まず初めにオネゲル「パシフィック231〜交響的断章第一番」(1923)。表題は当時のアメリカ大陸横断鉄道の名前で、それを音で描写した約6分くらいの音楽である。蒸気や車輪の音が描き出され、それなりに面白い音楽。
続いてショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲第一番で、独奏はチョーリャン・リン(林昭亮)。以前に朝比奈=N響の定期演奏会でベートーヴェンVn協奏曲を聴いたことがあるが、音色・音量とも申し分なく、構成も立派なベートーヴェンを聴かせてくれた。ゆえに大変期待して出かけたのだが、この日のチョーリャン・リンは意外なほど音が小さく線が細い。おまけに音楽が前に進んでいかない感じがして、もどかしいのだ。オケもそれにあわせたサポートをしようとしているように見えたが、結果としては独奏は埋もれてしまうところが多く、不満な演奏となってしまった。ショスタコのVn協奏曲は繊細な表現を求められる部分も多いが、それも躍動感や突進力などとのコントラストとして生きてくるのであって、全曲に渡って同じような表現では単調さは否めない。
休憩後はハチャトリアンのバレエ組曲「ガイーヌ」。超有名な「剣の舞」を含む曲だけど、バレエとしては見たことがない。ちなみに私は「剣の舞」を生で聴くのは初めて。ハチャトリアンはとても民族色が豊かな曲を書いているけど、そのような色合いが乏しい点をのぞけば、まぁまぁの仕上がりになったと思う。最後に演奏された「レズギンガ」はロシアのオケがしばしばアンコールに用いる曲だけに比較してしまうのだけれど、やっぱり餅は餅屋だ。しかし、それはないもの強請りというものだろう。
アンコールはプロコフィエフ「ロミオとジュリエット」から「マドリガル」。日本フィルの特徴であるしなやかでビロードのような肌触りの弦楽器が美しい演奏だった。