キーロフ歌劇場の「オテロ」

(文中の敬称は省略しています)


 新しいマザーボードとCPUが手には入ったので、ATXケースを購入してマシンを自作しました。 CPUは「ぺんちあむ・ぷろ150MHz」です。これまではふつーの「ぺんちあむ120MHz」だったので、 確実に早くなっているのですが、どうもスキャナー(HP 3c)をうまく認識してくれません。 SCSI CARDの関係かなぁ。 マザーボードとCPU以外はすべて前の環境を引き継いでいるので、 その点では問題はないはずなのですが、現時点では原因不明。 これまでこんさぁと情報にはチラシなどを入れるようにしてきたのですが、 しばらくはお預けになるかもしれません。
●96/11/10 ゲルギエフ=キーロフ歌劇場によるヴェルディ「オテロ」。 ロシアの歌劇団によるイタリア・オペラの上演というのはイマイチ人気がないのだろうか・・・ 会場は約7割程度の入りで、安い席を買っていた私も難なく上位ランクの席で聴くことが出来ました。 でもこのオテロって、キーロフ歌劇場がヴェルディに委嘱した作品なんですね。

 この日の公演の主役は、なんといってもゲルギエフ=キーロフ歌劇場管弦楽団の伴奏だった。 あの巨大なNHKホールをものともしない大音量で最初の雷鳴のシーンを再現する。 前回来日時に「スペードの女王」をNHKホールで聴いたけど、 このオケで聴く限りは音量的な不満は全くなく、ソロのパートでも音が薄くなることがない。 現時点で、NHKホールを最も鳴らすことが出来るオケではないだろうか。 「オテロ」という嫉妬をテーマにしたドラマチックなオペラを、さらにドラマチックに演出していたのは管弦楽である。 スカラ座管弦楽団のような洗練された音は望めないのでロッシーニやドニゼッティは苦しいと思うけど、 ヴェルディだったらデメリットにはならない。これで次回の「カルメン」も楽しみになった。

 歌手はオテロのガルーシンがちょっと軽い声だったので、もう少しパワーが欲しかったけど後半は盛り返した。 デズデモーナのゴルチャコーワは、5月に聴いた蝶々夫人のような違和感はあんまり感じなかったので及第点。 容姿端麗でステージ上でも見栄えがするけど、欲を言えばもう少し軽い声の方がこの役にはあっていると思う。 ヤーゴを歌ったブリーチンが歌手の中では一番の拍手を集めていたけど、タイトルロールを食うような出来映え。 この筋書きの中で狂言回しのような役回りを演じているけど、 蜘蛛の巣を張るように様々な罠を仕掛けていく知性的な悪役ぶり。 その他の歌手も層の厚さを実感したし、合唱は前評判通り素晴らしい。

 演出は歌手のデル・モナコの息子のジャンカルロ・デル・モナコ。 プレコンサートの解説で永竹氏が旧ユーゴの内戦で荒れ果てたサラエボにヒントを得た舞台装置と言っていたけど、 残骸が散乱し荒れ果てたステージですべての物語が展開される。 ステージ上には鎖につながれた十字架が横たわっているのだが、 これもオテロとデズデモーナの愛を象徴するとともに、内戦前のサラエボの美しい町並みを表しているらしい。 際限なく繰り返される民族間の殺戮も、些細な不信感や嫉妬から始まったというメッセージが含まれているのかもしれない。 4幕通して基本的に同じ舞台装置なのでちょっと物足りなさを感じたのも事実だけど、 歌手や合唱団の動きや表情などには配慮が行き届いている。

 総じて見応えのある、高水準のオテロだった。 オーケストラが突出していて歌手には感情移入できないきらいはあるけど、こーゆーオペラもあって良いと思う。