●98/01/03 そろそろ東京のオケは、新年度の定期会員を募集する時期になった。東京には9つのプロのオケが活動していて、N響、NJPは9月、日本フィルとシティ・フィルが2月を年度のはじめにしているけど、その他のオケは4月を年度のはじめとしている。つまり都響、東響、東フィル、読響、新星という5つのオケが4月以降の年間定期会員を募集することになる。(前期・後期、または季節毎のシーズン会員もあるが年間会員券よりもちょっと割高になる) そこで新年特別企画「定期会員になろう」というテーマで、現在募集中及びこれから募集が始まるオケの定期演奏会の魅力ついて考えてみたい。
何と言ってもクラシック音楽は欧州で生まれた音楽で、本場はヨーロッパである。やっぱし本場もんはイイッ!ってことで、ヨーロッパには一流のオケが多い。ベルリンフィル、ウィーンフィル、ミラノスカラ座にパリ管などなどキラ星のごとき一流オケを枚挙するのに暇がない。西欧文化を受けついだアメリカにもシカゴ響をはじめ5大オケ(NY、ボストン、シカゴ、フィラデルフィア、クリーヴランド)が存在し、機能的にはヨーロッパのオケを凌いでいる。斜陽のロシアのオケだってその実力は侮れない。そうなってくると日本のオケは、これら一流の外国のオケにどれだけ近づいているのか知りたくなる。
最近はご無沙汰だけど、一時は来日する外国のオケをことごとく聴きに行った頃がある。名の通ったメジャーなオケなら最低一回は聴いているハズなんだけど、やっぱり上に挙げたようなメジャーなオケと比較すると日本のオケが聴き劣りするのは否めない。日本のオケもデカい音を出そうと思えば出せるけど、音色が潰れてしまう事が多い。しかしアメリカのオケなんかは、いとも簡単に音圧の高い音を綺麗な音で演奏してしまう。管楽器、特に金管はひっくり返ったり音色が平板だったりして日本のオケが苦手とするところだけど、パリ管弦楽団の管楽器、その音色のパレットの豊かさ、美しさは筆舌に尽くしがたい。ミラノスカラ座管弦楽団の輝かしく軽やかな羽のような弦楽器も、日本のオケで実現するのは難しいし、ニューイヤー・コンサートで有名なウィーン・フィルは放送や録音でウィンナ・ワルツを聴いても良いんだけど、ナマで聴くVPOのウィンナ・ワルツはケタ違いの超絶品である。あの音楽は絶対に録音には入らないだろう・・・と思ってしまう。ましてや日本のオケであんなニュアンスに富んだ演奏など絶対に不可能だろうと思ってしまう。こーゆー演奏を聴いてしまうと、日本の
オケがかすんで見えてしまうのは、やっぱり事実だろう。
こんな事を書くと、日本のオケを聴く気がなくなっちゃうかもしれないけど、悲観する必要は全くない。たとえばロンドンは、ロンドン交響楽団(LSO)、ロンドン・フィル(LPO)、フィルハーモニア(FO)、BBC交響楽団、ロイヤル・フィル(RPO)の5大オーケストラがひしめく都市だけど、この5大オケの日本公演はそれぞれ1回以上は聴いたことがある。現地で連続的に聴いた訳じゃないから断定的なことは言えないんだけど、日本のオケより決定的に巧いと思ったのはLSOだけで、その他のオケはN響と同等もしくはそれ以下、というレベルじゃないかと思う。特にRPOを聴いたのは、デッカがアシュケナージと組んだ録音を連発して好評を博していた当時で、それを期待して聴きに行ったらアンサンブルがそーとー酷かった記憶がある。デッカの録音技術は優秀なんだなぁ・・・と妙に実感した一夜だった。日本は世界最大級の音楽消費地=市場だけに毎年多くのオケが来日しているけれど、その中で日本のオケよりもホントに優れているのは、一部だろうと思う。個性や特色があって、得意のレパートリーなら素晴らしい演奏が出来るオケは多いけど、外国のオケならみんな巧いと思うとそれはとんだ見
当違いである。またアバドが初めてベルリン・フィルの常任として来日したときのブラームスのように、個々の奏者はメチャメチャ巧くても、アンサンブルが全然ダメな事だって少なくない。
東京のオケのなかでもトップグループのオケと、それ以外のオケでは別かもしれないけれど、世界的なレベルで見ても日本のオケの決して水準は低くはない。まだメジャー・オケの仲間入りをするには至っていないけれど、それ以外のオケとだったら充分に対抗し得る実力は備えている。外国から来た・・・と言うだけで法外なチケット代をとるオケもあるけれど、そんなお金があるなら東京のオケの定期会員になって、メジャーなオケに近づけるように応援する方が256倍マシだと思う。
まず定期演奏会とはなんだろうか。定期演奏会が始まった歴史的な経緯は知らないけど、位置付けはそのオーケストラの最も力を入れている演奏会と言って間違いないだろうと思う。その指揮者・オケが最も聴かせたいプログラムを組んで定期会員に演奏を問う、オーケストラの看板となる演奏会である。どのオケの定期会員数は公式には発表していないけど、その数はオケの人気を示すバロメーターと考えて間違いない。
定期演奏会の他に名曲シリーズとかを行っているオケは多いし、その方が料金が安く設定されていることが多い。その定期演奏会の方が名曲シリーズよりも高い理由だけど、非常に大雑把に言ってしまうと「練習時間の違い」だろうと思う。プログラムや指揮者によって変わってくるけれど、定期演奏会の場合は練習日程は3日から4日間確保しているが、名曲シリーズの場合は、普通は1日から2日というオケが一般的だろうと思う。その練習時間の差は、本番になって演奏内容として現れる。私も以前は読響の名曲シリーズの会員だった頃があってはじめは馴染みやすくても、変化のないプログラムがだんだん飽きてきて、もっと斬新なプログラムを聴きたくなる。やっぱり長く聴き続けるなら「定期演奏会」が一番だろうと思う。
定期会員のメリットを挙げると「一回券を購入するよりもチケット代が安い」「一回券よりも良い席が確保できる」「いちいちチケットを確保する面倒がない」というのはもちろんだけど、同じオケを聴き続けるというのは指揮者の力量やアプローチの相違を感じ取れる面白さがある。定期会員だと基本的に同じホールの同じ席なので、指揮者によるオケの響きの違いをつかみやすい。これは一回券では難しいところだろう。デメリットとしては「予定が一年(半年)先まで解らない」「あまり行きたくない余計なプログラムも一緒に買うことになるのだから結局は割高」ということだろう。でも期待していなかったプログラムが、結局は一番のアタリだった・・・ということもしばしばで、これがナマの演奏会の面白いところ。私自身としては、定期会員の魅力は非常に大きいと思っている。
定期会員には「年間会員」と「シーズン会員」(オケによって前期or後期会員)というのがある。その名の通り一年間の通し券が「年間会員」で、各季節毎の3〜5回程度の連続券が「シーズン会員」である。もちろん一回あたりのチケット代は年間会員の方が安いのでオトクだけど、プログラムなどによって各オケのシーズン会員を渡り歩く「渡り鳥会員?」になるのもひとつの考え方だろう。一年間を2つのシーズンに分けているのが都響、読響、日本フィル、NJP、東フィル、シティ、3シーズン制はN響、東響、新星である。
下の表は在京オケの年間会員券、一回あたりのチケット代の比較である。登場する指揮者、ソリスト、会場の座席数、ランクによる座席割りによってチケット代は変わってくるので単純な比較は出来ないけれど、オケによってチケット代には大きな差がある。飛び抜けてチケット代が高いのがN響で、シティフィルの概ね2倍である。(ホールの収容人数も勘案すればチケット売上収入の格差はもっと大きい)さすがにこれだけチケット代が高いと、N響を聴きたいならE席で充分だろうと思ってしまう。また読響や東響のように最低ランクと最高ランクとの格差が少ないオケもあれば、N響、NJP、東フィルのように格差が大きいオケもある。全体を平均すれば最低ランクと最高ランクとの差は2倍程度。さて高いS席を選ぶべきか、一番安い席で充分なのか・・・2倍も差があると悩んでしまう。
値段が高い席ほど音が良いのであれば座席選びは解りやすいけど、実際には必ずしも値段と音が比例するとは限らない。サントリーホールの場合は、値段と音がある程度比例する傾向があるけれど、他のホールだと安い席ほど音が良い傾向がある。特にオーチャードと東京芸術劇場は3階の安い席ほど音が良いので、視覚面を重視しないのであれば安い席の方がオススメである。来年度から改装を行う東京文化会館も4・5階席の音が良いし、オペラシティも3階席の方が音が良かった。たぶんトリフォニーもそうだろう。つまり「良い音は高いところに登る」と覚えておいて間違いない。サントリーのような「アリーナ型」のホールも同様だけど、ステージ裏側のピット席は音が良くないので、正面方向の「高いところ」がオススメ。実際に私自身が定期会員になっているオケ全てを、一番安い席で聴いている。そんなワケで、たまに一階席のど真ん中に座ると落ち着かないのだが。
席種 |
|
読響 | 東響 | 東京 フィル |
新星 | シティ | 日本 フィル |
N響 | NJP |
S席 | 4,200 | − | 5,272 | 4,900 | 4,277 | 3,555 | 4,700 | 6,930 | 5,000 |
A席 | 3,500 | 4,090 | 4,545 | 4,200 | 3,577 | 2,833 | 3,900 | 5,910 | 4,000 |
B席 | 2,800 | 3,636 | 3,772 | 3,150 | 2,877 | 2,288 | 3,100 | 4,890 | 3,000 |
C席 | 2,100 | 3,090 | 3,045 | 2,100 | 2,177 | 1,733 | 2,500 | 3,870 | 2,000 |
D席 | − | 2,545 | − | (2,000) | − | − | − | 2,950 | − |
P席 | − | (2,000) | − | − | − | − | (2,000) | (E1,520) | − |
格差 | 2.0倍 | 1.6倍 | 1.7倍 | 2.3倍 | 2.0倍 | 2.1倍 | 1.9倍 | 2.3倍 | 2.5倍 |
学生 など |
1,400 | なし |
2,363 | A2,500 B1,875 C1,250 |
S4,111 A3,111 B2,111 車椅子 2,177 |
666 | 1,800 | 1,520 | − |
※「格差」は、最高ランクの料金/最低ランクの料金 です ※読響はS席はないので、1ランク上げて考慮してください。 ※シティフィルは「サントリー・オーチャード」シリーズ9回券で計算しています。 ※日本フィルのP席は全演奏会が含まれていないため、ここでは会員券とは考えません ※読響のP席と東フィルのD席、N響のE席は一回券のみの発売です。 ※N響とNJPは、参考として昨年9月に募集したときの会員料金を掲載 |
で、定期会員になりたいオケが決まったら募集開始日以降にオーケストラの事務局に電話して、自分の好きな座席を確保するのが手順。現在の会員の人の座席確保が優先されるので、必ずしも希望の席が取れるとは限らないけど、少なくとも1回券よりは良い席で聴けるのは間違いないし、翌年度(翌シーズン)の更新時にはもっと良い席に移れる可能性もある。
そして各オーケストラの指揮者やプログラムなどを独断と偏見でポイント化したのが、下の一覧である。最近聴いていないオケも含まれているので、そこら辺の評価は出来ないけど、ある程度の参考までにどうぞ。
なお五つ星で満点で、☆は★の半分のポイントを表す。
東京都交響楽団(98年1月13日募集開始) |
N響、読響、都響の3つはスポンサーが強力なので、東京では最も予算規模の大きいオーケストラと言われている。この予算の差は指揮者、ソリストはもちろん楽団員のレヴェル、練習日程などにも大きな関係がある。もちろんカネがあれば良い演奏が出来るとは限らないけれど、都響が来シーズンから音楽監督としてガリー・ベルティーニという大物を招聘できるのも、財政面での裏付けがあってのことだろう。後期にはフランス音楽の巨匠ジャン・フルネ、3月エリアフ・インバルの登場が控えており、指揮者陣の魅力は高い。
都響は2つのプログラムを持っていて、会場はサントリーホール(Bシリーズ)と東京芸術劇場(Aシリーズ)に分かれる。(Aシリーズは本来は東京文化会館で定期を行っているが、ホールの改修工事のため、99年6月まで東京芸術劇場に移る予定) 後期のプログラムは正式に発表されていないので、評価はとりあえず前期のプログラムで行っている。
Aシリーズの注目は6月のベルティーニ就任披露としてマーラーの「復活」、9月は朝比奈がブル8、10月には端正なタクトで定評があるマリナーがモーツァルトを振る。後期にもベルティーニの「幻想」、フルネの「田園」、インバルのブルックナー第4番(原典版)などが予定されており、注目度は高い。前期に限ってはBよりAシリーズの方がプログラムの魅力は高そうだ。
Bシリーズは、4月に若杉がハイドンのオラトリオ「天地創造」、6月はベルティーニが「ダフニスとクロエ」など、10月にはマリナーが「エニグマ」変奏曲とシュトゥッツマンの共演を得てヘンデルのオペラ・アリアを歌う。後期にはベルティーニのマーラー3番(必聴!)、フルネの「ペレアスとメリザンド」(これも必聴!)、インバルはなんと演奏会形式で「ワルキューレ」第1幕(大必聴!!)を演奏する予定だ。後期に関してはBシリーズの方が良さそうだ。
定期演奏会の他に、東京芸術劇場で行っている「作曲家の肖像シリーズ」があり、3階席後部のEx席1,000円は激安である。
Aシリーズ | ポイント | コメント |
オーケストラ | ★★★☆ | 硬質で透明感がある弦楽器は魅力的 |
指揮者・ソリスト | ★★★★ | 新音楽監督ベルティーニ、若杉、朝比奈、マリナーなど |
プログラム | ★★★★☆ | ベルティーニの「復活」(6月)、朝比奈のブル8(9月)は注目! |
値段 | ★★★★ | 登場する指揮者を考えると安い |
会場 | ★★★ | 東京芸術劇場 |
Bシリーズ | ポイント | コメント |
オーケストラ | ★★★☆ | だけど管楽器は・・・ |
指揮者・ソリスト | ★★★☆ | 新音楽監督ベルティーニ、若杉、マリナーなど |
プログラム | ★★★ | シュトゥッツマンがアリアを歌う10月は注目! |
値段 | ★★★★ | 正面にもB・C席があるのでかなり良心的な座席割り、割安だ。 |
会場 | ★★★★ | サントリーホール |
読売日本交響楽団(98年1月7日募集開始) |
尾高忠明が去って、また常任不在のオケになってしまったけど、巨人やヴェルディの不振に通じるものを感じてしまうのは私だけだろうか? あのナベツネの読売グループのオーケストラらしく、資金力にものを言わせた豪華な指揮者陣は壮観だけど、このオケをどのように育てたいのか明確な方向性が見えてこないのが残念。オケの機能、潜在能力は備えているだけに、オーケストラ・トレーナー次第では大化けする可能性を秘めているのは確かなのだが。
ロストロポーヴィチが振るショスタコーヴィチ(4月)、ジェフリー・テイトのハイドンのオラトリオ「四季」(5月)、エリアフ・インバルはブルックナーの交響曲第8番を極めて珍しいノヴァーク第1稿で聴かせてくれる(7月)。おなじみのロジェストベンスキーはスクリャービン・プログラム(11月)で、セゲルスタムは自作の曲とマーラーの5番(12月)。アルブレヒトはベートーヴェン・プロ(1月)で、ブルゴスはアルプス交響曲(2月)、前常任の尾高はシベリウス・プロ(3月)と登場する指揮者陣は豪華の一言。ソリストには目立った人は登場しないけど、個人的にも興味がそそられる演奏会が多い。登場する指揮者を考えるとチケット代はかなり割安で、舞台正面のCブロックにも安いC席があるので座席割りも良心的だろうと思う。
定期演奏会の他には名曲シリーズ(年12回)があって、会員だけで満席近い好評が続いている。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ★★★☆ | パワフルで機能的には優秀だけど、演奏内容は指揮者次第 |
指揮者・ソリスト | ★★★★ | ロジェストベンスキー、インバル、テイト、ロストロなど名指揮者が登場、 |
プログラム | ★★★★ | テイトの「四季」(6月)、インバルのブル8(7月)、ロジェベンのスクリャービン(10月)など |
値段 | ★★★★ | 指揮者などの顔ぶれを考えればかなり安めの値段設定 |
会場 | ★★★★ | サントリーホール |
東京交響楽団(97年12月1日より募集中) |
音楽監督秋山和慶のもとで、意欲的なプログラミングを組んで人気を集めているオーケストラ。昨年はシェーンベルグの「ヤコブの梯子」、ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」で大好評を博したが、来シーズンのプログラムは比較するとちょっと地味目か? チケットの値段が高めなのが難点で、私自身は定期には久しく行っていない、ウワサでは聴き応えのあるオーケストラとの評価も多い。個人的には最近このオケを聴いたのは、10月の新国立劇場「建・TAKERU」だけど、そのときはかなり良い演奏だったと思う。
注目の演奏会は5月の秋山が振るマーラーの10番アダージョと「嘆きの歌」、9月のガーシュウィン・プロ(秋山)、若杉が振るB.A.ツィンマーマンのヴォーカル・シンフォニー「軍人たち」だろうか。その他はハンス・グラーフ(4月)、ペーター・フェラーネッツ(7月)、パーヴォ・ヤルヴィ(10月)などが登場するが、私自身は聴いたことのない指揮者ばかりなので、コメントはパス。
定期の他に、大友直人が中心となって指揮をする東京芸術劇場シリーズがある。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ? | 最近聴いていないので評価はパス |
指揮者・ソリスト | ★★★ | 秋山和慶を中心に、中堅や若手指揮者をバランス良く配置 |
プログラム | ★★★☆ | 秋山のマーラー「嘆きの歌」(5月)、若杉のツィンマーマン「軍人たち」が注目か? |
値段 | ★★ | ちと高いんぢゃない? |
会場 | ★★★★ | サントリーホール |
東京フィルハーモニー交響楽団(98年1月6日募集開始) |
常任指揮者・大野和士のもとでめきめきと頭角を現しているオーケストラ。ピットに入ったら他のオケの追随を許さない。定期演奏会は久しく聴いていないけど、オペラ・コンチェルタンテや藤原歌劇団などのピットでの演奏を聴く限り、現在、東京で最も充実しているオーケストラではないかと思う。このオケの問題点は唯一、音響面で問題が多いオーチャードホールで定期演奏会を開催しているという点だろう。1階席の音響はかなり悪いけど、来シーズンはステージを前にせり出してホールの音響を改善する予定。チケットも1回券の値段を下げ、2,000円のD席(3階席最後列)を設けることになった。オーチャードの3階席は、東京のコンサートホールの中で比較しても音響の良い席なので、安い席が増えたのは嬉しい。さらに演奏会は基本的に金曜日に固定して、聴衆の増加をはかっている。
個人的に注目しているのは大野和士のマーラー交響曲第3番(5月)、フェドセーエフの登場する6月の定期、井上道義のモーツァルト・プログラム(9月)、バルシャイのショスタコ交響曲第4番は必聴!(11月)、ターネジへの委嘱初演作とチペットティペットのオラトリオ「我らが時代の子」(12月)は注目だろうと思う。
これまで3シーズン制だったけど、来シーズンから2シーズン制に移行する都合上、来年度の定期演奏会は8回だけである。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ★★★★ | 個々のパートは目立たないけど、全体的なアンサンブルで勝負する |
指揮者・ソリスト | ★★★★ | 大野和士を中心に、フェドセーエフ、バルシャイ、井上道義など |
プログラム | ★★★★ | 大野のマーラー3番(5月)、ティペット(12月)、バルシャイのショスタコ4番(11月)など |
値段 | ★★★☆ | 高い席と安い席の差が大きい 3階の安い席がオススメ |
会場 | ★★ | オーチャードホール 3階席に限っては★★★★ |
新星日本交響楽団(募集中) |
常任指揮者オンドレイ・レナルトを中心に、サントリーホール、東京芸術劇場で同一プログラムの定期演奏会を行っている。定期演奏会は「春」、「秋」、「冬」の3シーズン制。正式にはサントリーの方が定期演奏会で、芸術劇場の方が「サンフォニック・コンサート」というのだけど、プログラムが同じなので、両方とも定期演奏会と考えて間違いはないだろうと思う。比較的、名曲指向の強いプログラミングで、開演30分前よりオルガンでウェイティング・コンサートを行うなど、聴衆集めにアイデアを凝らしている。
4月には現田茂夫が三枝茂彰「忠臣蔵」組曲、6月には堀米ゆず子がコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲、9月はオペラでおなじみのアッレマンディがロッシーニの「スターバト・マーテル」を振る。10月には一部で熱烈な支持者がいるハイドシェックがシューマンの協奏曲を弾き、11月にはレナルトの指揮で「大地の歌」が予定されている。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ? | 最近聴いていないので評価はパス |
指揮者・ソリスト | ★★☆ | 指揮者ではレナルトが中心、ソリストでは6月に堀米ゆず子、10月にハイドシェックなど |
プログラム | ★★★ | アッレマンディによるロッシーニ「スタバト・マーテル」(9月)など |
値段 | ★★★★ | 都響とほぼ同じ金額ですね |
会場 | ★★★★ | サントリーホール、ただし東京芸術劇場は★★★ |
東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団(募集中) |
登場する指揮者・ソリストの全てを日本人で固めているのは、東京のオケの中では東京シティ・フィルだけである。2月から7月まで「サントリー・シリーズ」、9〜12月は「オーチャード・シリーズ」として2会場で定期演奏会を行い、3,6,9,12月には「東京国際フォーラム定期」として若手演奏家シリーズを組んでいる。ここでは「国際フォーラム定期」は評価の対象にしていないけど、篠崎靖男、梅田俊明、曽我大介、松沼俊彦という若手演奏家にチャンスを与える演奏会を組んでいる。
サントリーとオーチャード定期は常任指揮者・飯守泰次郎が中心で、全9回の定期のうち6回のタクトをとる。ドイツものに定評のある指揮者だけに7月の「カルミナ・ブラーナ」(緑川まり、米良美一、三原剛が独唱を務めるのも注目)、12月にも「ドイツ・レクイエム」を緑川まり、三原剛の独唱で聴かせてくれる。その他では4月に十束尚宏が「巨人」、コバケンが6月にスメタナの「我が祖国」、北原幸夫が9月にベートーヴェンの7番を振る予定だ。
ちょっと地味な感じは否めないけど、シティ・フィルは成長株のオケや指揮者を聴く楽しみがありそうだ。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ? | 最近聴いていないので評価はパス |
指揮者・ソリスト | ★★☆ | 全て日本人の指揮者・ソリストを起用 人気の米良美一(7月) 緑川まり(7.12月) |
プログラム | ★★★ | いわゆる「名曲」が中心、飯守の「カルミナ・ブラーナ」(7月)が注目か? |
値段 | ★★★★☆ | 東京のオケでは最も安い |
会場 | ★★★★ | サントリーホール(2〜7月)、オーチャード(9〜12月)は★★ |
日本フィルハーモニー交響楽団(募集中) |
常任指揮者・小林研一郎を中心に、若手ナンバーワンの人気を誇る広上淳一、巨匠ネーメ・ヤルヴィという強力な指揮者陣を擁し、同一プログラムで2回の定期演奏会を行っている。3月から7月までを「春季」、9月から1月までを「秋季」としてプログラムを組み、年間会員は3月が年度の始まりとなっている。かつては名曲プログラムが中心だったけど、近年のプログラムは意欲的なものが目立ち、注目を集めている。春季の注目は広上淳一のシューマン・チクルスの一環として「ライン」(4月)、コバケンのマーラー「千人の交響曲」(5月)、ヤルヴィは渋めの選曲でベートーヴェンの交響曲第4番とプロコの交響曲第6番(6月)、日本初演の歌劇「マルコ・ポーロ」(7月)と多彩。秋季にもジェルメッティ、オッコ・カムなどの客演が予定されている。
個人的にも興味をそそられる演奏会が多いんだけど、一回券だとちょっと高めだし、会員券でも舞台正面に安い席がないのであまり聴く機会がない。座席割りとしてはS・A席の比率がちょっと多すぎるような気がする。
項目 | ポイント | コメント |
オーケストラ | ★★★☆ | 軽量級だけど、丁寧でシルキーな表現は魅力ある |
指揮者・ソリスト | ★★★★ | コバケン、広上、ヤルヴィなど |
プログラム | ★★★★ | コバケンの「千人の交響曲」(5月)、タン・ドゥンの歌劇「マルコ・ポーロ」(7月)など |
値段 | ★★★ | 正面の席がS・Aしかないのが難点 もうちょっと安い席を増やして欲しい |
会場 | ★★★★ | サントリーホール |