています)


●1998/01/09 今年初めてのコンサートは、92年〜95年にNJP指揮者を務めていた佐渡裕が登場した新日本フィル定期演奏会である。バーンスタイン最後の愛弟子とか言われて華々しくデビューし、師匠ゆずりの濃密系音楽と指揮台上での大きなジェスチャーが人気の指揮者だけど、私はハッキリ言ってこの指揮者は好きではない。ビジュアル的な意味でウケるのは解らないでもないけれど、彼のタクトは明らかに音楽の流れを阻害している。変なところでタメを入れたり、不自然にダイナミックな音が妙にに作為的で、聴いていて完全にシラけてしまう。さらに、飛んだり跳ねたり、かがみ込んだり・・・指揮台上で異常に大きいジェスチャーもダメだ。奏でられる音楽とジェスチャーが一致すれば良いんだけど、空回りが見え見え。私の評価はそんなもんだから、始めっから期待しないでトリフォニーホールに出かけたんだけど、昨日の雪の影響だろうか・・・ちょっと空席が目立つ。

 まずは初めて聴くプーランクの協奏曲。このホールのオルガンの音も聴くのは初めてだから、新年に相応しい「初めてづくし」の演奏会?である。その名の通り弦楽5部とティンパニ、オルガンだけの編成だけど、バッハみたいな響きからモダンな旋律まで、時代を超えた様式を一つの曲に盛り込んだ作品だ。曲の構造としては取り留めのなさ、まとまりのなさを感じるけど、これがフランス的なエッセンスなんだろうと思う。演奏そのものはオルガンの音を堪能できたし、弦楽器も引き締まった音でプーランクのエッセンスを感じさせてくれたけど、一回聴いただけではなんとも言い難い曲である。

 休憩後の「ロメオとジュリエット」は、作曲者自身が組曲版ではなく、佐渡裕がストーリー順に19曲を選んだ抜粋による演奏である。1時間ほどにまとめられた選曲そのものは、プロコフィエフの最高傑作を伝えるには適当なものだと思う。昨年見たロイヤル・バレエのステージを思い出しながら聴いたけど、演奏は・・・やっぱり佐渡裕の問題点が前面に出てしまった演奏だと思う。音楽的にも視覚的にも作為的でシラけるし、リズムも重め。豊嶋泰嗣がコンマスに座ったオケは、トランペットの音が気になったけど、その他は健闘。プロコフィエフらしい洗練された響きを醸し出していたから大分救われたけど、いかんせん指揮者が悪い。私の周りの席では爆睡していると思われる人が多かった。