若杉が辞してから、都響の実質的な看板指揮者はインバルとなった訳だけど、彼は客演指揮者という立場では実力が発揮できないことが証明されてしまった。マーラーの5番はすばらしい名演だったけど、それ以外はインバルの要求と都響の実力のギャップが露呈してしまい、音楽的に楽しめるものとは言えない内容に終わってしまった。インバルはオケの実力が追いつかなくても、自分の要求をとことん貫徹するタイプの指揮者で、適当な折り合いや妥協をつけるようなタイプではない。それ故、オケが崩壊することもしばしばだった。彼は年4週の来日ではまったく不十分で、チェリビダッケ=ミュンヘン・フィルのように、厳格なトレーニングと強固な信頼関係があって初めて真価が発揮される指揮者なのだと思う。彼が都響の音楽監督に就任し、年に8週以上の指揮をすればきっと都響も変わっただろうけど、残念ながらそのような結論にはならなかったようだ。
そんなこんなで都響の音楽監督はベルティーニが就任する訳だけど、私が知っている彼のレパートリーはマーラーだけ。きっと多くの人もそうだろうと思う。若杉−インバル−ベルティーニと、3回目のマーラー・チクルスをやるのかどうかも見物(?)だが、低迷気味といわれる都響のアンサンブルをどのように立て直すのかが問題だろうと思う。古典的なレパートリーも積極的に取り入れていく意向を示しているらしいので、その方向は期待したいと思う。