インバルの「千人の交響曲」

(文中の敬称は省略しています)


●96/11/15 インバル=都響によるマーラー・チクルス第8段! 「千人の交響曲」を聴きにサントリーホールに。 チケットはSOLD OUTになったけど、定期会員で来なかった人の空席がちょっと目立つ。

 「千人の交響曲」とは言ってもホントに千人そろえるのは希で、 この日は目算で児童合唱120人、混声合唱(晋友会)250人、オケの120人、それにソリストを加算した 「500人の交響曲」、いずれにしても凄い編成の曲である。 かつては滅多に聴けない曲だったらしいけど、マーラーブーム以降、東京では年に2−3回は演奏されている。 マーラーで一番少ないのは7番かなぁ・・・確か今年は大野=東フィルとインバル=都響だけだと思ったけど。

 さて、演奏の方は、第一部冒頭はインバルのテンポはやや早め。 オケは7番と違ったアプローチを見せて、ダイナミックレンジをppのほうに拡大し、 音量は抑えて、弱音をきれいに聴かせようとしていた。 しかし合唱、特に晋友会の声が飛んでこない。 人数の割には音がスカスカしたように感じるけど、晋友会って昔は音量は凄かった記憶がある。 とにかく第一部は合唱がメインなので、この部分は不満。

 第2部は逆に遅いテンポで音楽が進む。 登場するソリストもそれなりに粒が揃っていて不満はないけど、どこか違う感じがする。 そう、白熱した燃焼感が乏しいのだ! どこか小綺麗にまとめたマーラーと言う感じで、 伝わってくるものが少ない。栄光の聖母の独唱以降、いっそうテンポを落としてタメが入り、 この曲の最高のクライマックスに突入する。 ここはいつ聴いても背筋がゾクゾクするほどの感動がある。この日も例外ではなかった。

 でも全体的に見ると、インバルに期待した水準の演奏にはなっていなかった。 あと9番の演奏が残されているけど、CDで聴く限りインバルの9番の演奏は密度が薄い感じがして、 どうも苦手。でもライヴになると全く違ったアプローチを見せる指揮者なので、そこに賭るっきゃない!